異次元から来た戦士ミステリオの秘密とは？ ほぼネタバレなし『スパイダーマン：ファー・フロム・ホーム』速攻レビュー!!

実は最も多くスパイダーマンを演じた！ 俳優トム・ホランドの魅力、炸裂

こういう話を聞いたことがあるのです。映画におけるスパイダーマンのイメージというと、やはり2002年からのサム・ライミ版『スパイダーマン』で主役を演じたトビー・マグワイヤのイメージが強くて、「トム・ホランド＝ピーター・パーカー／スパイダーマン」という風には、なかなか思えなかったと。

『スパイダーマン：ファー・フロム・ホーム』©2019 CTMG, Inc. All rights reserved. Courtesy of Sony Pictures

しかし、この風向きが変わり始めたのは2018年の『アベンジャーズ／インフィニティ・ウォー』で、ピーターがトニーの腕の中で消えていくシーンがあまりにもエモーショナルで、あそこでグッとファンが増えたそうです。従って、今回の『スパイダーマン：ファー・フロム・ホーム』は、新たなピーター・パーカー／スパイダーマン像を確立した“トム・ホランド版スパイダーマン”の最新作です。

これでトム・ホランドがピーターを演じるのは通算5作目。最も多くスパイダーマンを映画で演じた俳優になりました。本作はスパイダーマンがホームタウンのNYから離れ、遠くヨーロッパで冒険するというもの。だから“ファー・フロム・ホーム”なのです。

『スパイダーマン：ファー・フロム・ホーム』©2019 CTMG, Inc. All rights reserved. Courtesy of Sony Pictures

また、登場するヴィランもこれまでの怪人とは大きく異なり、異次元からやってきた水や火の巨人（エレメンタル・クリーチャーズ）。スパイダーマンに指令を下すのはニック・フューリー。なによりも、あの衝撃超大作『アベンジャーズ／エンドゲーム』の次はこれ！ という位置づけで、今までのスパイダーマンらしからぬ壮大な話？ と思いきや、ヨーロッパに行くのは修学旅行みたいなものだし、ニック・フューリーからは“使えない若造”みたいに怒られたりと、いつものスパイダーマンらしさが全開でした。

ぶっとび設定の異次元戦士ミステリオは『ファー・フロム・ホーム』でも原作まんま!?

そう、本作は一見今までのスパイダーマン映画とは異なる顔つきをしながら、実にオーソドックスなスパイダーマンの物語になっています。ネタバレになるので詳しくは書きませんが、本編をすでにご覧になった方はミステリオの秘密に驚くでしょう。しかし、原作コミックのミステリオのエピソードもああいう話が多く、そして橋や橋の上を使うのです。

『スパイダーマン：ファー・フロム・ホーム』©2019 CTMG, Inc. All rights reserved. Courtesy of Sony Pictures

ミステリオのコミック・デビューは1964年。前作『スパイダーマン：ホームカミング』（2017年）に登場したヴィラン、バルチャーが1963年に登場しましたから、ほぼ“同期”です。映画版バルチャーはかなりコミックと異なる設定となっていましたが、今回のミステリオは“異次元から来た戦士”というとても飛躍したキャラながらも、比較的原作に忠実とも言えます。

なお、ミステリオは自分が“アース833”から来たと言っていますが、原作コミックでアース833には“スパイダーUK”というイギリスのスパイダーマンがいるのです（笑）。

『スパイダーマン：ファー・フロム・ホーム』©2017 Columbia Pictures Industries, Inc. and LSC Film Corporation. All Rights Reserved. | MARVEL and all related character names: c & TM 2017 MARVEL.

スケールや見せ場は派手になりましたが、僕らがスパイダーマンを好きで応援したくなる理由や、悩める若者ヒーローといった、スパイダーマンの物語にちゃんとなっていました。そして、この映画にはかつてのスパイダーマン映画好きにはたまらないサプライズがあります。僕は、そのシーンに「えええ!?」と声をあげてしまいました（笑）。

スパイダースーツの変遷でわかる！ ピーターの成長に涙

本作には、4つのスパイダースーツが登場します。最初はトニー・スタークから渡されたアイアン・スパイダーで活躍し、赤と青のオーソドックスなスパイダースーツ、黒いステルス・スパイダースーツ、そしてドラマの最後には自ら開発した赤と黒の新スーツで活躍します。

『スパイダーマン：ファー・フロム・ホーム』©2019 CTMG, Inc. All rights reserved. Courtesy of Sony Pictures

この構造は『ホームカミング』と似ていて、最初はトニーから贈られた赤と青のスーツを着ていましたが、最後は自分が着ていたホームメイドのスーツ姿になります。つまり、最初はトニー・スタークの力を借りたスパイダーマンだったが、最後は自分自身の力でスパイダーマンになる。最後に着るスーツは、どちらも“MADE BY ピーター”ですが、スーツのスペックは各段に向上しています。これはピーターの成長を暗に物語っているのかもしれませんね。

『スパイダーマン：ファー・フロム・ホーム』©2019 CTMG, Inc. All rights reserved. Courtesy of Sony Pictures

『スパイダーマン：ファー・フロム・ホーム』は、ワクワクするようなスパイダーマン映画です。早くも第3弾が楽しみですが、トム・ホランドはトビー・マグワイア、アンドリュー・ガーフィールドらが登場する、実写版『スパイダーマン：スパイダーバース』（2018年）をやってみたい！ と言ったそうです。これは、ぜひ！ 実現して欲しい（笑）。

文：杉山すぴ豊

『スパイダーマン：ファー・フロム・ホーム』は2019年6月28日（金）より世界最速公開