映画の街・香港
80~90年代初頭の香港は、「いつかは訪れたい国」として熱視線を浴びていた。それは世界中に輸出されたカンフー映画や、香港ノワールで描かれる雑多な街の空気、そこに影響を受けたハリウッド作品が醸し出すトンデモなバイブス~ミステリアスなアジアのエネルギーが大きな理由だったのだろう。そして昨今のインバウンド需要の爆増は、その対象が日本に移り変わりつつあることを実感させる。
映画好きにとっての香港も、やはりブルース・リーやジャッキー・チェンに連なるカンフー映画のイメージが色濃い。とくにジャッキー映画は当時ゴールデンタイムに頻繁にテレビ放送されていたので、大げさでなく子どもから老人まで日本にジャッキーを知らない人はいなかった。しかし現在20代前後の若者などは、K-POPグループのメンバー全員の名前は言えても香港の映画スターは一人も知らない、というのが当たり前なのかもしれない。
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編集部撮影
ファッチャイと香港ノワール
『男たちの挽歌』(1986年)で香港ノワールのイメージを決定づけた名優チョウ・ユンファも、主演作がなかなか日本公開されなくなって久しい。それでも“ファッチャイ”ことユンファを愛する映画ファンは多く、実際どんなタイプの作品でも彼が出演するだけで、その存在感によってピリッと引き締めてくれる。1997年に中国に返還されて以降は検閲の強化もあって勢いが失われつつある香港映画だが、ユンファ主演作を中心に90年代以降の作品も再評価の機運が高まっている。
そんなユンファが『リプレイスメント・キラー』(1998年)や『アンナと王様』(1999年)でハリウッドに進出し、名実ともにワールドワイドなスターとなっていた時期の作品が『NYPD15分署』(1999年)。当時『ブギーナイツ』(1997年)で注目を集めていたマーク・ウォールバーグとタッグを組んだ本作が現在TV放送中なので、その魅力をざっくり紹介したい。
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『NYPD15分署』© New Line Productions, Inc.