言わずもがな! アジアの3大格闘アクションスターの競演こそが最大の見所
『トリプル・スレット』とは“3つの脅威”を意味する言葉で、バスケットボールで使われているという。プロレスの試合形式の名称にもなっており、こちらは“三者同時対戦”の意。というわけでこの映画、トニー・ジャー、イコ・ウワイス、タイガー・チェンの3大格闘アクションスターが競演すること自体が最大のポイントである。全世界のアクション映画ファンも、それを待っていた。
『マッハ!』(2003年)のトニー・ジャーはムエタイ。『ザ・レイド』(2011年)で名を上げハリウッド進出も果たしたイコ・ウワイスはインドネシアの武術シラットの使い手。『マトリックス』(1999年)で武術指導を担当し、俳優としても活動するタイガー・チェンはクンフー。
まさに三者三様の闘いぶりが堪能できるわけだが、特にジャーはムエタイの真髄と言えるヒジ打ち、ヒザ蹴り全開。これは他の2人との差別化という意味でも大成功だった。
ストーリーに関しては、取り立てて言うことはない。ウワイスの存在が“敵か、味方か?”といった感じでちょっとヒネリが加えてあるのだが、むしろその複雑さは余計だったような気もする。
ただ、そこには作り手側の「何かやってやろう」という意気込みの表れでもあるだろう。その意気込みは作品全体に行き渡っており、アクション描写はぬかりなし。序盤のジャーvsウワイスはじめ、見たいものをキッチリ見せてくれる。
また、素手の格闘アクションだけでなく銃撃戦、ナイフを使ったバトルもあり。その血しぶき飛び散る残虐さは予想以上でもあった。
現役アクション俳優から叩き上げの格闘選手まで、悪役陣の“本気度”がスゴい!
加えて、本作の見応えを下支えしているのは悪役たちだ。敵グループのリーダーはスタントマンとしても知られるスコット・アドキンス。さらに『スポーン』(1997年)主演以降、アクション作品に出まくっているマイケル・ジェイ・ホワイト。
そしてMMAファイターのマイケル・ビスピンはパワーファイト担当である。彼はイギリスの大会から叩き上げて、世界最大の団体UFCでチャンピオンになった人。いわばピープルズチャンプ的な存在で、そんな選手がスクリーンを飾っているのは格闘技ファンとしても嬉しい。
さらにジージャー・ヤーニン。『チョコレート・ファイター』(2008年)で鮮烈なデビューを飾った(個人的には)史上最高の格闘アクション女優も登場している。この充実した面々はどうだ。大ボスに性格俳優、ベテラン大物俳優を配置して“重し”にするという手法はよくあるが、この『トリプル・スレット』は動ける実力派ばかりが揃い、映画を動かしていく。そこが非常に気持ちいいわけである。
いやまあ、主演3人にしても悪役たちにしても、普通の基準からすれば“知る人ぞ知る”存在だろう。だけど、メジャーもマイナーもなくアクション映画を観まくっている人間にはたまらないメンバーだ。よくぞ作ってくれたと思う。そして彼らには、もっともっと売れてほしいと願う。
文・橋本宗洋
『トリプル・スレット』は2019年9月6日(金)よりシネマート新宿、シネマート心斎橋ほか公開
『トリプル・スレット』
東南アジアの都市マハ・ジャヤに巣食う犯罪組織の壊滅を目指していたシャオシャンは組織のボスに命を狙われ、冷血な傭兵コリンズ率いる部隊の襲撃によって街は戦場と化す。かろうじて警察署に逃げ込んだシャオシャンは、そこで出会ったパユとロン・フェイに助けられ、共に大使館を目指すことに。さらに、コリンズに妻を殺された恨みを持つ男ジャカも加わり、壮絶な戦いの火蓋が切って落とされた。
制作年: | 2019 |
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監督: | |
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2019年9月6日(金)よりシネマート新宿、シネマート心斎橋ほか公開