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「ヤクザ映画にピッタリ」「日本の監督で前日譚を」オスカー2部門受賞『エミリア・ペレス』オーディアール監督が語る

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ライター:#遠藤京子
「ヤクザ映画にピッタリ」「日本の監督で前日譚を」オスカー2部門受賞『エミリア・ペレス』オーディアール監督が語る
『エミリア・ペレス』© 2024 PAGE 114 – WHY NOT PRODUCTIONS – PATHÉ FILMS - FRANCE 2 CINÉMA
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「どれだけ厳しい人生を生きてきたか、52歳だからこそ見えてくる」

――トランス女性のエミリアが、トランスの方々に類型的だと批判されているという記事を見かけたのですが、トランプ大統領に存在を否定された(世界には二つの性別しかないと発言)いまトランス女性が映画の主役になることは、私はとても重要だと考えています。オペラの企画からこの映画ができたということからも、あえてオペラのように登場人物をわざと類型的にして際立たせたのではないかと思ったのですが。

確かに。登場人物が類型的なのは、オペラが類型的な人物像を描くものだからです。また、オペラは絶対に登場人物の心理的な分析はしません。ただ、オペラの中には歌があり、その歌で登場人物の違う側面や深みをも表現することができます。そういう意味でも、私は深い心理分析を描こうとしてトランスジェンダーの女性を登場させたわけではないんです。

ただエミリア・ぺレスにとって大事だったのは、彼女が若いトランス女性ではないということです。彼女は52歳で、成熟した女性の世代のトランスジェンダーということが、私にとってはとても重要だったんです。

『エミリア・ペレス』© 2024 PAGE 114 – WHY NOT PRODUCTIONS – PATHÉ FILMS – FRANCE 2 CINÉMA

――若い女性を主人公に設定して物語を考えたが、うまくいかなかったという話をされていましたよね。

この『エミリア・ぺレス』という作品に関しては、若い女性主人公では物語が成り立ちませんでした。なぜなら、たとえばリタは46歳で、あの男性中心の弁護士事務所であのポストでは、もう出世は見込めない。彼女は社会的成功に挫折しているんです。そして欲求不満も抱えています。そしてエミリア、もしくはマニタスにおいては、性別適合手術を受けようと考えるに至るまでどれだけの苦悩を抱え、どれだけ厳しい人生を生きてきたか、そういう人生がやはり52歳だからこそ見えてくる。そしてエピファニアも同じです。夫の暴力を受けてきた過去があるから、ああいう行動に出るのです。若い女性には過去の経験は少ない。また男性では社会的成功への欲求不満は描きにくいと考えました。

『エミリア・ペレス』© 2024 PAGE 114 – WHY NOT PRODUCTIONS – PATHÉ FILMS – FRANCE 2 CINÉMA

――映画はコロス(合唱隊)から始まっていて、とてもオペラ的でした。オペラからミュージカルという形になったと理解しているんですが、ミュージカルの制作は劇映画よりも大変ではありませんでしたか?

もともとオペラをやりたい思いがあり、歌があることが私にとって必要不可欠で、やりたくて残したことなんです。歌には普通の台詞にはない喚起力、想像を喚起させるパワーがある。ただ単にセリフを言うのとは違う、感情を呼び寄せられるパワー、観客の心に届くパワーを持っていると思います。ダンスが入るとさらに、普通にセリフを言うよりも、とても軽やかに言えたり、もっと豊かに表現したりすることができます。そういう意味で今回、歌とダンスを取り入れました。ドラマチックな物語を創るときに最適だと思っています。

『エミリア・ペレス』© 2024 PAGE 114 – WHY NOT PRODUCTIONS – PATHÉ FILMS – FRANCE 2 CINÉMA

取材・文:遠藤京子

『エミリア・ペレス』は3月28日(金)より全国公開

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『エミリア・ペレス』

弁護士リタは、メキシコの麻薬王マニタスから「女性としての新たな人生を用意してほしい」という極秘の依頼を受ける。リタの完璧な計画により、マニタスは姿を消すことに成功。数年後、イギリスに移住し新生活を送るリタの前に現れたのは、新しい存在として生きるエミリ ア・ペレスだった。過去と現在、罪と救済、愛と憎しみが交錯する中、運命は思わぬ方向へと大きく動き出す――

監督・脚本:ジャック・オーディアール『君と歩く世界』『ゴールデン・リバー』『 パリ 13 区』
制作:サンローラン プロダクション by アンソニー・ヴァカレロ
出演:ゾーイ・サルダナ、カルラ・ソフィア・ガスコン、セレーナ・ゴメス、アドリアーナ・パス

制作年: 2024