アクション映画、特に格闘シーンで大事なのは“体を張る”ことだろう。なんとなく形だけやっても見透かされるというか、本気度が見えやすい。ここで紹介するのは、まさに本気度充分の2作。どちらも女性が主人公だ。
肉弾戦! 韓国ノワール『悪女/AKUJO』
『悪女/AKUJO』(2017年)は、韓国製ノワール・アクション。いまや映画界で最も外れのないジャンルと言ってもいいかもしれない。本作も、冒頭の主観映像バトルから絶好調。バイクアクションや刃物の痛みを感じる肉弾戦など、主演のキム・オクビンがボロボロになりながら闘う姿がインパクト絶大だ。
女殺し屋が新婚の夫を殺され、今度は政府機関の暗殺者に。そこで新たな幸せを掴みかけるが、やはり悲劇からは逃れられない。『悪女』におけるアクションシーンは、主人公が運命と闘うこととほぼイコールだ。しかも、その運命が仕組まれたものだったとしたらどうなるか……。
というわけで、この映画をドライヴさせていくのは人生を翻弄された女性の、極限の怒りと悲しみだ。言ってみれば湿っている。湿っているから、ずっしりとした重みもある。
生々しい! シャーリーズ・セロンの殺人アクション
近年の“女性アクション”の注目作と言えばもう一本、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015年)でも最高にカッコよかったシャーリーズ・セロンの『アトミック・ブロンド』(2017年)。冷戦末期、ベルリンの壁崩壊を背景にMI6のエージェント、ロレーン・ブロートンが活躍(暗躍)する。
いわゆるスパイものらしく裏切りが交錯するストーリーだが、そこはまあそんなに気にしなくてもOK。最大の魅力は、やはりアクションだ。
公表されている情報によると、セロンの身長は177cm。それでも屈強な敵のスパイや警官に比べると細いし小さい。軽く吹っ飛ばされてしまうし、自分の攻撃も「一発でトドメを刺す」というわけにいかない。何度も何度も殴り、刺しまくって、ようやく勝つ。撮影技術によって、いくらでも“華麗さ”が演出できる中で、この映画のアクションは生々しい。
攻撃にパワーを乗せるためか、セロンの動きは思い切り大きい。手近にあるものをなんでも使って殴り、刺し、首を絞めるのも生々しさに拍車をかける。クライマックス近く、階段で繰り広げられるアクションは必見中の必見と言っていい。
監督のデヴィッド・リーチは『ジョン・ウィック』シリーズ(2014年~)に共同監督やプロデューサーとして関わってきた人。本作の後は『デッドプール2』(2018年)を監督し、最新作は『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』(2019年)である。もう完全な上り調子。その勢いを『アトミック・ブロンド』でも感じてほしい。