ゲームクリエイターの小島秀夫と、『ドライヴ』(2011年)などで知られる映画監督のニコラス・ウィンディング・レフンが、「サンディエゴ・コミコン・インターナショナル2019」のトークイベント”Hideo Kojima: Master Storyteller”に登壇! レフンは、小島が手がけるゲーム「DEATH STRANDING」(2019年11月8日発売予定)でハートマンというキャラクターを演じている。
国や言語を超えて美しい友情関係を築いているという二人が、出会いのきっかけやお互いの創作スタンス、今後のクリエイティブの行方について語った。
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小島「レフンに連絡したのはマッツ・ミケルセンのアドレスを教えてほしかったから(笑)」
―小島監督とレフン監督の出会いを教えてください。
小島:日本では公開していない、レフンが監督した『ヴァルハラ・ライジング』(2009年)という映画があって、どうしても観たくて輸入版のブルーレイを手に入れたんです。とても衝撃を受けました! その後『ドライヴ』も観て、どうしても本人と話してみたくなりました。実はもう一つ理由があって、『ヴァルハラ・ライジング』に出演しているマッツ(・ミケルセン)のアドレスが知りたかったんです(笑)。
レフン:ある日、小島監督から突然コタンクトがあったんですが、その時は彼のことを知りませんでした。正直、ビデオゲームのことはよく分かりませんしね。でも彼は「会いたい」と言ってくれたので、僕も「もちろん!」と即答したんです。(デンマーク)コペンハーゲンにゲーム会社で働く従兄弟がいて、彼に小島秀夫という日本のアーティストに会うことを告げると、「すごい! 本当に会うの?」と驚いていましたね。
そして、ロンドンで小島監督と会うことになりました。言葉が通じないから、いつも間に通訳がいて不思議な感じだったけど、僕らには何だか似ているところがあったんです。どちらもが静寂が好きだということと、喋っていない時間も心地よい関係ということ。美しい友情関係が築けていますし、ロサンゼルス、東京、コペンハーゲンなど、ある種の“恋人”のように世界中を旅しています。
それとマッツについては、僕があの“マッツ・ミケルセン”を創り上げたってことを忘れないでいてね(笑)。
レフン「僕らはすでに世の中で流行っているものを壊すことが大好きなんだ(笑)」
小島:レフン監督に、自分が作るゲームにマッツを起用したいと伝えたんです。その時、レフン監督は『ネオン・デーモン』(2016年)の撮影中だったので、(『ネオン・デーモン』に出演している)キアヌ・リーヴスを推薦してくれました。ただ、最終的にマッツになって良かったですね(笑)。
―「DEATH STRANDING」の登場キャラクターは特定の誰かをイメージして作りましたか?
小島:僕の頭の中にキャラクターコンセプトがあって、そこに(ギレルモ・)デル・トロ監督やレフン監督などを入れて化学変化を起こし、バランスを取っていきました。レフン監督が演じたハートマンは、まさに彼をイメージして作ったキャラクターです。レフン監督からは「マッツより目立つキャラクターにしてね」と言われました(笑)。ハートマンは21分ごとに心停止する特殊な心臓を持っています。彼は1日に60回亡くなって、死んでいる間の3分間で向こうの世界にいる家族を探しに行くんです。
―「DEATH STRANDING」を作ろうと思ったキッカケは?
小島:2年前に独立して、今までやってきたことが全てなくなったとき、残っていたのは“人との繋がり”でした。その繋がりを使って、モノづくりをしようと思ったんです。ゲームのコンセプトはシンプルで、“世界中の人と繋がる”ことです。
―小島監督とレフン監督は、お二人とも革新的な作品を作り続けています。常に“挑戦”するのはなぜでしょうか?
小島:すでに世の中にあるものを僕が作っても、しょうがないと思っているからです。新しいものや、これまでにないものを作って、世界に刺激を与えたい。今のハリウッド映画などは心地よいエンタメが流行っていて、すぐに消化してしまって体に残りません。僕は、体の中に消化できない異物が入って抗体ができることで、その人の人生が変わるものだと思っています。
レフン監督も僕の作品も、それまでにないものを作り出しているので、賛否はあると思います。ですが作品が公開された時は賛否があったとしても、体に残るものであれば5年、10年後に評価は変わっていくでしょう。僕は『ブレードランナー』(1982年)や『2001年宇宙の旅』(1968年)のような作品を作りたい。独立して簡単な道を行くとしたら、無人島で銃で撃ち合いするようなゲームを作ればいいのでしょうが、それは僕がやるべきことではないと思っています。
レフン:僕も小島監督も、世の中で流行っていて心地のいいものを壊すことが大好きなんだ(笑)。そんなところが二人の共通点かもね。
HEARTMAN cutscene that I introduced at SDCC is out now. HEARTMAN is a member of BRIDGES. His heart stops every 21 mins,spends his time in the world of the dead for 3 mins and comes back by AED. 60 times/day. Thanks to my best friend & filmmaker Nicolas W Refn for his appearance! https://t.co/VyHPy29Fcs pic.twitter.com/W7jNPdl8wx
— HIDEO_KOJIMA (@HIDEO_KOJIMA_EN) July 27, 2019
レフン「AIの時代も俺たちが勝つ」
―これまで映画とゲームにははっきりと境界線がありましたが、現在はどうでしょうか?
小島:120年前に映画が誕生して、映画を観るには映画館に行くしか方法がありませんでした。その後、テレビが生まれて、そして配信が生まれました。今ではゲームも配信が主流です。近い将来、映画もゲームも同じ土俵に立つことになると思います。
これからはインタラクティブなもの、そうでないもの、そのどちらでもない中間的なものが出てくると思います。そして、今後は誰かが媒介しなくても、直接自分の作品を配信できるようになっていきます。この5年で、映画、音楽、ゲームも大きく変わっていくことでしょう。そして、次の5年でAIが入ってくるので、AIが続編やシリーズものを作ることになると思います。レフンに「AIの時代は誰が勝つ?」と聞くと、いつも「俺たちが勝つ」と明言するんです。
レフン:インターネットによって、誰もが創造力を発揮できる環境になりました。そして、創造するだけではなく、世界中に共有することができます。インターネットがやってくる前までは想像することもできなかった、全人類にとって絶好の機会です。