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韓国暗黒史「私の細胞の中に刻まれている」ファン・ジョンミン“独裁者”熱演の原動力とは?【釜山国際映画祭】

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ライター:#石津文子
韓国暗黒史「私の細胞の中に刻まれている」ファン・ジョンミン“独裁者”熱演の原動力とは?【釜山国際映画祭】
ファン・ジョンミン(釜山国際映画祭)©BIFF
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「私は光州事件を、見て育った世代です」

本年度の米アカデミー賞の韓国代表作品にも選ばれた『ソウルの春』では、1979年12月12日(これが英語タイトルになっている)に起きた軍事クーデターの首謀者チョン・ドゥグゥアンを演じた。全斗煥(チョン・ドファン)元大統領をモデルにした人物で、見た目もかなり近づけている。

メイキングカット『ソウルの春』© 2023 PLUS M ENTERTAINMENT & HIVE MEDIA CORP, ALL RIGHTS RESERVED.

実は、この大ヒット作(年末の映画賞も確実視されている)について、ファン・ジョンミンは舞台挨拶などは行っていたものの、これまでインタビューを受けてこなかった。その理由についてこう語る。

『ソウルの春』は史実をベースにしていますが、政治的な映画ではありません。でも、私が何か言うことで政治的に見られてしまう恐れがあった。ありがたいことに、観客がこの映画を支持してくれました。まさかここまで大ヒットするとは思いませんでしたね。

ファン・ジョンミン(釜山国際映画祭)©BIFF

独裁者として韓国史に名を残す悪役を演じ切ったことの原動力は、子供の頃の原体験だという。

私はあの人物が起こした信じがたい行動、その少し後に起きた光州事件(1980年)を、見て育った世代です。まだ子供だったから実体験したとまでは言えないけれど、私の細胞の中に、血の中にその歴史は刻まれています。

そして100年前や1000年前の歴史はたくさん教わるのに、近現代史についてあまり学ぶ機会がないことも、ずっと不思議でした。あの時、本当は何があったのかと思いながら育ったわけです。『ソウルの春』が描こうとしたことを、観客の方々が深く理解してくれたことに感謝します。

1970年生まれのジョンミンにとって10代のほぼ全てが、暗黒時代と言われた全斗煥軍事政権下だったのだと改めて実感した。

ファン・ジョンミン(釜山国際映画祭)©BIFF

コメディが好きだというファン・ジョンミンは、恋愛映画には『ユア・マイ・サンシャイン』(2005年)など数作品にしか出ていないことを進行役の評論家に指摘されていたが、ぜひそろそろ大人のラブストーリーも観てみたいもの。アクターズ・ハウスの終了時間となっても観客からの質問に答え続けたファン・ジョンミンは、投げキッスをしながら大歓声の中、会場を後にした。

さらにそこから映画祭の別会場に直行し、『ソウルの春』のトークにも参加。前夜に<釜日映画賞主演男優賞>を受賞したチョン・ウソンを祝福しつつ、お茶目なポーズをとるなど終始上機嫌だった。

ファン・ジョンミン、チョン・ウソン、キム・ウィソン(釜山国際映画祭)©BIFF

取材・文・撮影:石津文子

『ソウルの春』全国公開中

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