あの“純”殺人鬼の恐怖ふたたび!『テリファー 聖夜の悪夢』
四肢断裂、生皮剥ぎ、股間にチェーンソーと毎度ライン越えのゴア描写を炸裂させてきた『テリファー』シリーズも早3作目(正確には4作目)。正体不明、目的不明、意味不明、ひたすら愉快で残酷な殺人を繰り返す“純”殺人鬼「アート・ザ・クラウン」は、殺っていること……もとい、やっていることとは裏腹にモリモリとファンを増やしている。
だが、残念なことにアート・ザ・クラウンは『テリファー 終わらない惨劇』(2022年)で首を吹き飛ばされて死んでしまった。11月29日(金)より公開中の最新作『テリファー 聖夜の悪夢』ではどのように復活を遂げ、再び殺戮に至るのか?
なぜ殺人鬼アートは蘇った? 前作からの流れをおさらい
文章にすると訳が分からないかもしれないが、説明しよう。首なしのアートは、『テリファー』(2016年)で顔を食いちぎられメンヘラファイナルガールと化した、ヴィクトリアが産みだした首によって蘇る。というのも、ヴィクトリアは『終わらない惨劇』に登場した小さな女児ピエロ“ペイルガール”に憑依され、アートと行動を共にするサイコパス殺人鬼へと変貌するのだ。
ムチャクチャだが、当然といえば当然だ。何故か? アートは、『終わらない惨劇』の主人公シエラが持つ聖剣でしか倒せないからだ。たしかに前作では聖剣で首をはねられたが、ペイルガールは無傷だった! よって、聖夜の夜に復活を遂げたアート・ザ・クラウンとヴィクトリアことペイルガールは、世界を血に染めていく。
惨劇が再開される中、前作の生存者であるシエラとその弟ジョナサンは、前作のトラウマからどうやって立ち上がり、再びアートと対峙するのか? それが『テリファー 聖夜の悪夢』のストーリーだ。
残酷ホラーらしからぬ上映尺、その理由は?
前作『終わらない惨劇』から『テリファー』シリーズの特徴として顕著になったのは、やたらと長い上映時間だ。前作は138分、今回の『聖夜の悪夢』は127分。残酷ホラー映画としてはありえない長尺である。
しかし、この長さにはちゃんと意味があった。あらゆる登場人物――秒殺されるモブキャラも含む――をしっかり描くためなのだ。多少映画のリズムが崩れても、その姿勢は保ち続ける。観客が犠牲者たちの背景をある程度把握したうえで、かれらがアートに弄ばれズタズタにされていく様をより楽しませるための“感情移入”というエッセンスをブチ込むために、長尺にならざるを得ないのである。アートの登場を散々焦らされた観客も大歓喜というわけだ。
このノリは今回も継続。本作ではシエラとジョナサンというファイナル姉弟の鬱々としたトラウマが併せて描かれ、より観客がアート(陽)、シエラ&ジョナサン(陰)という対比を楽しめる作りとなっている。より愉快に、より陰鬱に。この極端な振り幅が一言も言葉を発しないアート・ザ・クラウンのキャラクター性を明確にし、その存在自体を魅力的にしていると言える。
『テリファー 聖夜の悪夢』
ハロウィンの大虐殺を生き延びたシエナとジョナサンはトラウマに苦しみながらも人生を立て直そうと奮闘していた。しかし、街がクリスマスシーズンになり、聖夜を祝おうとする住民たちをよそに、アート・ザ・クラウンが再び姿を現し絶望のどん底に陥れる――。
監督・脚本:ダミアン・レオーネ
出演:ローレン・ラベラ、デヴィッド・ハワード・ソーントン、サマンサ・スカフィディ、エリオット・フラム、ダニエル・ローバック、クリス・ジェリコ ほか
制作年: | 2024 |
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2024年11月29日(金)よりTOHOシネマズ新宿ほか全国公開中