「シンデレラ以外、全員悪人」
「なに? “シンデレラ”をネタにしたホラー? また版権切れシリーズか……お腹いっぱいだよ!」
いやいや、ちょっと待って欲しい。「くまのプーさん」や「ピノキオ」はそうかもしれない。でも「シンデレラ」は、とうの昔にパブリックドメインになっている。
そもそもグリム童話のシンデレラ自体、17世紀のイタリアの作家ジャンバティスタ・バジーレによって書かれた「灰かぶり」が元である。継母との関係が悪化したシンデレラ(灰かぶり)が、継母をブチ殺し、その後に登場した継母にいじめられる鬱な物語だ。
この「灰かぶり」、継母殺害の他にも陰惨な描写がある作品で、さすがのグリム兄弟もドン引きしたのか、彼らの書いた「シンデレラ」はマイルドな物語に改編されている。あのお話は、原作が書かれた時点から色々といじくり回されてきたのだ。
だから映画『シン・デレラ』は、流行に乗ったワケでは……ある!

『シン・デレラ』© 2024 ITN STUDIOS. All Rights Reserved.
『プー あくまのくまさん』のヒットはホラー映画界に影響を与え、版権切れキャラクターの蹂躙が始まった。正直なところ『シン・デレラ』は、その蹂躙のどさくさに紛れて作られたようなものである。ただ、イギリスのインディーズホラー映画界きっての職人監督ルイーザ・ウォーレンが施した本作は常軌を逸している。継母に義姉、そして王子すらもシンデレラを徹底的にイジメまくる、“シンデレラ以外、全員悪人”という設定。そんな輩相手に怒りが沸点に達したシンデレラによって、花の舞踏会は血の海と化すのである!

『シン・デレラ』© 2024 ITN STUDIOS. All Rights Reserved.
ルイーザ・ウォーレン監督作は非常に低予算であるため、クオリティ面から日本で公開されることは少ない。ただ、ルイーザの作品は並々ならぬ熱意が感じられるものばかり。予算がいつもよりちょっぴり多い『シン・デレラ』がめでたく公開が決定したとのことで、その熱意を伺う機会を得た。
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「どうやって殺すのか? を考えるのが楽しくて(笑)」
―まず始めに、ルイーザ監督自身のことを教えてください。たくさんの低予算映画ホラーを手がけていますよね。素晴らしい情熱を感じるのですが、ホラー映画監督になるきっかけは何だったのでしょうか?
小さな頃からたくさん映画を観てきて、映画好きが高じて俳優をやるようになったんです。お芝居をやっていると、自分でも物語が頭に浮かんでくるんですよ。もちろんホラーストーリーではなく、普通のドラマも浮かぶんですが、どうやって人を怖がらせるか? サスペンスを維持するか? そして、どうやって殺すのか? が一番楽しくて(笑)、今に至っている感じですね。

『シン・デレラ』© 2024 ITN STUDIOS. All Rights Reserved.
―俳優としては、ご自身が撮られた『Virtual Death Match』(2020年:原題)ではインパクトのあるピエロでチェーンソーを振り回していましたし、『プー2 あくまのくまさんとじゃあくななかまたち』(2024年)で主演を務めたスコット・チェンバースの『The Final Scream』(2019年:原題)にも出演なさっています。英インディペンデントホラー映画界には独自のコミュニティがあるのでしょうか?
もちろんありますよ! 私たちは少ない予算の中で映画を撮っているから、お互いにどんな工夫をして、どんな映画を撮っているのかが気になって仕方ないんですよ(笑)。だから誰かが“良い感じ”の作品を撮ると、みんな真似をして似たような作品になったり……。それにホラー映画上映会なんかのイベントでは大体同じ顔ぶれで……。
―みなさんお友達なんですね。楽しそうです。
ええ、とても楽しいですよ! みんな努力しているし、いい人たちばかりです。
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『シン・デレラ』
昔々あるところにシンデレラという美しい娘がいました。継母と義理の姉たちによる虐待に苦しんでいたある日、庭で見つけた不思議な本を読んだ彼女の前に魔法使いの〝フェアリーゴッドマザー“が出現。「舞踏会で王子様と踊りたい」と願ったシンデレラは、魔法の力によって憧れの王子とダンスをする夢が叶います。ところが王子や継母たちは舞踏会に参加している人々の前で、シンデレラのドレスを剥ぎ取り、全裸にして嘲笑、辱めの限りを尽くしたしたのです。その瞬間「復讐したい」と願ったシンデレラはガラスの靴を凶器に変え、邪悪な人間どもを残虐な手段で次々と血祭りにあげていく――‼
監督・製作:ルイーザ・ウォーレン
製作総指揮:スチュアート・オルソン『プー あくまのくまさん』
脚本:ハリー・ボックスリー
編集:ジャック・ジェームズ
音楽:ジェームズ・コックス
出演:ケリー・ライアン・サンソン、クリッシー・ウンナ、ダニエル・スコット、ローレン・バッド
制作年: | 2024 |
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2024年10月25日(金)より新宿ピカデリーほか全国公開