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結婚し“怒れる若者”を卒業(自称)したタランティーノが明かす『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』の元ネタや制作のきっかけ

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ライター:#小西未来
結婚し“怒れる若者”を卒業(自称)したタランティーノが明かす『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』の元ネタや制作のきっかけ
クエンティン・タランティーノ© HFPA

『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』は、『レザボア・ドッグス』(1991年)で衝撃的なデビューを飾ったクエンティン・タランティーノ監督にとって9作目となる。10作で引退すると公言する監督が、大トリの前に1969年のハリウッドを題材にしたのは興味深い。落ち目の役者(レオナルド・ディカプリオ)と、そのスタントマン(ブラッド・ピット)の友情関係に、実際に起きた「シャロン・テート殺人事件」を絡めるという、タランティーノらしい野心的な物語世界が構築されている。

今回、カンヌ映画祭でのワールドプレミアを終えたタランティーノ監督にロングインタビューを敢行。『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』が生まれたきっかけから、いくつかの元ネタ、知られざる結婚生活まで語ってもらった。

「僕はあの時代を知っているけど、まだ若さも持ち合わせている。だからこそ、いま作る価値がある」

『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』

―この作品は、「監督の子ども時代のハリウッドへのラブレター」と呼んでいいですか?

ある意味ではね。でも“子ども時代のハリウッド”と言うと、どうしても映画作りにフォーカスされてしまう。実際その要素はたくさん盛り込まれているけど、ぼくが伝えたかったのは、“ハリウッドという街そのもの”なんだ。

https://twitter.com/OnceInHollywood/status/1157389891057012736?s=20

映画の舞台となる1969年、ぼくはロサンゼルスにいた。当時は6才か7才だったけれど、よく覚えている。テレビになにが映っていたか、それぞれの局でなにを放送していたか、とか。それから、当時の音楽やラジオ局のこともね。<93KHJ>というラジオ局は、1本の映画をまるまる放送していた。

この映画を作るにあたり、こう考えた。ぼくは、この時代を知っているほど年を重ねている。だが、この時代を生き生きと描く映画を作るだけの、若さも持ちあわせている。だからこそ、いま作る価値があるとね。75才になったら、こんな映画は無理だから。だから、この映画はギレルモ(・デル・トロ)にとっての『ROMA/ローマ』(2018年)のような映画と言えるね。

―えっ?

間違えた!『ROMA/ローマ』はアルフォンソ(・キュアロン)の映画だ。彼もスリー・アミーゴスの一人だからいいだろ(笑)。

クエンティン・タランティーノ© HFPA

―あなたの映画は、テーマやバイオレンス描写などで批判されることがあります。とくに最近ではアーティストに対しても、ポリティカリー・コレクト(社会的に中立な表現)な作品を求める傾向にあると思うのですが、どうやって“自分らしさ”を維持しているのでしょうか?

正直に言うと、アーティストに本当の力というものがあるとすれば、それは抵抗を受けたときこそ発揮するものだと思うんだ。確かに、今は煽動したり、挑発するのは難しい。かなりの代償を払わされることになるから。でも、それこそぼくらに求められていることだと思う。ただし、これまでの経験を踏まえて、何かに関してコメントをする際は慎重になった。いきあたりばったりに発言して、自分の映画に不本意なレッテルを貼られてしまうことだけは避けたいからね。ただ、自分のアートに関しては、いわゆる“社会的な妥協”はしない。

ぼくは自分らしいものを作る。受け入れてもらっても、拒否してもらっても構わない。時代に合わせて、調整するつもりはない。自分らしいものを作り、その結果を受け入れる。どれだけ酷評されたところで、死ぬわけでもないし(笑)。

「結婚が作品にどんな影響を及ぼしたか分からないけど、ぼくもかつてのような“怒れる若者”じゃない」

クエンティン・タランティーノ© HFPA

―そういえば最近、ご結婚されましたね。

うん。彼女の名前はダニエラで、数年前に出会った。素晴らしい女性で、これほど幸せなことはないよ。実は、真剣な交際をしている最中に映画を作ったのは、今回が初めてなんだ。これまでの映画作りは、現実世界から離れ、1人でエベレストを登頂するようなものだった。だけど今回は、パートナーと一緒にエベレストを登ることになった。

彼女は素晴らしい家庭を築いてくれて、その素敵な家庭を離れて職場に行き、仕事を終えて帰宅すると、温かな家庭が待ってくれている。これまでこんな素晴らしいものを知らずに、よく生きてこれたと思う。同時に、正しい女性と出会うために、これまでの年月が必要だったとも思えるけれど。

―では、初婚ですか?

うん。これまでの写真を見れば明白だろ? いつも自作のポスターやフィギュアなんかと一緒に写真に映っていたから(笑)。

―とてもお綺麗な方ですが、業界の方ですか?

イスラエル出身のモデル兼歌手だよ。

―交際中に映画を作ったことで、作品に影響はありましたか?

この映画に、どんな影響を及ぼしたのかは分からない。でも、ぼくもかつてのような“怒れる若者”じゃない。怒ってないし、若くもない(笑)。

―(笑)。

精神的に安定して、とてもいい状況にある。もちろん「果たしてうまくいくのか?」と疑問に思ったことはある。彼女の素晴らしさに関しては疑いの余地はなかったけれど、これまで通りに映画が作れるだろうかと不安になった。でもダニエラは、ぼくにとって素晴らしく安全な場所を作ってくれたんだ。

「ディカプリオ演じるリック・ダルトンが出演している映画のいくつかは、当時の役者のキャリアを参考にしている」

『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』

―往年のハリウッドを舞台にした本作には、あなたのこだわりが詰まりまくっているので、たった1回の鑑賞ではすべてを理解するのは無理だと思います。いくつか元ネタを教えていただけませんか?

興味があるようなら、ルイス・キャロル(「不思議の国のアリス」の作者)のウサギの穴のように、往年の作品を探求するきっかけをあげよう。

たとえば、リックが出演している映画のいくつかは、他の役者のキャリアを参考にしている。リックの出演作『The Fourteenth Fist of McCluskey』は、ロジャー・コーマンとしては大作となる『侵略戦線』(1964年)に似せている。火炎放射器は出てこないけれどね。リックがエド・バーンズの役を演じているんだ。

あと、リックがテレビドラマから映画界に進出しようとするも結果的にうまくいかない、というエピソードがあるよね? あれは、ジョージ・マハリスを参考にしている。彼は『ルート66』(1960年~)から離脱して映画スターへの転身を図るんだが、うまくいかなかった。

他に『Tanner』というリックの出演作のポスターがあるよね。元ネタは『草原の野獣』(1958年)で、リックがタブ・ハンター役を演じている。リックを雇ったスタジオは、彼のテレビドラマを知っている観客層にアピールするのが第一だったから、西部劇ばかりに出させた。でも、当のリックはそうした扱いにうんざりしている、という設定だね。

もし興味があったら、今月ニュービバリー・シネマでは、リックのフィルモグラフィーの参考にした一連の映画を特集しているから、ぜひ来るといいよ。

―ニュービバリー・シネマといえば、あなたが買収したリバイバル上映館ですよね。あなたが上映作品選びをしているんですか?

すべて選考している。月曜日と水曜日の午後に関しては、劇場の連中がやっているが、通常の夜や深夜、子ども用のマチネ上映は、すべてぼくが選んでいる。ラインナップが気に入ったら、ぜひぼくに感謝して欲しいね(笑)。

取材・文:小西未来

『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』 CS映画専門チャンネル ムービープラスで2021年6月放送

 

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『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』

レオナルド・ディカプリオ × ブラッド・ピット初共演!
1969年8月9日、事件は起こった。この二人にも ─ ラスト13分、映画史が変わる。

制作年: 2019
監督:
出演: