動物パニック映画は数あれど、動物園を舞台にゾンビ化した生き物が暴れまわる……! なんていう志の高い作品は珍しいだろう(たぶん)。そこで紹介したいのが、便乗モノB級映画を撮らせたら世界一の映画製作会社アサイラム謹製の動物パニック映画、その名も『ZOOMBIE ズーンビ』だ。もはや内容を説明する必要もないようなタイトルだが、そこをなんとか紹介させてほしい。
なんだかよく分からないが大変だ! 開始5分足らずで緊急事態発生
『ZOOMBIE ズーンビ』は、ある動物園の胡散くさいPR動画から始まる。今から約50年前に、絶滅寸前の動物を保護して増やすために設立されたという<エデン野生動物園>、そこが物語の舞台だ。動物園の全景を、地上から空からダイナミックに撮影した、ジュラパ感あふれるオープニングはなかなかの迫力(映像素材を買っただけかもしれない)。そして開始から5分も経たないうちに、小さな猿が狂暴化して園のスタッフに襲いかかる!
あまりにテンポが良いものだから、残り1時間20分をどう乗り切るつもりなのか心配になってくるが、ユーザーを飽きさせまいとするサービス精神は、さすがアサイラム。そして、この人がヒロインかな? と思っていた女性獣医が早々に猿に惨殺されたところで、ドーンとタイトルが。あ、これプロローグだったのか……早とちり失礼しました。
お値段以上! パニック映画の教科書のような演出と予想外の展開はお得感アリ
続いて、ガイドの女性職員とその幼い娘(存在自体がフラグ)、園のスタッフ、実習で訪れていたマヌケな学生などなど、登場人物たちをサクッと紹介。さすがの手早い展開で各キャラクターを園内に散開させると、後にめんどくさい相手になるであろう動物たちも手際よく紹介し、もちろん随所に伏線も散りばめていく。アサイラムだけに安っぽさは否めないが、お話作りのイロハが学べる教科書通りの展開だ。
もちろん動物たちはCGもしくは着ぐるみで、リアルさは皆無だがコスパを重視したクオリティが微笑ましい。このへんの違和感にすんなり慣れることが、本作を楽しめるかどうかの分かれ目になるだろう(慣れなくてもいいから我慢してほしい)。
ちなみにメインキャラは美男美女ぞろいかつ人種も多様、その割に誰が死ぬのか絶妙に分からない平凡さも効果的で、アサイラムの志の高さが伺えるキャスティングとなっている。
名作映画のセオリーを踏襲しつつも比べ物にならない激安感が愛おしい!
『ゾンビ』シリーズ(1978年)や『ジュラシック・パーク』シリーズ(1993年~)のお約束展開や、『エイリアン』シリーズ(1979年)などSFホラーの設定も拝借しつつ、それらの足元にも及ばない手作り感あふれるグダグダなアクションシーンは、もはや牧歌的ですらある。
とはいえ、肉食化したキリンが猛獣のような唸り声をあげつつ人間を捕食するシーンはかなり悪趣味(褒めてます)だし、ゾンビ化した猛獣の無敵感は実際そこそこ怖い。なお、人間への感染設定をナシにしたのは明らかに予算の都合だろう。
このテのパニック映画にありがちなマヌケキャラ(=迷惑かける要員)はバッチリ殺されてくれるし、事態を悪化させるためのウダウダ展開が極めて少ないのも好印象。予算的に難しいシーンは、無線から聞こえてくる超説明口調の断末魔でカバーするなど、製作陣の悲鳴、もとい工夫がひしひしと伝わってくる省エネ演出に脱帽だ。
難しい映画は観たくないけど、本気で怖いホラーとかもしんどい……そんなときにこそオススメしたい、何の肉かわからないけど無性に食べたくなってしまう、例えるならばコンビニで売ってるハンバーガーみたいな中毒性のある映画、それが『ZOOMBIE ズーンビ』(というかアサイラム作品全般)である。
『ZOOMBIE ズーンビ』はCS映画専門チャンネル ムービープラスにて2019年9月放送
『ZOOMBIE ズーンビ』
エデン野生動物園は、広大な自然の中で動物の本来の姿を楽しめるテーマパーク。園内を歩き回る動物たちの居場所がアプリでわかるのも魅力的だ。しかし、一般公開が近づいたある日、診療所で治療を受けていた猿が発作を起こして心停止。そして突如、奇声をあげて蘇り、人間に襲いかかる!
制作年: | 2016 |
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監督: | |
出演: |
CS映画専門チャンネル ムービープラスにて2019年9月放送