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「個性的で魅力的、でも愛したら悲劇」60’s無頼カルチャー描く『ザ・バイクライダーズ』監督インタビュー

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ライター:#遠藤京子
「個性的で魅力的、でも愛したら悲劇」60’s無頼カルチャー描く『ザ・バイクライダーズ』監督インタビュー
『ザ・バイクライダーズ』© 2024 Focus Features, LLC. All Rights Reserved.
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ジェフ・ニコルズ監督が『ザ・バイクライダーズ』を語る!

『ザ・バイクライダーズ』は同じタイトルの1967年の写真集――シカゴ発祥のアウトローズ・モーターサイクル・クラブへのダニー・ライオンの取材から生まれた、実話から着想を得た物語だ。

『ザ・バイクライダーズ』© 2024 Focus Features, LLC. All Rights Reserved.

地元のバイク愛好会的な家庭的なクラブが、カルチャーシーンのシンボルとなり巨大化して変質してしまう。オースティン・バトラートム・ハーディ、『ウォーキング・デッド』シリーズのダリルことノーマン・リーダス、『テイク・シェルター』のマイケル・シャノンも出演する、見た目もクールなライダーだらけのバイク映画でありつつ、アイデンティティと組織の変質が描かれた人間ドラマだ。監督のジェフ・ニコルズに話を聞いた。

 

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「The Bikeridersの写真にも文章にも創作意欲を掻き立てられた」

―ダニー・ライオンの写真集「The Bikeriders」からインスパイアされたとのことですが、ライオン氏を捕まえるのは大変ではありませんでしたか? じつは知り合いの編集者が写真集の日本語版を出したかったのに全然捕まらなくて出せなかったと言っていました。

それが全然、大変じゃなかったんです。兄のベンが<ルセロ>というバンドに入ってるんだけど(オルタナ・カントリー・バンド。写真集からインスパイアされた曲「Bikeriders」が本作でも使われている)、何年か前にダニーの写真をアルバムジャケットに使おうとしていて、兄が彼のメアドを知ってたんです。でも正直に言えば、どうしてそんなに大変だったのかわからないな……。ダニーはサイトにもメアドを載せていたんですよ。

彼は、僕にはすごくオープンでした。2014年に最初にメールしたとき、その時点で4本の映画を撮っていたので、僕がどういう人間かわかっていたのがよかったのかもしれないですね。彼は何本か僕の映画も観てくれていたんですよ。『テイク・シェルター』(2011年)と『MUD マッド』(2012年)は観てくれていたはずです。それで彼はかなり速く返事をくれて、ニューメキシコの彼の家で会いました。僕のほうから行ったことにも喜んでくれたんだと思います。そうやって直接会って映画化案を話しました。

The Bikeriders

The Bikeriders – Danny Lyon

―私はこの映画を観たあとにダニー・ライオンのサイトで当時の写真を見たんですが、映画の再現度に本当に驚きました。60年代シカゴのバイクシーンを再現するのに一番苦労されたのはどんなことでしたか。

バイクそのものを扱うのがかなり大変でした。手に入れるのもメンテナンスも、すごく大変なんです。何台かは製造から60~70年も経っていたんですよ。それに1940年代のバイクもありました。とにかく始終問題が起きるんです。でも「The Bikeriders」の写真にも文章にも本当に創作意欲を掻き立てられました。心に刻みこまれたんです。ダニーの写真を完コピしようとしたわけじゃないのに、映画のショットにダニーの写真が再現されてしまったのは、僕が長いことあのイメージを持ち続けて生きてきたからです。

ダニーの本の中でも代表的な写真、たとえばトム・ハーディが演じているジョニーがダート・バイクに乗っているショットだけが特別なんじゃなくて、オースティン・バトラー演じるベニーが橋の上を走っているショット、家の前にいるコックローチのショットなんかは本当に些細なディテールにもこだわりました。映画のほぼどのシーンもダニー・ライオンの写真のように感じられてしまうことに、そんなにも長い時間あの本と過ごしてきたんだという、ある種の驚きを感じました。

『ザ・バイクライダーズ』© 2024 Focus Features, LLC

「ノーマン・リーダスは完璧。まったくトレーニングの必要がなかった」

―今ではあまり使われない仕様ということでも、当時のバイクでの撮影は大変だったと思います。俳優たちにはどのように演出しましたか。

まず、トレーニングから始めたんです。ジェフ・ミルバーンというスタント・ライダーがバイクのスペシャリストとして入ってくれて、ほとんどのバイクが彼のものです。全部で32台のバイクを使いました。それとは別に、自分のバイクで参加してくれたエキストラもいました。俳優たちも役柄でバイクに乗った経験があったんですが、アメリカでは政府が70年代半ばにバイクの仕様を、ブレーキやイグニションやスロットルがここに来るべき、というふうに標準化したんです。(それ以前は)ハンドシフトというものがあって“自殺シフター”とも呼ばれていますが、その当時独特のもので信じられない複雑さなんです。だからいまのバイクを乗りこなせていても、たとえばトム・ハーディはすごく巧いライダーですが、それでも昔のバイクに乗るにはトレーニングが必要でした。

トムの話をしたのは、ほかのバイク40台を従えて50年代のハーレーダビッドソンに乗るシーンがあるんですが、現在のようなディスクブレーキがついていないので「ブレーキレバーを押し続けたのにバイクが止まらない」ということがあったからです。もちろん、そんなショットは映画に入れられない。経験があるライダーにとってもチャレンジ続きで、俳優たちがアンティークなマシンに安心して乗れたのは本当にスタント・コーディネーターのミルバーンのおかげです。

『ザ・バイクライダーズ』© 2024 Focus Features, LLC. All Rights Reserved.

―ノーマン・リーダスはどうでしたか?

ああ、ノーマンは完璧でした。『ウォーキング・デッド』をフランスで撮っていて、戻ってきてすぐの撮影だったので、トレーニングする時間が全然なかったんですよ。でも彼はずっと前にミルバーンに会ったことがあって、どれくらい乗れるかわかっていたので、そのまま撮影に入ってもらいました。

初日からめちゃくちゃ難しいバイクに乗るのに、最初のテイクから完璧に乗りこなしていて、止まるべきぴったり正確な位置に止まったんです。アスファルトじゃなく草原を走って、しかもウィッグをして付け歯をつけてサングラスもかけていたんですよ。信じ難い素晴らしさでした。まったくトレーニングの必要がなかった一人ですね。

『ザ・バイクライダーズ』© 2024 Focus Features, LLC. All Rights Reserved.

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『バイク・ライダーズ』

バイクを愛するアウトサイダーたちの唯一の居場所(クラブ)が、誰も予想だにできない形へ変貌していく― 彼らを取り巻く状況の変化とともに、クラブはより邪悪な犯罪組織へと発展し、対立と憎悪を生み出すようになる。60 年代アメリカを舞台に、インタビュー形式で綴られる伝説的モーターサイクルクラブの栄枯盛衰。半世紀以上にわたって私たちの想像の中に生き続けてきた象徴的なアウトロー・バイカーと、彼らが辿った反抗的な文化が、生々しくも儚さを携えてスクリーンに蘇る。

監督・脚本:ジェフ・ニコルズ『テイク・シェルター』
出演:オースティン・バトラー、ジョディ・カマー、トム・ハーディ、マイケル・シャノン、マイク・フェイスト、ノーマン・リーダス

制作年: 2024