夫と娘を殺された恨み、晴らさでおくべきか! 今度は母親の復讐劇だ!!
『ライリー・ノース 復讐の女神』の監督は、ピエール・モレルである。モレル監督の過去作でもひときわ有名なのが、2008年の『96時間』。リーアム・ニーソン演じる“強すぎる父”がインパクトを残し、人気シリーズとなった。そして、最新作『ライリー・ノース』の主演はジェニファー・ガーナー。今度は母親による復讐劇が描かれるわけだ。
ギャング絡みのトラブルに巻き込まれ、夫と娘を失った主人公ライリー。警察には内通者がいて、裁判官も悪に取り込まれ、まさに八方ふさがりの中で孤独な復讐劇を開始する。
しかし現代的というのか、主人公が追い詰められていく“重たいドラマ”の部分は必要最小限で、あくまで手際よく進む。「アクション映画なのに人間が描けている」とか、そういう褒められ方を欲していないわけだ。気軽に楽しんでもらえば、それでOK。製作陣のそんな心意気が伝わってくるようで気持ちがいい。
復讐に燃えた母親が殺しの特訓! 自らも傷つきながら戦う
ライリーには元CIAとか特殊部隊とかいった設定はなく、あくまで一般人(ただし気は強く主張するところは主張するタイプ)。だから、復讐開始までに時間をかけて準備する。イチから格闘技を習ったであろうことを示す場面もある。そして、いざ復讐! となった時のライリーは、つまり強いんだけれども強すぎない。自分もダメージを食らって、うめき、血を流しながら闘うしかないのだ。
しかも、人生を懸けて復讐に挑むくらいだから、精神的には破格に強い。ゆえに、彼女が手を染める復讐が「ほとんど悪役みたいなことになってるな……」という場合もある。それはそれで、見ていて「やっちまえ!」的な快感にもつながる。しかも「暴力を伴う復讐は~云々」とかいうことで、いちいち観客を立ち止まらせない。そういうのは別の映画でやってくれればいい。この思い切りのよさ、主人公の容赦のない復讐が本作最大のポイントだ。
何があろうと子どもは護る! 罪なき命を想う気持ちが強さの源
また、ライリーが“母親”というのも重要で、強さも弱点もそこにある。その母性は死んだ娘だけでなく、周囲の子どもたちにも発揮される。そうして彼女は、タイトル通り「復讐の女神」(劇中のセリフでは守護天使)になっていくのだ。
なるほど、そっちに広がっていくのか、という主人公の存在感。繰り返すが「正義とは」「暴力とは」といった理屈はさておいて、「子どもは何があろうと守る」という絶対的正義が貫かれるのが、この映画の愉しさなのだ。
文・橋本宗洋
『ライリー・ノース 復讐の女神』はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2021年4月放送
https://www.youtube.com/watch?v=JFAkS6jLN4I
『ライリー・ノース 復讐の女神』
ライリー・ノースは、夫クリスと10歳になる娘カーリーとともにで平穏で幸せに暮らしていた。ある日、娘カーリーの誕生日を祝うために出かけた一家は麻薬組織の襲撃に遭い、ライリーだけが一命を取り留める。しかし犯人たちは無罪放免となり、ライリーは絶望と共に姿を消した。そして5年後、ライリーは復讐のため、悪党どもに正義の鉄槌を下すために還ってくる―。
制作年: | 2018 |
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監督: | |
出演: |
CS映画専門チャンネル ムービープラスで2021年4月放送