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【超貴重TV放送】『007』のパクリじゃない!『0011ナポレオン・ソロ』は“本家”俳優も登場【劇場版全8作】

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ライター:#谷川建司
【超貴重TV放送】『007』のパクリじゃない!『0011ナポレオン・ソロ』は“本家”俳優も登場【劇場版全8作】
筆者私物
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米レジェンド俳優たちがゲスト登場! 第5作『対シカゴ・ギャング』

第5作『0011ナポレオン・ソロ対シカゴ・ギャング』は1967年3月公開だが、タイトルの通り、スパイ映画とギャング映画の面白さをミックスしたような快作となった。ここでの悪役はスラッシュの幹部でイタリアの醸造王ストラーゴという人物で、演じるのは『シェーン』(1953年)の悪役で知られるジャック・パランス

筆者私物

――これは『007』シリーズにも言えることだが、スパイ・アクション映画の主人公を輝いて見せるのに、悪役が魅力的であればあるほど良いというのは定石だ。その点、故・淀川長治さんが「蟹のような顔」と評したパランスは大物感がにじみ出ていて、わくわく感がいや増すというもの。

『0011ナポレオン・ソロ対シカゴ・ギャング』© 1966 Turner Entertainment Co. (Suc. in Int. to Metro-Goldwyn-Mayer Inc.)

ソロとイリヤは敵の本拠地のあるシチリア島へ潜入するものの、敵に襲われたソロがとあるパイ屋の娘の寝室に隠れたばかりに、娘の貞操を奪われたと誤解したパイ屋の父親から娘と結婚するように迫られることに。ソロはなんとかアメリカへ逃げ帰ったものの、怒ったパイ屋がアメリカに住む親戚のギャング3兄弟に彼の命を狙わせる。

『0011ナポレオン・ソロ対シカゴ・ギャング』© 1966 Turner Entertainment Co. (Suc. in Int. to Metro-Goldwyn-Mayer Inc.)

一方のイリヤは、ストラーゴの手下の女殺し屋ディケトンに捕われてしまうが、この女殺し屋を演じるのが『サイコ』(1960年)のヒロインで有名なジャネット・リーというのが、これまた豪華なのだ。

最期には、ソロの命を付け狙っていたシカゴ・ギャング3兄弟たちもソロの味方となってストラーゴ一味を壊滅させる……という、娯楽一辺倒の展開が清々しい!

『0011ナポレオン・ソロ対シカゴ・ギャング』© 1966 Turner Entertainment Co. (Suc. in Int. to Metro-Goldwyn-Mayer Inc.)

『007』の悪役が2人も登場! 驚きの第6作『ミニコプター作戦』

第6作『0011ナポレオン・ソロ/ミニコプター作戦』は1967年7月公開で、原題は『The Karate Killers』というのだが、ちょうど『007』シリーズ第5作で日本ロケした『007は二度死ぬ』が6月に公開されたばかりだった。その中でボンドが、ジャイロコプターという組み立て式の小型ヘリコプターで敵のヘリコプターと空中戦を繰り広げるシーンが話題となり、本作の冒頭ではソロとイリヤの車が似たような小型ヘリコプター3機に狙われるシーンがあることから、この邦題となった。

『0011ナポレオン・ソロ/ミニコプター作戦』© 1967 Turner Entertainment Co. (Suc. in Int. to Metro-Goldwyn-Mayer Inc.)

物語は、海水から黄金を抽出することに成功した博士がソロとイリヤの目の前で死亡、博士が製法の秘密を4枚の写真に分けて4人の娘に渡していたと判り、ソロとイリヤが末娘(キム・ダービー)と一緒に残り3人の娘を訪ねて秘密を解明しようとするが、その製法を手に入れようとしていたスラッシュの首領ランドルフもまた付け狙う、というもの。

『0011ナポレオン・ソロ/ミニコプター作戦』© 1967 Turner Entertainment Co. (Suc. in Int. to Metro-Goldwyn-Mayer Inc.)

ランドルフ役を演じるのが英国の悪役No.1俳優ハーバート・ロムで、彼に利用された挙句に殺される博士の未亡人役には往年のハリウッドの大女優ジョーン・クロフォードが扮するという豪華版。さらに、ローマに住む長女の夫の伯爵役をテリー・サバラス、スインギング・ロンドン娘の次女をジル・アイアランド(D・マッカラム夫人で、後にチャールズ・ブロンソンと再婚!)、スキー・リゾートで三女を口説くロマンス・グレイの男をクルト・ユルゲンスが演じているのだからスゴすぎる! 言うまでもなく、サバラスは『女王陛下の007』(1969年)、ユルゲンスは『007/私を愛したスパイ』(1977年)の悪役だ。

『0011ナポレオン・ソロ/ミニコプター作戦』© 1967 Turner Entertainment Co. (Suc. in Int. to Metro-Goldwyn-Mayer Inc.)

1967年のポップでキッチュなムードのタイムカプセル

『0011ナポレオン・ソロ/ミニコプター作戦』は同じ年の12月、イオン・プロ製作ではない番外編の『007』作品としてコロムビア映画で公開された『007/カジノ・ロワイヤル』と同様、1967年という年のポップでキッチュなムードというものを十二分に味わわせてくれる、文化史的に貴重なタイムカプセルのような作品。とくに後半、舞台が日本に移った辺りからはキッチュさに拍車がかかる。

いい加減な日本描写に腹を立てるようでは、この作品の本当の面白さは味わえない。最後に黄金まみれになって死ぬハーバート・ロム(もちろん、『007/ゴールドフィンガー』のパロディ)などは、突き抜け感が半端なく、このシリーズの劇場用映画8作品の中でもとびきりゴージャスな一編だ。

『0011ナポレオン・ソロ/ミニコプター作戦』© 1967 Turner Entertainment Co. (Suc. in Int. to Metro-Goldwyn-Mayer Inc.)

その後、1968年1月公開の第7作『0011ナポレオン・ソロ/スラッシュの要塞』、9月公開の『0011ナポレオン・ソロ/地球を盗む男』と続いたのだが、ゲストスターは前者がブラッドフォード・ディルマンジョン・キャラダイン、後者がレスリー・ニールセン(あの『裸の銃を持つ男』シリーズのニールセンだが、まだコメディアンとしてはじける前のこと)とエリノア・パーカーと、やや通好みのキャスティングだった。

『0011ナポレオン・ソロ/地球を盗む男』© 1967 Turner Entertainment Co. (Suc. in Int. to Metro-Goldwyn-Mayer Inc.)

R・ヴォーンとD・マッカラムのコンビは永遠!

ソロ役のロバート・ヴォーンとイリヤ役のデヴィッド・マッカラムは、俳優としてその後もそれぞれに活躍を続けたが、『0011ナポレオン・ソロ』シリーズへの愛着は持ち続けていたようで、1983年にはTV映画の特番としてシリーズの後日談『0011ナポレオン・ソロ2』に揃って主演している。

この作品にはゲストスターとして、なんと『女王陛下の007』1本限りでジェームズ・ボンド役を降りてしまった伝説の俳優ジョージ・レーゼンビーが、ボンドと同じ特殊装置満載のアストンマーチンDB5に乗った“JB”というまんまボンドの役で登場し、ファンを喜ばせてくれた。もちろん、権利の関係で“ジェームズ・ボンド”とは名乗れないのだが。

ヴォーンは2016年に83歳で、マッカラムは2023年に90歳で亡くなったが、二人の存在と共に『0011ナポレオン』ソロ・シリーズは今後も語り継がれることだろう。

文:谷川建司

「『0011ナポレオン・ソロ』シリーズ全8作品 イッキ観!」はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2024年11月放送

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