『デッドヒート』はココが面白い!
主題歌「一分鐘英雄」をバックに、<三菱>の自動車工場らしき場所でジャッキー研修生が準備体操をするシーンから始まる本作。フルコーラス使って日本と深く関わる作品であることが強調されるものの、舞台はすぐにジャッキーの本拠地・香港へ。カーショップを家族経営しているジャッキーは、車の知識と腕っぷしの強さを買われて父タンとともに違法改造車の取締に協力しているようだ。
殺し屋にして犯罪組織のボスであるクーガーの逮捕に貢献したジャッキーは、逆恨みによって命を狙われる羽目に。国際テロ犯らしく雪だるま式に事態を混乱に導いていくクーガー(結構な人死が出るし、流血演出も多め)だが、仙台で行われるレースで決着だ! という妙に回りくどい果し状を叩きつけたため、舞台は再び日本へと移る。
とにかくクルマが山ほど登場するので日本車好きは目が忙しいが、FTOなどの三菱車だけでなくNSXやRX-7、GT-Rなど日本車が爆走するわ、あり得ないほど派手に大破するわで、それらを観ているだけでも非常にスリリング。ジャッキー映画でたびたび見かけるデリカも本作には2代目中期型がチラ映りして、90年代のノスタルジーを味わえる。
なお本作にはランボルギーニ・カウンタック(おそらくレプリカ)も映るが、日本人レーサーを演じた『キャノンボール』(1981年)からジャッキーを見てきた往年のファンはご存知の通り、彼はランボルギーニからアヴェンタドールの特別仕様モデルをプレゼントされるほどのクルマ狂として有名。ル・マンに参戦するレーシングチームの共同オーナーでもあり、近藤マッチと並ぶ車ガチ勢なのだ。
「若大将」とがっつり共演! 壮絶なNGシーン集まで必見
クライマックスのレースシーンはスタント撮影不可のため日本での撮影を中断し、車両と共に(!)マレーシアに移動。ところがスピードを出すことが禁止され、通常速度の走行で撮影したものをポスプロであたかも爆速で走っているかのように編集したそうだ。それでも物語序盤の香港での公道チェイスなどは、こりゃ日本ロケは無理だわ……と思わせるムチャ&大迫力である。
また、ジャッキーが『レッド・ブロンクス』の撮影中に骨折したことはファンの間では有名な話だが、そのため本作ではアクションシーンの多くをスタントマンが代演した。ジャッキー映画としてはレアケースなので、そのあたりに注目して観るのも面白いかもしれない。なおエンディングのNG集はやはりレースシーンの舞台裏映像が中心で、ジャッキー映画でも屈指の壮絶ぶりがうかがえる。
キャスト的には、序盤からTVレポーターのエイミーを演じるアニタ・ユン(当時20代前半で、ちょっと二階堂ふみ似)がヒロインとして出ずっぱりなので、香港映画ファンには嬉しいところ。ほかにも『シティーハンター』(1993年)で槇村を演じたマイケル・ウォンや、『ストリートファイター』(1995年)でハリウッドデビュー済みだった澤田謙也(少林寺拳法の有段者。2009年に『新宿インシデント』でジャッキーと再共演)、ハーバード卒のバイリンガル才女として知られる江黒真理衣などが、登場シーンこそ多くないが強い印象を残す。とくに澤田との“サウナ付きパチンコ店”での対決シーンはハイライトの一つ。
そして何と言っても、チームの監督としてジャッキーを支える村山を演じた“若大将”こと加山雄三の存在感! 冒頭と終盤のレースシーンのみの出演にもかかわらず、一人だけ特殊なフィルターでもかかっているかのような重厚なオーラをまとっていて、ジャッキーと絡むシーンは感動を通り越してシュールですらある。
『デッドヒート』はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2024年11月放送