昔の“放送事故”の怖さ
“放送事故”と聞いて思い浮かぶのは、今時だとアナウンサーや演者のトチり、カメラの切り替えミスやテロップ間違いあたりだと思う。しかし、“昔の放送事故”はレベルが違う。洒落にならない映像が地上波で流れてしまうようなことは少なくなかったのだ。
超能力調査の末に遺体が映ってしまった。心霊写真を紹介しているときに照明が落ちてしまった。歌番組に亡くなったアイドルの影が見える。掛け軸に書かれた幽霊の目が開いた……。20世紀のテレビ番組の編成は今と比べものにならないほど雑で、技術的にも拙かった。さらにはブラウン管の滲み、ビデオのトラッキングノイズなどの影響で映像そのものが粗い。だから「たまたまそうなった」、「言われてみれば」、「そう見えなくもない」映像になる。もちろん“やらせ”もあっただろう。
𓅓 #フクロウの目 𓅓
➫70年代アメリカ
70年代の政治的な激動に人々が疲弊していた時代。
空前の石油危機、不安と不信─
蔓延する”恐れ”と暴力。ファッション、音楽、映画など
多様なポップカルチャーが目覚めると共に、
カルトへ救いを求める者も多くいた。#悪魔と夜ふかし 𝟭𝟬.𝟰 pic.twitter.com/h4BTvmKBe8— 映画『悪魔と夜ふかし』公式 (@akuma_yohukashi) September 3, 2024
加えて、70年代以降は世紀末的雰囲気やオカルトブーム、サタニック・パニック(※)も手伝い、人々の多くは「この世には人知を超えた何かがある」と信じたがっていたのだ。だから超常現象的なネタは視聴者を惹きつけた。今でも『X-ファイル』でいうところの「I Want Believe」な人たちが多数いるだろう。
(※)米国を始め西洋諸国で広がった“恐怖恐慌”。宗教的保守主義の台頭から、あらゆる“事件”の裏に悪魔的背景があると考えられた。代表的な事象としては「マクマーティング幼稚園虐待」事件がある。実際は行われなかった虐待だが、保護者の通報で幼稚園児に職員が悪魔的儀式を行っているとされた。後に裁判で無実が証明されている。
70年代トーク番組の“怪異”描く『悪魔と夜ふかし』監督インタビュー
映画『悪魔と夜ふかし』は、そんな世紀末的雰囲気の中、とあるトーク番組で起こった「伝説の放送事故」を描いた作品だ。
人気司会者ジャック・デルロイは、自身の冠番組が人気になり名声を誇っていたが、とある出来事を境に視聴率が低迷。そこで流行の読心術や催眠術師、悪魔憑きの少女をゲストに呼び起死回生を狙う。番組は冒頭からインチキくさい読心術者によって微妙な雰囲気になるが、相棒ガスの機転により番組はなんとか進行していく。ところが、ゲストを呼ぶごとに奇妙な出来事が起き始め……。
70年代のTV番組の雰囲気を徹底的に再現し、さらには前述のオカルトブームやサタニックパニックといった時代背景まで反映させた本作。観客をまるで生放送に引き込むような魅力を放ち、本国オーストラリアはもちろんアメリカでも話題を呼んだ。
今回は、そんな『悪魔と夜ふかし』についてキャメロン&コリンのケアンズ兄弟監督にお話を伺った。