「“処刑トラップ”の痛々しさを楽しんでほしい!」シリーズ最高傑作『ソウX』監督が語る濃厚ドラマと強烈ゴア描写

「トビンの目は、間違いなくジョン・クレイマーだね(笑)」
―本作はジグソウというより、ジョン・クレイマーの物語になっています。監督は『ソウ6』~『ザ・ファイナル』と監督されてきましたが、これらの作品ではジグソウのキャラクターよりもトラップ(罠)の描写がメインでした。今回、思い切りジョンを描くことができた感想をお聞かせください。
楽しかったよ!『ソウ』といえばトラップなんだけれど、『ソウ』が元から持っている物語やジョンのキャラクターを掘り下げられると思ったんだ。でも迷いもあった。ジョンを出し過ぎると“恐怖感”が薄れてしまうのではないか? とね。殺人鬼の背景を描くと、どうしても同情してしまうから。でも皆が一番観たいのはトビン・ベル(ジョン・クレイマー=ジグソウ)だと考えた。だから、トビンなら巧くできると確信して撮影に挑んだんだ。

『ソウX』©2024 Lions Gate Ent. Inc. All Rights Reserved.
―私もトビンの魅力が爆発していると思います。『ソウ』シリーズで、こんなに感情を揺さぶられるとは思いませんでした。現場での彼はどのような感じなのですか?
トビンはね、とても優しくてフレンドリーな役者なんだけれど、仕事になるとめちゃくちゃシリアスなんだよ。とりわけジョン・クレイマーというキャラクターについては厳しくて、脚本を渡して「これお願いします!」とはいかないんだ。
「ジョン・クレイマーならどうするか?」を聞いて、トビン自身が脚本を直すことも多々あったよ。現場に入ってからも、トビンのアイディアひとつで何カットも撮り直したりね(笑)。後半のゲーム対象者たちが目覚めるシーンなんかは、特にそうだった。彼は舞台俳優出身だから、あの自由に動ける工場セットを気に入ってくれたみたいだよ。

メイキング写真
『ソウX』©2024 Lions Gate Ent. Inc. All Rights Reserved.
―トビンもジョン・クレイマーを演じて20年ですから、何かストイックな変化があったのでしょうか?
うーん、逆かな。トビンはもともと歴史や哲学が好きで、スポーツジムにも通っているからね。役者として自分の中にジョンを見いだした、と言った方がいいかな。でも、強く意見を言うときの彼の目は、間違いなくジョン・クレイマーだね(笑)。

『ソウX』©2024 Lions Gate Ent. Inc. All Rights Reserved.
「トラップの痛々しさを皆に楽しんでほしいな!」
―監督はホラー映画において、家族や師弟関係、友人などとの心理的な葛藤を描くことが得意とお見受けします。以前に撮られた『ジャッカルズ』(2017年)や『ジェサベル』(2014年)にも、その傾向がありました。本作ではドラマ部分にもゲーム部分にも程よい心理的葛藤が入れ込まれており、バランスが非常にいいですね。こだわりはありますか?
そう思ってくれているとは……嬉しいよ! 僕はホラー映画をたくさん撮っているけれど、観客の皆には観終わった後に“恐怖”だけじゃない、もっとエモーショナルなものを感じてほしいんだよね。
ホラー映画を撮るときに一番気にしているのは、“異常な出来事”を取り除いても物語が成立するか? なんだ。それで成立するなら映画として“基本ができている”ことになる。そこで“異常な出来事”で物語性を拡大していく……そんな作り方をしているんだ。

『ソウX』©2024 Lions Gate Ent. Inc. All Rights Reserved.
―『ソウX』では“異常な出来事”がトラップになると思うのですが、今回はかなりプラクティカル・エフェクト(※非CGの特殊効果)をたくさん使った痛々しいトラップが盛りだくさんでしたね。
やっぱりプラクティカル・エフェクトが最高だと思うよ。もちろんCGも使うんだけど……。今回は、フレンドリーなトラップを目指したんだ。『ソウ』はシリーズを追うごとにトラップが大がかりになりすぎて、1~2人では作れないようなものばかりだったから(笑)。痛々しさを皆に楽しんでほしいな!

ケヴィン・グルタート監督 『ソウX』©2024 Lions Gate Ent. Inc. All Rights Reserved.
――ドラマ映画としてもゴア映画としても完成度が極まり、世界的評価を得た『ソウX』。ついに迎えた日本公開を、ぜひ楽しんでほしい。

『ソウX』©2024 Lions Gate Ent. Inc. All Rights Reserved.
文:氏家譲寿(ナマニク)
『ソウX』は2024年10月18日(金)より全国公開
『ソウX』
末期がんで余命宣告を受けたジョン・クレイマー(トビン・ベル)は、危険な実験的治療を試すためにメキシコへと向かう。しかし実際に現地に行ってみると、治療の話は詐欺だった。自分がだまされたことを知った彼は、自らをだました詐欺師や不正な治療に加担する医師たちに死のゲームを仕掛ける。
監督:ケヴィン・グルタート(『ソウ6』『ソウ ザ・ファイナル 3D』)
脚本:ジョシュ・ストールバーグ(『ジグソウ ソウ・レガシー』)、ピーター・ゴールドフィンガー(『ジグソウ ソウ・レガシー』)
製作総指揮:ジェームズ・ワン(『ソウ』シリーズ[1~8]、『死霊館』シリーズ、『M3GAN ミーガン』、『ワイルド・スピード SKY MISSION』)、リー・ワネル(『透明人間』、『アップグレード』、『ソウ』シリーズ[1~3、7]、『インシディアス』シリーズ)
出演:トビン・ベル、ショウニー・スミス、スティーヴン・ブランド、シヌーヴ・マコディ・ルンド、マイケル・ビーチ、レナータ・ヴァカ、オクタビオ・イノホサ
制作年: | 2023 |
---|
2024年10月18日(金)より全国公開