過去作予習不要! ポップ“ホラー”カルチャーのアイコン再誕
『チャイルド・プレイ』は1988年(日本公開:1989年)から始まった、ホラー映画シリーズの最新作であり、リメイクです。とはいえ今までの設定を一新しているので、過去作を一切知らなくても楽しめます。
殺人人形チャッキーの恐怖を描きますが“呪いの人形”的ないわくつきのアイテムではなく、一般的に売られているおもちゃの人形が、ある理由で殺人鬼に変異するわけです。愛らしいルックスなのに包丁を手にかまえているイメージが強烈で、たちまちホラー映画ファンの間で人気者になりました。
スティーヴン・スピルバーグの『レディ・プレイヤー1』(2018年)にも登場するぐらいですから、1980~90年代を代表するポップ“ホラー”カルチャーのアイコンです。映画は観たことがなくても、このキャラは知っているという人は多いでしょう。ユニバーサル・スタジオ・ジャパンのハロウィン・イベントにも登場していたようです。
古参ファン賛否両論!? シリーズにまつわる大幅改変点とは
今回のリメイク版は、1作目の『チャイルド・プレイ』のストーリーを踏襲していますが、ある重要な設定を大幅に変えています。ここが旧作のファンにとってはショッキングであり評価が分かれるところなのですが、旧作のチャッキーは殺人犯の魂が人形に乗り移り誕生した、というオカルト系です。
しかし、今回のチャッキーはAI内蔵であらゆるインターネット家電やシステムにアクセスできる人形型のデバイスでもあり、そのAIが暴走して凶行を繰り返す、というSF系のクリーチャーなのです。そして、チャッキーがシングルマザーのカレンとその息子アンディを恐怖のドン底に……という展開こそ旧作と共通しているものの、オリジナル版ではまだ幼さの残る子どものアンディを守る母親が主役だったところ、本作は少年アンディとその仲間たちがチャッキーに立ち向かうというストーリーになっています。
『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』(2017年)の製作陣が入っているだけに、少年たちが怪事件に巻き込まれる、という仕立てになっています。“いまの時代に合わせた変更”ということなのでしょうが、もしかすると“大人の事情”が絡んでいるのかもしれません。
というのも、オリジナルの『チャイルド・プレイ』シリーズの邦題は
『チャイルド・プレイ』(1988年)
『チャイルド・プレイ2』(1990年)
『チャイルド・プレイ3』(1991年)
『チャイルド・プレイ/チャッキーの花嫁』(1998年)
『チャイルド・プレイ/チャッキーの種』(2004年)
『チャイルド・プレイ/誕生の秘密』(2013年)
『チャイルド・プレイ ~チャッキーの狂気病棟~』(2017年)
と、すべて『チャイルド・プレイ』と謳っていますが、原題は
『Child’s Play』
『Child’s Play 2』
『Child’s Play 3』
『Bride of Chucky』
『Seed of Chucky』
『Curse of Chucky』
『Cult of Chucky』
であり、4作目以降は『チャイルド・プレイ』シリーズではなく“チャッキー”シリーズなのです。
今回の映画製作陣は、「チャッキーというキャラをいまの時代に登場させる」ではなく、「『チャイルド・プレイ』という物語を今っぽく語りなおす」を志向したように思います。
その証拠に、そもそも同シリーズの生みの親であるドン・マンシーニが今回のリメイク版にはかかわっておらず、彼は今までのチャッキー路線を継承した“チャッキー”を作りたがっていたようです。そして彼は、独自にチャッキーのドラマ・シリーズを企画しているとのこと。
この設定の変更を受け入れるかどうかが、昔からのホラー映画ファンにとって本作を気にいるかどうかの“踏み絵”となっているわけですが、僕は気に入りました。設定はどうあれ、期待を裏切らずチャッキーは暴れてくれますし、とても楽しめるホラー映画の快作です。
チャッキーの歪んだ愛情が血の惨劇を引き起こす……!
この作品、実はオカルトかSFか以上に、もうひとつ大きく設定を変えたところがあるのです。それは、殺人を繰り返すチャッキーの“動機”です。オリジナル版は、もともと凶悪犯の魂が取り憑いているし、また極めて自分勝手な理由(たしかアンディの体に乗り移り転生しようと考えている)からアンディたちを襲うわけですが、今度のチャッキーは、ずばり“アンディへの愛”なのです。
今までのチャッキーは殺人者ですが、今回はストーカー的。だから、ちょっとチャッキーに対して切なさを感じてしまうのです。映画館の売店でチャッキー人形が売ってたら買っちゃうかも……。
そんな本作ではチャッキーの声を、あの『スター・ウォーズ』シリーズのルーク・スカイウォーカーことマーク・ハミルがあてています。意外と思われるかもしれませんが、彼はバットマンのアニメでジョーカーの声を演じていたりするので、こういうエキセントリックなキャラは似合う。なので、スター・ウォーズをイジったくだりも出てきます。怖いところは怖いのですが、シリアスで後味の悪すぎる映画ではなく、ちょっと過激なブラック・コメディ的に楽しめます。
最後にトリビアを。劇中パトカーのおもちゃが出てきてセリフを発しますが、映画『ロボコップ』(1987年)の有名なフレーズです。『チャイルド・プレイ』も『ロボコップ』も<ORION>という映画会社の作品で、“同期”みたいなものなのです(笑)
文:杉山すぴ豊
『チャイルド・プレイ』は2019年7月19日(金)より全国ロードショー
『チャイルド・プレイ』
引っ越しをして友達がいない少年アンディは、誕生日に音声認識やセンサー付きカメラなどが付いた高性能人形を母親からプレゼントされる。
自らを“チャッキー”と名乗り、「君が一番の親友だよ」と話すチャッキーにアンディは次第に夢中になるが、その後チャッキーが豹変し…。
制作年: | 2019 |
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監督: | |
出演: | |
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