『0011ナポレオン・ソロ』は『007』のパチモンではない!
英イオン・プロ製作の『007』シリーズは、『カジノ・ロワイヤル』(2006年)から『ノー・タイム・トゥ・ダイ』(2020年)までジェームズ・ボンド役を務めたダニエル・クレイグの降板後、新たなキャストでの新作製作開始へ向け、着々と準備が進められているようだ。1962年にシリーズが始まって以来、数多の類似シリーズが世界中で製作されてきたが、いずれも本家には遠く及ばず、単なるパロディや二番煎じとして消えていった。
そんな中で、『0011ナポレオン・ソロ』シリーズだけは、今日に至るまで世界中の人々の記憶から消えることなく、2015年にはリメイク版劇映画『コードネームU.N.C.L.E.』が製作され、旧作の再評価の機運もある。
元々、『0011ナポレオン・ソロ』は米NBC系列で1964年から4シーズン放送されたTVシリーズ。映画会社のMGM製作で、日本ではNTV系で金曜夜9時からの放送で『007』と並び立つ大人気シリーズとなり、劇場用映画としても8作品が公開された。
『0011ナポレオン・ソロ』のことを『007』シリーズのパチモンと勘違いしている人も多いが、本シリーズの企画には『007』の原作者イアン・フレミングが関わっていて、主人公の名前=ナポレオン・ソロもフレミングの命名によるもの。当初はロバート・ヴォーン扮するソロ(吹き替えは矢島正明が担当)の単独主演のシリーズとして始まったが、デヴィッド・マッカラム扮する同僚のイリヤ・クリヤキン(吹き替えは野沢那智が担当)の人気が急上昇した結果、二人のコンビによるシリーズへと進化した。ちなみに、ソロとイリヤが属する組織は<UNCLE>といい、敵である国際犯罪組織の名は<スラッシュ>という。
劇場用映画8作品は日本ではTV放送されず
劇場用映画としては、まず1965年1月に第1作『0011ナポレオン・ソロ/罠を張れ』(厳密には公開時のタイトルは『罠を張れ』だった)が公開されたが、これは元々TVシリーズ第1シーズンのパイロット版に未使用テイクを加えたもので、日本ではTV放送されていない。
その後も、当時は日本でのTV放送はアメリカ本国よりも半年以上遅れる時差があったため、アメリカでは2週連続放送される前後編のエピソードが再編集されて劇場公開されるパターンだったものの、日本では劇場公開予定作品(エピソード)はTVでは放送されない措置が取られた。
劇場用映画として公開された8作品は、元々のTV放送作品に未使用テイクを加えたりしているが、これは映画館よりも視聴者の間口の広いTVだとお色気のあるシーンなどは放送できないため、セックスとバイオレンスが売り物の『007』シリーズへの対抗措置という側面もあって、劇場用映画の場合はそうしたシーンを付加したのだ。
ちなみに、TV放送では第1シーズンのみモノクロ放送で、劇場用映画第1作『0011ナポレオン・ソロ/罠を張れ』はTV放送版も51分のモノクロ版だったが、71分のカラー作品として公開されている。
1965年9月公開の第2作『0011ナポレオン・ソロ/消された顔』、1966年2月公開の第3作『0011ナポレオン・ソロ/地獄へ道連れ』までは、TVシリーズのレギュラーであるロバート・ヴォーン、デヴィッド・マッカラム、二人の上司ウェイバリー役のレオ・G・キャロルに、ゲストとして女優がからむ形だった。
しかし、第4作『0011ナポレオン・ソロ/消えた相棒』では、ゲスト女優がアルフレッド・ヒッチコック監督のヒロインで知られるヴェラ・マイルズと華やかさを増し、第5作以降はさらにヴァージョン・アップしていく。
※次ページ以降、解説にネタバレを含みます