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小芝風花×津田健次郎が『ロード・オブ・ザ・リング』に〈生命〉を吹き込んだ!『ローハンの戦い』見どころ解説

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ライター:#多田遠志
小芝風花×津田健次郎が『ロード・オブ・ザ・リング』に〈生命〉を吹き込んだ!『ローハンの戦い』見どころ解説
『ロード・オブ・ザ・リング/ローハンの戦い』LOTR TM MEE lic NLC. © 2024 WBEI
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大迫力の騎馬戦闘シーン、実写版以上に活躍する“巨大生物”たち

大規模戦闘を描くことが多かった『LOTR』3部作に比べ、本作では1対1の決闘など個人視点の戦闘も描かれているだけでなく、騎馬国家ローハンの武将たちによる、騎馬2,000頭の大スペクタクルな戦闘シーンも見所だ。

『ロード・オブ・ザ・リング/ローハンの戦い』LOTR TM MEE lic NLC. © 2024 WBEI

そして“ムーマク”など、中つ国の巨大生物たちも実写映画版以上に大活躍。ヘラたち人間からの視点がより増えているので、今まで俯瞰で見ていた生物も迫力が増している。とくに遠景ではなく実際にヘラを踏み潰そうと間近に迫り、まさに触れられるほどの近距離で描かれる巨大生物同士の戦いは大迫力の一言だ。

『ロード・オブ・ザ・リング/ローハンの戦い』LOTR TM MEE lic NLC. © 2024 WBEI

人間からの視点という点では、人間同士のバトルシーンもより迫力を増している。真っ先に挙げられるのは、剛力で知られるヘルム王が自ら敵に相対するシーンだろう。素手で単独、多数の軍勢をなぎ倒し蹴散らしていく。王の拳の威力で相手が半回転しながら倒れ伏す、そんなアニメならではのシーンも、伝説となる王の武勇を示すのにピッタリである。

また、オークなどで構成されるサウロンの軍勢と戦った『ロード・オブ・ザ・リング』や『ホビット』よりも過去の物語のため、人間族同士の戦争がしっかり描かれているのも特筆すべきだろう。戦争文化の違いも描写されており、盾と剣を用いる“西洋的”な剣術のヘラと、相手の攻撃を受け流すなど剣で攻防を兼ねるウルフの戦いをはじめ、今まで見たことのないアクションシーンが展開される。

『ロード・オブ・ザ・リング/ローハンの戦い』LOTR TM MEE lic NLC. © 2024 WBEI

実力派スタジオが集結!“手描き”アニメへのこだわり

2001年の映画『LOTR』では原作の挿し絵作家アラン・リーなどを招聘し、原作通りのイメージの再現に成功した。そして本作『ローハンの戦い』には、その映画版スタッフが協力。剣や甲冑、衣装に屋敷や城の造形などの設定が共通している。

『ロード・オブ・ザ・リング/ローハンの戦い』LOTR TM MEE lic NLC. © 2024 WBEI

もちろんJ・R・R・トールキン作品のアニメ化は今回が初めてではない。中つ国のアニメはジーン・ダイッチによる『The Hobbit』(1967年)や、『フリッツ・ザ・キャット』(1971年)などで知られるラルフ・バクシ監督の『指輪物語』(1978年)などがあった。なお、旧ソ連で制作され、こちらも未完に終わった『The Hobbit』(1991年)なるアニメも存在している。

しかし、それらでも満足のいくアニメ化は難しかったと言える。なぜか? それは大長編の原作であるため、語り終えることとトータルのクオリティコントロールがとても難しい、ということだろう。実際、バクシの『指輪物語』はクオリティは高かったものの、物語途中で力つきてしまった。世界中の読者それぞれの「指輪物語」へのイメージの違いも、その一因と思われる。

『ロード・オブ・ザ・リング/ローハンの戦い』LOTR TM MEE lic NLC. © 2024 WBEI

『ローハンの戦い』では、ピーター・ジャクソンが設立したWETAデジタルが全面協力し、実写映画で使用されたCGデータを神山監督らに提供。様々なディテールの積み重ねによって原作・実写との親和性をより強固なものにしている。しっかりと世界観を共有しているという点で、安心して物語に没入できるはず。

さらに、昨今はアニメーションにもCGが入っているのは当たり前だが、この作品はあえて手描きにこだわっている。SOLA ENTERTAINMENTの元に、MAPPAやProduction I.Gといった日本を代表するスタジオが集結。その描画力が、映画世界を見事にアニメにコンバートしてみせた。

『ロード・オブ・ザ・リング/ローハンの戦い』LOTR TM MEE lic NLC. © 2024 WBEI

槌手王ヘルムや王女ヘラなど人気キャラクターの魅力爆発

そして物語を構成するのはキャラクターだ。老いてなお勇猛果敢で、戦場では相手を素手でなぎ倒す槌手王ヘルム。このキャラは原作ファンにも人気が高く、アクションRPGゲーム「シャドー・オブ・ウォー」に登場するほど。そのヘルムの無双ぶりがアニメ化されただけで一見の価値はある。そしてなんといっても主人公、王女ヘラの活躍だろう。実はこのキャラクター、原作では名もない存在である。

『ロード・オブ・ザ・リング/ローハンの戦い』LOTR TM MEE lic NLC. © 2024 WBEI

本作のヘラは、優しさと激しさを持つ女性として描かれている。ローハンに伝わる「盾もつ乙女」の伝承と組み合わせ、「戦の世でも女性だからこそ活躍できる」という要素をうまく組み込んだ物語が展開。関連作における女性キャラの中で1、2を争う魅力を持つヘラは、もしかしたらこれからの中つ国の語られ方を方向づけるようなキャラクターになるかもしれない。

『ロード・オブ・ザ・リング/ローハンの戦い』LOTR TM MEE lic NLC. © 2024 WBEI

錚々たる名優たちが吹替を担当! 日本語版声優陣も超豪華

豪華な吹替陣についても触れなくてはいけないだろう。英語版では、言い伝えの語り部であるナレーターを『LOTR』のローハンの女戦士、エオウィン役のミランダ・オットーが担当。ヘルム王役は『刑事グラハム/凍りついた欲望』(1986年)で最初にレクター博士を演じた名優ブライアン・コックスが務め、王の威厳をこれでもかと見せつける。魔法使いサルマンの声は映画版同様に故クリストファー・リーが担当しているが、これは映画のアーカイブからリーの声をピックアップして使用したそうだ。日本語吹替版も、ヘルム王を市村正親、ヘラを小芝風花、ウルフを津田健次郎と豪華そのもので、ぜひ比較して観てみたい。

『ローハンの戦い』を見ていると、中つ国の物語をもっとアニメで描いて欲しいと思ってしまう。「追補編」や「シルマリルの物語」など、まだまだ語られるべき中つ国の物語はたくさんある。

神山監督がニュージーランドのWETAスタジオを訪問し、ホビット庄のセットを訪ね、ピーター・ジャクソン監督と交流したりしている映像を見ると、「もしかすると『指輪』や『ホビット』本体のアニメ化も決して不可能ではないのでは……?」とさえ思う。『LOTR』映画の新プロジェクトも動いているという話だが、アニメ版でもさらなる展開を熱望したいところである。

文:多田遠志

『ロード・オブ・ザ・リング/ローハンの戦い』は2024年12月27日(金)より全国公開

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『ロード・オブ・ザ・リング/ローハンの戦い』

〈一つの指輪〉をめぐる壮大な冒険を描いた『ロード・オブ・ザ・リング』3部作には、200年に遡る戦いの物語があった。J・R・R・トールキンの原作「指輪物語 追補編」に記された、その始まりのエピソードの映画化に、3部作を監督したピーター・ジャクソンが製作総指揮として立ち上がる! そしてハリウッド超大作の監督の座を託されたのは、『東のエデン』『攻殻機動隊S.A.C.』などで、日本アニメーションの第一人者と讃えられる神山健治。この冬、〈中つ国〉の未来を決める伝説の戦いを見届けて初めて、『ロード・オブ・ザ・リング』は完結する――。

監督:神山健治(『東のエデン』『攻殻機動隊S.A.C.』「精霊の守り人」)
製作:フィリッパ・ボウエン、ジェイソン・デマルコ、ジョセフ・チョウ
製作総指揮:フラン・ウォルシュ、ピーター・ジャクソン、サム・レジスター、キャロリン・ブラックウッド、トビー・エメリッヒ
脚本:ジェフリー・アディス&ウィル・マシューズ、フィービー・ギッティンズ&アーティ・パパゲオルジョウ
ストーリー:アディス&マシューズ、フィリッパ・ボウエン

日本語吹替版キャスト:市村正親(ヘルム王)、小芝風花(王女ヘラ)、津田健次郎(ウルフ)、中村悠一(フレアラフ)本田貴子(オルウィン)、坂本真綾(エオウィン)、斧アツシ(フレカ)、森川智(ハレス)、入野自由(ハマ)、山寺宏一(ターグ将軍)、沢田敏子(老ペニクルック)、田谷隼(リーフ)、大塚芳忠(ソーン卿)、飯泉征貴(シャンク)、村治学(ロット)、勝部演之(サルマン)

制作年: 2024