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監督は「韓国バイオレンス」の立役者!マ・ドンソクと闘う殺人ボクサーは誰?『犯罪都市 PUNISHMENT』製作秘話【後編】

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ライター:#ギンティ小林
監督は「韓国バイオレンス」の立役者!マ・ドンソクと闘う殺人ボクサーは誰?『犯罪都市 PUNISHMENT』製作秘話【後編】
『犯罪都市 PUNISHMENT』© 2024 ABO Entertainment Co.,Ltd. & BIGPUNCH PICTURES & HONG FILM & B.A.ENTERTAINMENT CORPORATION, ALL RIGHTS RESERVED.
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今度の悪役は「殺人界のスーパーエリート」だ!

今作の題材になったパタヤ殺人事件の主犯キム・ヒョンジンは反社組織の一員だが、ドンソクと脚本家オ・サンホは映画化にあたって設定を大胆に変更。その結果、大韓民国陸軍の特殊部隊出身の元傭兵で、傭兵時代に大量殺戮を行い追放された過去を持つ反社組織の実質的リーダー、ペク・チャンギというシリーズ最強かつ最狂な殺人マシンになった。

『犯罪都市 PUNISHMENT』© 2024 ABO Entertainment Co.,Ltd. & BIGPUNCH PICTURES & HONG FILM & B.A.ENTERTAINMENT CORPORATION, ALL RIGHTS RESERVED.

つまり、これまでマ・ソクト刑事が戦ってきたユン・ゲサン(1作目)たちのような野良狂人とは違い、今回の悪役ペク・チャンギは特殊部隊で超一流の戦闘スキル&人体破壊スキルを身につけ、数多の戦場を血に染め、常に冷静かつ的確な最小限の動きで、得意のナイフ戦闘術によって相手の息の根を止める殺人界のスーパーエリート。それでいて、これまでのヴィランと同じく口数が極端に少なく、絶対に僕ら一般人の話が1ミリも通じないムードを全身から漂わせている。そんなペク・チャンギを描けるのは、数々の韓国バイオレンス映画で凄まじい暴力描写をクリエイトしてきたホ・ミョンヘンしかいない!

『犯罪都市』シリーズにおいて、マ・ドンソクが演じる怪力刑事マ・ソクトと同じくらい重要なキャラクターが、彼と対決を繰り広げるヴィランです。観客が、最後の勝利者はマ・ソクトだということを知っているだけに、ヴィランのキャラクターが強烈で悪辣であるほど緊張感を保つことができるんです。

そう語るホ・ミョンヘン監督も、今回の悪役ペク・チャンギについて「常に冷静でありながら自分だけの戦いの技術を持ったキャラクターとして設定することで、これまでの悪党たちと差別化を図りました」と明かしている。

『犯罪都市 PUNISHMENT』© 2024 ABO Entertainment Co.,Ltd. & BIGPUNCH PICTURES & HONG FILM & B.A.ENTERTAINMENT CORPORATION, ALL RIGHTS RESERVED.

キム・ムヨルは「ナチュラル・ボーン・殺人マシン」をどう演じた?

そんなシリーズ最強&最狂の殺人マシン、ペク・チャンギを演じる俳優には、演技力だけでなく高度で難易度が高いアクション・スキルが要求される。そしてやはり、マ・ドンソクはすでに適任者を知っていた。主演映画『悪人伝』(2019年)で準主役のチョン・テソク刑事役を演じたキム・ムヨルである。

ペク・チャンギは難易度が高いアクションができなければ務まらない役だ。『悪人伝』で共演したキム・ムヨルは素晴らしい身体能力があり、アクションのセンスも上手く、演技力がある。いつか、もう一度共演したいと思っていたんだ。ペク・チャンギ役はキム・ムヨルしか思い浮かばなかった。

そうマ・ドンソクが絶賛すると、ホ・ミョンヘン監督も、「キム・ムヨルは複雑なアクションの動きを覚えて、表現する能力が優れています。演技力も申し分ない。アクションが上手い俳優は多いけれど、その中でもキム・ムヨルは特別です!」と太鼓判を押す。

『犯罪都市 PUNISHMENT』© 2024 ABO Entertainment Co.,Ltd. & BIGPUNCH PICTURES & HONG FILM & B.A.ENTERTAINMENT CORPORATION, ALL RIGHTS RESERVED.

シリーズで最も近接格闘スキルが長けているヴィランを演じるには、撮影前に気が遠くなるようなトレーニングを積まなければいけない。しかし、当のキム・ムヨルは「ペク・チャンギはナイフ戦の達人ですが、この作品のために特別にナイフ戦のトレーニングはしませんでした。以前に出演した作品のためにフィリピンのナイフを使う武術<カリ>を学んだので、カリの戦闘スタイルをベースにしました」と余裕な発言をしている。しかも、ホ・ミョンヘン監督によると「撮影中、キム・ムヨルはNGを出さなかった」という。

劇中、キム・ムヨルが演じるペク・チャンギは極端に口数が少なく、常に無表情で何を考えているのかわからない不気味な存在感を放っている。対抗組織や刑事と戦う際には、常に冷静で、ひとたび戦闘になると、ナイフを使って無駄な動きを排除した機械のような正確さで相手の急所を正確に狙う。さらに刃先が丸いテーブルナイフを瞬時に鋭利な凶器にトランスフォームするなど、身の回りにある物を凶悪な武器に変えるエスプリの効いた戦闘スタイルも得意とする。そして自分の利益の邪魔になるものは誰であれ、1ミリも迷うことなく確実かつ瞬時に処理する。まさにナチュラル・ボーン・殺人マシンなヴィランだ。そんなペク・チャンギを描く際、ホ・ミョンヘン監督はある韓国バイオレンス映画を参考にしたという。

私は自分が武術監督として参加した『アシュラ』が大好きなので、ペク・チャンギたちヴィランのシーンはあの作品のような、ノワール的な重い感じになるように目指しました。

『犯罪都市 PUNISHMENT』© 2024 ABO Entertainment Co.,Ltd. & BIGPUNCH PICTURES & HONG FILM & B.A.ENTERTAINMENT CORPORATION, ALL RIGHTS RESERVED.

格段にパワーアップしたボクシング・アクションと強敵キャストにも注目!

今回、シリーズ最強のヴィランと対峙することになるマ・ソクト刑事だが、彼の近接格闘スキルも『犯罪都市』史上もっともテクニカルな仕上がりを見せている。前作『犯罪都市 NO WAY OUT』から本格的に披露しはじめたボクシング・テクニックが、本作では格段にスキルアップしているのだ。

『犯罪都市 PUNISHMENT』でリアルなボクシングの動きを見せるために、私が大好きな伝説的ボクシング映画『ロッキー』シリーズのシルヴェスター・スタローンを参考にした。同じボクシングのテクニックでも、アクションの難易度は前作よりも高いものになっている。ヴィランのアクションの難易度が上がっただけでなく、シリーズが進むにつれてマ・ソクト刑事もベテランになっているんだ。今回は、これまでの作品よりも迫力のあるアクションを目指したよ。

『犯罪都市 PUNISHMENT』© 2024 ABO Entertainment Co.,Ltd. & BIGPUNCH PICTURES & HONG FILM & B.A.ENTERTAINMENT CORPORATION, ALL RIGHTS RESERVED.

マ・ドンソクがこう語るように今回のマ刑事の近接格闘戦シーンは、あのワガママボディから繰り出される鉄拳の力強さと、その巨体からは想像もつかない軽やかなフットワークが絶妙なハーモニーを奏でていて、すべての格闘シーンが何度も観返したくなる素晴らしさ!

しかも、ペク・チャンギの懐刀的存在で、ボクシングを得意とする傭兵上がりのマッチョなヴィランも登場! この役を演じるキム・ジフン(※同名の長髪イケメン俳優とは別人)は元ボクシングの国家代表選手。現在は俳優だけでなくボクシングトレーナーもしていて、マ・ドンソクのトレーナーも務めている。そんなわけでファンの皆さんは、「マ刑事VS殺人マシン ペク・チャンギ戦」だけでなく、「マ刑事VS殺人ボクサー キム・ジフン戦」にも期待していてください!

ちなみに、実はボクシングに関して相当造詣が深い小説家・平山夢明さんが自身のYouTubeチャンネル『平山夢明のシネマdeシネマ』の『犯罪都市 PUNISHMENT』特集回(9月28日より配信)で、マ・ドンソクが披露するウィービング(相手のパンチを避けるディフェンス動作)等のボクシング・テクニックの素晴らしさについて、細やかな解説をしている。この解説動画を観ればマ・ドンソクのボクシング・スキルの凄まじさがさらに理解できる内容になっているので、興味のある方は是非!

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シリーズは8作目まで構想中!? まだまだ見どころ盛り沢山

今回この記事では、読者の方たちに『犯罪都市 PUNISHMENT』を没入感MAXで味わってもらうため、基になった事件やアクションなどの話題が中心になったが、今回ファンとして嬉しいのが、シリーズの大事なコメディリリーフであるチャン・イス(パク・ジファン)が本格復帰してくれたこと!

『犯罪都市 PUNISHMENT』© 2024 ABO Entertainment Co.,Ltd. & BIGPUNCH PICTURES & HONG FILM & B.A.ENTERTAINMENT CORPORATION, ALL RIGHTS RESERVED.

前作『犯罪都市 NO WAY OUT』では最後にちょっぴり登場しただけで淋しい思いをさせてくれたチャン・イスが、ブランクを全力で挽回するかのように、マ刑事に徹底的にパシられる! そして烈火の如くスネる! で、なだめられると、またマ刑事がイスの命を無駄遣いするかのようニパシる! という漫才の名人芸のような息の合ったコンビぶりを披露してくれる。

『犯罪都市 PUNISHMENT』© 2024 ABO Entertainment Co.,Ltd. & BIGPUNCH PICTURES & HONG FILM & B.A.ENTERTAINMENT CORPORATION, ALL RIGHTS RESERVED.

が、やはり最大の見せ場はシリーズ中もっとも高い近接格闘スキルのオーナーとなったマ刑事VS殺人マシン、ペク・チャンギとの戦いだろう。シリーズ最強&最凶ヴィランを前にしたマ刑事が、「俺は警察官だから殺さないように手加減して殴る。でも、お前は例外だ!」と物騒すぎる宣言をしてはじまる178cm/120kgのマ刑事と183cm/71kgのペク・チャンギによる体重差50kgのボクシングVSナイフ戦闘術は、是非スクリーンで観戦して欲しい!

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――最後に、気になる『犯罪都市』シリーズの今後だが、なんと8作目まで企画があるという!

若い頃にボクシングを一緒にトレーニングした友人の中に刑事になった男がいて、彼から映画の題材にふさわしい事件の話を教えてもらった。50件以上の事件を教えてもらい、その中から映画の題材になる事件が8件残った。これらの事件を『犯罪都市』シリーズでは毎回、題材にしているんだ。

そう語るドンソクは現在、シリーズ5~8作目の脚本作りに同時に取り組んでいるという。しかも5作目からは、これまでとは違う試みがなされるとのこと。現在、1作目からのヴィランは全員懲役生活を送っているはずなので、個人的には彼らがチームを組んでマ刑事にリベンジを挑む、なんて展開を期待してしまう!

でも『犯罪都市』シリーズは実際に起きた事件を題材にするから、それは無理か……。いや、実際の事件を題材にしつつも今回、元傭兵のオンラインカジノ組織のリーダーという実にチャイルディッシュかつ夢のあるキャラクターを登場させる『犯罪都市』だから、それぐらいのことはやってしまうかも!?

文:ギンティ小林

【前編】韓国で実際に起こった〈奴隷プログラマー〉殺人事件をマ・ドンソクが制裁!『犯罪都市 PUNISHMENT』製作秘話

『犯罪都市 PUNISHMENT』は2024年9月27日(金)より全国公開

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『犯罪都市 PUNISHMENT』

新種合成麻薬事件から3年後の2018年。
ヤクザも恐れる怪物刑事マ・ソクト(マ・ドンソク)とソウル広域捜査隊は、デリバリーアプリを悪用した麻薬密売事件を捜査していた。

マ刑事は捜査を進めるうちに、手配中のアプリ開発者が謎の死を遂げた事件の背後に、フィリピンに拠点を置く国際IT犯罪組織の存在を突き止める。

組織のリーダーは、拉致、監禁、暴行、殺人をいとわず、韓国の違法オンラインカジノ市場を掌握した特殊部隊出身の“元傭兵”ペク・チャンギ(キム・ムヨル)。

一方、組織オーナーで“ITの天才”CEOチャン・ドンチョル(イ・ドンフィ)は、韓国でさらに大きな犯罪計画を練っていた。

マ刑事は、史上最大規模のIT犯罪計画を殲滅するため、オンラインカジノ事業の経験を持つチャン・イス(パク・ジファン)に捜査協力を依頼し、広域捜査隊、サイバー捜査隊と新たなチームを結成し捜査を始めるのだが……。

監督:ホ・ミョンヘン
出演:マ・ドンソク、キム・ムヨル、イ・ドンフィ、パク・ジファン

制作年: 2024