アクションにホラー、コメディといった、いわゆるジャンル映画には“定番”の面白さと難しさがある。「観客が求めるものに応えてくれるから良い」というのは同時に飽きられやすい部分でもあるが、それだけ工夫のしがいもあるわけだ。
『デッドプール』 正統派ヒーローにはできない傍若無人な痛快アクション!
たとえば『デッドプール』(2016年)である。一般的に第1作目は“誕生編”なので、いかにしてヒーローになったかが描かれる。結果、ヒーローがスクリーンに登場するまで時間がかかるという難点がつきものでもある。
しかし、この『デッドプール』は冒頭からいきなり主役登場で大アクションを展開。そこから「で、なんでこうなったかというと……」となるわけだ。原作から引き継いだ、キャラクターがスクリーン越しに観客に話しかける“第4の壁”突破という特徴も活かし、過去と現在を自在に行き来してみせる。アクションシーンも快調で、なおかつハード。銃をぶっ放し、刃物でぶっ刺し、減らず口は止まらない。
MCU以降のアメコミヒーロー映画の流れを推し進めつつ、正統派ヒーローにはできないことをやってくれるから『デッドプール』は楽しいのである。
『ジョン・ウィック:チャプター2』 15禁のレイティングを受けてでも“見せたいもの”がある!
2019年10月に最新作『ジョン・ウィック:パラベラム』も公開される人気シリーズの2作目『ジョン・ウィック:チャプター2』(2017年)も、工夫のカタマリのような映画だ。最大のポイントは、格闘アクションに銃撃をミックスさせた“ガンフー”バトル。銃撃戦→弾が切れて格闘戦……ではなく、格闘しながら銃でトドメを刺す、という闘いだ。
その闘い方にマッチしているのが、ブラジリアン柔術のエッセンス。飛びつき腕十字など腕を極める関節技は相手から銃を奪う動きにつながり、また柔術で重視されるポジショニング=相手の動きを封じて上を取る技術が、“プラス銃”で必殺技になる。
タイトルロールでキャリア何度目かのピークを築いたキアヌ・リーブスは、冒頭のアクションで柔道の背負い投げも披露。相手の襟を掴み、上下に揺さぶって体勢を崩させて投げるのがリアルだ。華麗すぎないからこそ魅力的なのである。
アクションをある程度“引き”の画で捉え、1カットが長めなのもいい。キアヌの体技がしっかりしているから、細かいカット割りでごまかさなくてもいいわけだ。どこで何をやっているか、どういう闘いが展開されているかが分かりやすくもある。
ナイフで容赦なく突き刺し、銃で頭を撃たれれば血しぶきが飛び散る非情っぷり。レイティングによって観客が限定されるデメリットもあるが、それ以上に“見せたいものがある”ということだろう。
『デッドプール』と『ジョン・ウィック:チャプター2』。ライアン・レイノルズ、キアヌ・リーブスという主演スター2人を筆頭に、作り手たちの気合いが感じられる2作品である。
文:橋本宗洋