2019年7月12日(金)から公開中の『さらば愛しきアウトロー』を最後に、ロバート・レッドフォードは俳優業を引退すると宣言している。『明日に向って撃て!』(1969年)から『候補者ビル・マッケイ』(1972年)、『スティング』、『追憶』(1973年)、『華麗なるギャツビー』(1974年)、『コンドル』(1975年)、『大統領の陰謀』(1976年)、『ナチュラル』(1984年)と映画史に残る名だたる傑作に出演。
映画監督としても『普通の人々』(1980年)、『リバー・ランズ・スルー・イット』(1992年)、『クイズ・ショウ』(1994年)などを放った彼は、なぜいま役者を引退するのか?
『さらば愛しきアウトロー』が出品された2018年トロント国際映画祭で行った取材をもとに、ロングインタビューを慣行。学生時代に人生を変えた出来事から、出演作でお気に入りの映画、主宰を務めるサンダンス映画祭誕生の経緯、さらには“ライバル”クリント・イーストウッド監督まで、語り尽くしてもらった。2回に渡ってお届けする。
「素晴らしいプロジェクトがあれば、俳優復帰の可能性も否定できない」
―『さらば愛しきアウトロー』で役者を引退すると考えたのはいつですか?
この映画を引き受けたときに考えた。その前に出演した映画(Netflixオリジナル『夜が明けるまで』2017年)は、とても誇りに思っている作品だが、シリアスで重い。ジェーン・フォンダとの共演は心から楽しんだものの、映画はもの悲しく、重さがあった。以前から役者として出演する最後の映画は、みんなの気分を明るくするものがいいと思っていた。それに、この映画を引き受けたとき、社会が分断され、とてもダークな時代に突入していた。そんな時期だからこそ、気分を明るくする映画に出たいと思ったんだ。
―本当に最後ですか?
最後になりえる、というだけだ。気が変わる可能性は否定できない。だが、役者のキャリアを終えるタイミングとしては、この作品がちょうど良い気がしている。21歳から役者をやってきて、もう80歳になるから、ずいぶん長い間やってきたことになる。監督やプロデューサーに専念すべき時期だ。ただし、とても素晴らしいプロジェクトがあれば、戻る可能性は否定できないが。
―代表作がたくさんありますが、どの作品の役者として記憶されたいですか?
そんな風に考えるのはあまり好きじゃないな。ほとんどの映画で楽しい経験をさせてもらったしね。おそらく一般の映画ファンのなかでは『明日に向って撃て!』が上位にくるだろうし、個人的にも大好きな作品だ。サンダンスキッド役を演じるのは楽しかったし、ジョージ・ロイ・ヒル監督との仕事も最高だった。あの映画でポール・ニューマンと親しくなり、『スティング』でも一緒になった。
『明日に向って撃て!』と『スティング』はほぼ立て続けにやったんだが、私たちの役まわりが入れ替わっていることに気づいたかい?『明日に向って撃て!』で私が演じたのはシリアスで無口でダークな男。ポールは明るく脳天気なブッチ・キャシディだ。『スティング』では役まわりが反対になって、私が脳天気で、ポールがクールな男を演じている。実は、この点については誰にも指摘されたことがない。私はそれぞれまったく違ったキャラクターを演じることができて楽しかったよ。
客観的に言わせてもらうならば、『スティング』は映画史上もっともよくできた映画のひとつだと思う。最近、娘にせがまれてあの映画を数十年ぶりに見直してみたんだ。そして、つくづく傑作だと感心した。すべてはジョージ・ロイ・ヒル監督のお手柄だ。彼がデザインから音楽の選択まですべてを手がけた。願わくば、傑作を生み出した監督の1人として、ジョージ・ロイ・ヒルの名前が歴史に刻まれて欲しいね。
取材・文:小西未来
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『さらば愛しきアウトロー』は2019年7月12日(金)より全国公開
『さらば愛しきアウトロー』
レッドフォード俳優引退作!
16回の脱獄と銀行強盗を繰り返し、誰一人傷つけなかった74歳の紳士フォレスト・タッカーの、ほぼ真実の物語。
愛と犯罪と逃亡の一大エンターテインメント!
制作年: | 2018 |
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監督: | |
出演: |