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「どんでん返し映画」の“お約束”すら裏切る驚愕スリラー『トラップ』見どころ解説【M.ナイト・シャマラン最新作】

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ライター:#斉藤博昭
「どんでん返し映画」の“お約束”すら裏切る驚愕スリラー『トラップ』見どころ解説【M.ナイト・シャマラン最新作】
『トラップ』©2024 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED
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シャマラン的〈お約束〉を斜め上から裏切る〈トラップ〉

では『トラップ』は、どんなショッキングなストーリーが描かれるのか。もちろんキーワードはタイトルだ。「トラップ=罠」。その罠は、凶悪な殺人犯を捕まえるために、信じがたいシチュエーションとして仕掛けられる。

残忍極まりない事件を繰り返し、指名手配中の切り裂き魔。その情報をつかんだ警察とFBIが、逮捕するために世界的アーティスト、レディ・レイブンのアリーナライブを“仕込んだ”のだ。凶悪犯一人を捕まえるために、そんなことまでやってしまうのか……と、普通の映画監督では思いつかないようなアイデアを、平然とやってしまうのが、いかにもシャマランらしい。

『トラップ』©2024 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED

ライブのプラチナチケットを手に入れたのは、レイブンの熱狂的なファンである少女ライリーと、その父親のクーパー。最高の席に興奮を隠しきれないライリーをよそに、クーパーはどこか落ち着かない。ライブの最中、何かにつけてロビーに出たりと、不可解な行動が続く。この男が、警察も手こずらせる史上最悪の殺人犯なのか? われわれ映画を観る側も、観客約3万人という特大スケールのライブ会場に放り出された感覚で、クーパーの一挙一動に緊迫感を高めていく。

巨大アリーナで、セットや演出にこだわったライブという背景は、これまでのシャマランの作品とは一味違って新鮮。一方で、多くの観客の中で次に何が起こるかわからないテンションが続くスタイルは、いかにもシャマランだ。クーパーの行動はかなり怪しいし、強引だったりもするのだが、そこをツッコミどころとして楽しめるのも、シャマラン映画好きにはたまらない。時おり挟まれるユーモアはこの映画作家独特のセンスで、ファンが期待する「シャマラン本人はどこに登場するのか?」というネタも含め、とにかく飽きさせない作りは、本作でも健在だ。

『トラップ』©2024 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED

シャマラン映画なので、ヒネリの効いた予想不能の展開になだれ込むのは“お約束”。ただ『トラップ』は、そのお約束的展開を、さらに斜め上から裏切っていく快感も伴う。そもそもトラップ=罠に仕掛けられたのはクーパーなのか? それとも別の誰かなのか? もしかしたら、われわれ観客がシャマランの罠にハマってしまうのではないか? いや、きっとそうだろう。

あのノーラン監督も信頼! ジョシュ・ハートネットの熱演に注目

この『トラップ』で重要なカギを握るのが、クーパーの言動なのは間違いない。娘のためにチケットを取り、そのライブに同行。興奮して我を忘れる娘に、最高の時間を味わってもらおうと、つねに温かく見守るその姿からは、あくまでも家族思いのパパというイメージだ。しかし娘と離れ、ロビーに出ると、その表情は一変。たまたま遭遇した娘の同級生の母親との会話や、ライブ会場のスタッフとのやりとりでは、その後の不穏な急展開をも予感させる。

『トラップ』©2024 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED

こうした設定のため、クーパー役、ジョシュ・ハートネットの演技が本作のポイントになっていく。ジョシュ・ハートネットといえば、『パール・ハーバー』、『ブラックホーク・ダウン』(ともに2001年)などで一時、ハリウッド若手のトップスターに君臨。しかしその後、家族との時間を大切にするためハリウッドから距離を置ていた。クリストファー・ノーラン監督からオファーされたバットマン役を断ったというエピソードも。

そんな彼が復帰して、絶好調。ガイ・リッチー監督の『オペレーション・フォーチュン』(2023年)では自身をパロったような映画スター役を軽妙にこなしたし、ノーラン監督と悲願のタッグとなった『オッペンハイマー』(2023年)では、ロバート・オッペンハイマーの同僚ながら、意見が対立する物理学者ローレンス役の演技が絶賛された。そんなハートネットが、堂々たる主演を久しぶりに任されたのが『トラップ』なので、彼の新たな代表作になるのは確実だ。俳優のキャリアの“勢い”が、出演作を面白くするという法則も実感できることだろう。

ジョシュ・ハートネット、M.ナイト・シャマラン監督
『トラップ』©2024 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED

観客約3万人のライブ会場。それを取り囲む300人もの警察とFBI。この極限状態で、たった一人のサイコキラーはどんな奇策を講じ、最終的にどのような運命が待っているのか――。鬼才M.ナイト・シャマランが仕掛けた“トラップ”に、できるだけまっさらな気持ちで囚われることこそ、本作最大の喜びとなる!

文:斉藤博昭

『トラップ』は2024年10月25日(金)より全国公開

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『トラップ』

溺愛する娘ライリーのために、彼女が今夢中の世界的アーティスト、レディ・レイブンが出演するアリーナライブのプラチナチケットを手に入れたクーパー。父親と会場に到着したライリーは、最高の席に大感激。遂にライブが幕を開け、3 万人の観客が熱狂に包まれる中、彼は異変に気付く。異常な数の監視カメラ、会場内外に続々と集結する警察…普通ではない。口の軽いスタッフから「ここだけの秘密」を聞き出すクーパー。指名手配中の切り裂き魔についてタレコミがあり、警察がライブというトラップを仕組んだという。だが、その世間を騒がす残虐な殺人鬼こそ——優しい父親にしか見えないクーパーだった!

監督:M.ナイト・シャマラン
脚本:イシャナ・ナイト・シャマラン
出演:ジョシュ・ハートネット、アリエル・ドノヒュー、サレカ・シャマラン、ヘイリー・ミルズ、アリソン・ピル

制作年: 2024