エディ・マーフィの『ネゴシエーター』(1997年)、サミュエル・L・ジャクソン『交渉人』(1998年)など、交渉のプロを描いた“交渉人ムービー”ってあるじゃないですか。作劇の難しさからか、決して数はそんなに多くないこのジャンルに、なんと韓国映画界が初参入! しかも犯人と警察が全編モニター越しでやりとりをするという、ずいぶん攻めのスタイルで!
合コンの真っ最中に緊急呼び出し!しかも人質が殺されてしまい……
『私の頭の中の消しゴム』(2004年)でヒロインを演じたソン・イェジンが演じる主人公ハ・チェユンは、ソウル市警の交渉人。ある日、とびっきりのおめかしをして参加した合コンの最中に、緊急出動命令が。チェユンはよそ行きコーデのまま現場に直行するが、交渉もままならないうちに特殊部隊が突入。人質は殺され、犯人も死亡してしまう……。チェユンは人が殺される瞬間を目の前で見たことからトラウマになってしまった。
しかし、心の傷も癒えぬ間にまた緊急出動命令。チェユンが所属する危機交渉班のチーム長と、韓国人記者がタイで人質に取られてしまった!
まるでジョーカー!? 極悪すぎる誘拐犯ヒョンビンが新鮮
そしてチェユンと、タイにいる誘拐犯とのモニター越しでの交渉対決がはじまるわけですが、誘拐犯ミン・テグは、本作で初の悪役を演じたというヒョンビン。『コンフィデンシャル/共助』(2017年)では寡黙な北朝鮮刑事を演じ、トイレットペーパーを水入りの紙コップに浸けた謎の武器で敵を制圧するという、意味はまったくわからないけどかっこいいアクションが記憶に新しいですね。
そんなヒョンビンですが、今回のミン・テグ役ではやたらとヘラヘラした感じで登場。序盤はとくに要求もないまま、のっけからビデオ通話越しに交渉人チェユンのスリーサイズを聞いてくるわ、国家情報院のお堅い男たちに童謡を歌わせたりと、ビデオ交渉をエンジョイ。ただひたすら話しかけてくるだけで、ときおり人質をいたぶり、気まぐれで銃をぶっ放すというなかなかなの不気味さ。
映画のジャンルが急変!? 美男美女の対決にあの超個性派俳優も参戦
ところが後半なってミン・テグの計画が明らかになると、映画自体のジャンルが突然急変。それと同時に観客のミン・テグへの姿勢も180度変わってしまうのが、この映画のハイライト。それまでがほとんど息詰まるモニター越しゆえに、いきなりカタルシス到来で困惑しちゃうほど。
基本的にはソン・イェジェンとヒョンビンという美男美女対決でありますが、個人的にはとびきりのスマイルと豪快にハゲ散らかした頭髪で韓国映画ファンにはおなじみのキム・サンホに注目してほしいところ。今回はチェユンをサポートするお節介な上司役なのですが、出てきた瞬間「あ、ポンコツ上司なんだな」と。
しかし物語が進むにつれ、単独で捜査を開始。見た目のレッテルを見事に覆すイケメンな活躍っぷりを見せてくれますよ。そんなわけでキム・サンホファンはお見逃しなく。
文:市川力夫
『ザ・ネゴシエーション』は2019年8月30日(金)よりシネマート新宿・心斎橋ほか順次ロードショー
『ザ・ネゴシエーション』
ソウル市警危機交渉班の警部補ハ・チェユンは、事件現場で犯人との交渉中に人質と犯人の両方を死なせてしまう。それから10日後、事件に大きな責任を感じて辞表を提出しようとしたハ・チェユンのもとに再び応援要請が。ミン・テグと名乗る人物が、タイ・バンコクで危機交渉班のチーム長と韓国人記者を拉致し、ハ・チェユンを名指しで交渉相手に指名する。目的が見えないミン・テグに対し、チェユンは交渉の糸口が掴めない。特殊部隊の救出まで残り14時間。果たして交渉の行方は……?
制作年: | 2018 |
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監督: | |
出演: |
2019年8月30日(金)よりシネマート新宿・心斎橋ほか順次ロードショー