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日本人はハリウッドでどう描かれてきた?『SHOGUN 将軍』の快挙と三船・高倉・真田の偉業から紐解く

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ライター:#谷川建司
日本人はハリウッドでどう描かれてきた?『SHOGUN 将軍』の快挙と三船・高倉・真田の偉業から紐解く
劇場パンフレット:筆者私物
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『SHOGUN 将軍』の快挙!

真田広之プロデュース兼主演による『SHOGUN 将軍』の快挙が止まらない。昨年12月のエミー賞(ドラマシリーズ)での作品賞、主演男優賞、主演女優賞(アンナ・サワイ)、監督賞の受賞に続き、ゴールデングローブ賞(テレビドラマ)でも作品賞、主演男優賞、主演女優賞、助演男優賞(浅野忠信)に輝いた。

どこが快挙のポイントなのかというと、英語圏での放送に際して非英語の台詞というだけでもの凄くハンディキャップがある中、堂々と日本語での台詞で押し切った上での受賞である点。古くから字幕文化が根付いてきた日本と違い、英語以外の言語というだけで視聴者・観客の数が何十分の一かに限定されてしまうアメリカにあって、「台詞は日本語だけれども観てみよう」と思わせただけで、これはとてつもなく凄いことなのだ。

『SHOGUN 将軍』© 2024 Disney and its related entities

もっとも、日本語以外の言語についていうならば、本来はポルトガル語であるはずの台詞もすべて英語なのはご愛敬で、「お前はどこでポルトガル語を覚えたんだ?」といった台詞のやりとりが英語なのは違和感がぬぐえないのだが。

加えて、プロデューサーも兼ねた真田広之は、日本人が見て変なところがないように、日本語台詞の言い回しから当時の侍としての所作、時代考証にいたるまで目を光らせ、ひと昔前なら当たり前だった“外国人が見た勘違いの日本”にならないように徹底していたことも特筆すべき点だった。

「世界のミフネ」らが努力を重ねた歴史

そういった、日本人として恥ずかしくないように製作者側に堂々と主張するというのは、古くは三船敏郎ら国際的大スターが努力して積み重ねてきたことだ。同じ原作を最初にテレビシリーズ化した『将軍 SHŌGUN』(1980年)の時、今回の真田広之と同じ吉井虎永役を演じていた三船敏郎は、侍が懐に入れてある懐紙を外すように言われて、通訳を兼ねていた共演者の目黒祐樹を通じて、「侍は刀を使った後に血を拭ったりするのに懐紙を懐に忍ばせておくのがマナーだ」と主張したのだという。

アメリカ人の監督は「それだと台本を懐に入れてあるように見えてしまうからダメだ。この作品は日本人だけでなく全世界の人たちに見てもらう作品だから、日本の常識は通らない。資金はこちらで出しているから決定権はこちらにある」と言われてしまい、苦虫を噛み潰したような顔で「うーん」と唸って、仕方なく折れたのだという(※目黒さん談)。

そのケースでは主張は通らなかったとはいえ、納得できる主張には耳を傾けてくれたという。三船敏郎はじめ、丹波哲郎、高倉健といった先達が、言うべきことを堂々と主張する努力を重ねてきたからこそ、今日の真田広之や渡辺謙の仕事に於いても、現地スタッフからの尊敬が得られ、勘違い描写排除を推進する下地ができていったに違いない。

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