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「どうやって殺すか?を考えるのが楽しい」童話の夢をぶち壊す惨殺物語『シン・デレラ』監督インタビュー

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「どうやって殺すか?を考えるのが楽しい」童話の夢をぶち壊す惨殺物語『シン・デレラ』監督インタビュー
『シン・デレラ』© 2024 ITN STUDIOS. All Rights Reserved.
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「ロケに使ったお城、呪われてたんです……。」

―映画『シン・デレラ』のお話を伺います。「誰かが“ホラー版シンデレラ”を撮るだろうな」とは思っていましたが、制作のきっかけは?

実は依頼があったんです。『プー あくまのくまさん』を皮切りに、“みんなが小さな頃から知っている物語”のホラー化が次々と企画されているのは知っての通りですが、『シン・デレラ』は予算も配給会社も全て決まっている状態で声をかけてもらったんですよ。

『シン・デレラ』© 2024 ITN STUDIOS. All Rights Reserved.

―ルイーザ監督は極々低予算で映画を撮り続けてきました。しかし『シン・デレラ』を拝見すると、しっかりとしたロケ、爆破、ファイヤースタント、ゴア描写も盛り盛りで、予算が爆増したように思えます。そこにプレッシャーはありましたか?

依頼を受けてすぐは実感がなかったんです。でも「シンデレラのホラー版をルイーザが撮る」とSNSでバズったときに、プレッシャーを感じましたね。そこからは初めてのことばかりで……。人に火をつけるなんて、滅多にやらないから(笑)。

『シン・デレラ』© 2024 ITN STUDIOS. All Rights Reserved.

―特に苦労された点は?

あのロケに使ったお城、呪われていたんです……。

―はい?

撮影中は、お城で寝泊まりしていました。それが地下何階もあるお城で……。私が泊まっていたのは地下2階の部屋で、隣が大広間になっていたんです。その広間が子供用のサナトリウム(療養施設)だったとかで、夜中になると不思議な音が聞こえたり……。スタッフたちも「何か聞こえる」と言うんですよ。だから、地下に行けば行くほど気味が悪くて。

―苦労したのは撮影ではなく、場所が怖かったと?

はい(笑)。メンタルチャレンジでしたね!

『シン・デレラ』© 2024 ITN STUDIOS. All Rights Reserved.

―そんな中、撮影された『シン・デレラ』ですが、主演のケリー・ライアン・サンソンさんのお芝居が非常にインパクトがありましたね。

撮影の時間が限られていたから、本当に彼女には助けられました。ケリーは脚本を熟読して、完全にシンデレラを理解してから撮影に臨んでくれたので、私はテクニカルな面に集中することができました。まったく文句のつけようがない素晴らしい俳優です。

『シン・デレラ』© 2024 ITN STUDIOS. All Rights Reserved.

―シンデレラが舞踏会で“ブチ切れる”場面は、『キャリー』(1976年)を彷彿とさせます。

間違いなく『キャリー』ですよ(笑)。扉を睨むと「バタンッ!」と閉まったり、シャンデリアが落ちたり。というのも、ティーンドラマ的なものを盛り込みたかったんです。そうなると『キャリー』から引用するのが一番ベターかなと思いました。

『シン・デレラ』© 2024 ITN STUDIOS. All Rights Reserved.

―あのクオリティを出すのは苦労されたかと思います。ゲスな話で恐縮なのですが、“一番お金がかかったから注目してほしい”というシーンは?

それはもう「爆発」と「火」ですよ! たった5秒のシーンなんですけど、スタントとはいえ女性に火をつけるのは申し訳ないし、間違っても事故は起こせないし……。でも映画のためにこんなことができるのは、とても感慨深い経験でした。

―これまでのルイーザ監督の作品では、火をつけるとなるとCGに頼らざるを得なかったと思うのですが、やはりプラクティカルエフェクトのほうが熱くなりますか?

CGも良いところがあるんですよ。楽ですから(笑)。撮影となると、カメラが3台、さらにドローンに火薬と、準備が大変です。でも、よりリアルに、サウンドもそのまま使えますし、質としてはかなり良いものになります。どっちがいい? と言われたら、当然リアルで撮影した方がいいですね!

『シン・デレラ』© 2024 ITN STUDIOS. All Rights Reserved.

「好きなだけお金が使えたら、宇宙規模の良い映画を撮りますよ!」

―気を悪くされたら申し訳ないのですが、ルイーザ監督の作品は正当な評価を受けていないと私は考えています。貶めがちな批評家も多いです。『プー あくまのくまさん』のリース監督は「我々インディペンデント監督は、予算さえあれば間違いなく良いものが撮れるし、評価も上がる」と仰っていました。ルイーザ監督はどうお考えですか?

リースの言うとおりだと思います。予算があればキャラクターを増やせるし、ロケも色々なところでできるし、テクニカルな要素も増やせるし、機材も時間も自由に使える。でも低予算だと、YouTube止まりの映画になってしまう。初めて作業するスタッフも多い。

一方で、そんな作品が爆発的にヒットすることもある。不思議な業界ですよね。とはいえ、潤沢な予算の映画と低予算の映画を比べられるのは、ちょっと不公平かなと思います。もし私に好きなだけ使えるお金があったら、宇宙規模の良い映画を撮りますよ!

『シン・デレラ』© 2024 ITN STUDIOS. All Rights Reserved.

―ルイーザ監督といえば、『Tooth Fairy』(※)や『The Escape』といった極低予算かつ日本でなかなか観られない作品も持ち味だと思います。私事で恐縮なのですが、以前のような作品も撮り続けていかれますか?

わあ、ありがとう。実は『Tooth Fairy』の6作目のアイディアがあって、いま売り込み中なんです。だから楽しみにしていてください。『Tooth Fairy』シリーズは不滅です!

―日本に来ないんですよね、『Tooth Fairy』シリーズ……。

じゃあ、送りますよ!(笑)。

(※)『Tooth Fairy』:歯の妖精が“もらえるはずだった歯”を強引に奪いにやってきて、ハンマーで歯を叩き抜いて持ち去る最高のインディペンデントホラーシリーズ。

TOOTH FAIRY [DVD]

――今回は、ルイーザ・ウォーレン監督のファンとして会話をしてしまったので、インタビュアーとしてはちょっと失格かと思う。だが、ルイーザ監督の映画にかける情熱は、イギリス随一。『シン・デレラ』は、彼女のネクストステージの第一歩だ。ちょっと荒削りの部分もあるが、十分ホラー映画として楽しめるものになっている。シンデレラがガラスの靴を片手に暴れ回る姿を、ぜひ目に焼き付けてほしい。

取材・文:氏家譲寿(ナマニク)

『シン・デレラ』は2024年10月25日(金)より新宿ピカデリーほか全国公開

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『シン・デレラ』

昔々あるところにシンデレラという美しい娘がいました。継母と義理の姉たちによる虐待に苦しんでいたある日、庭で見つけた不思議な本を読んだ彼女の前に魔法使いの〝フェアリーゴッドマザー“が出現。「舞踏会で王子様と踊りたい」と願ったシンデレラは、魔法の力によって憧れの王子とダンスをする夢が叶います。ところが王子や継母たちは舞踏会に参加している人々の前で、シンデレラのドレスを剥ぎ取り、全裸にして嘲笑、辱めの限りを尽くしたしたのです。その瞬間「復讐したい」と願ったシンデレラはガラスの靴を凶器に変え、邪悪な人間どもを残虐な手段で次々と血祭りにあげていく――‼

監督・製作:ルイーザ・ウォーレン 
製作総指揮:スチュアート・オルソン『プー あくまのくまさん』
脚本:ハリー・ボックスリー 
編集:ジャック・ジェームズ 
音楽:ジェームズ・コックス
出演:ケリー・ライアン・サンソン、クリッシー・ウンナ、ダニエル・スコット、ローレン・バッド

制作年: 2024