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韓国で実際に起こった「奴隷プログラマー事件」をマ・ドンソクが鉄拳制裁!『犯罪都市 PUNISHMENT』製作秘話【前編】

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ライター:#ギンティ小林
韓国で実際に起こった「奴隷プログラマー事件」をマ・ドンソクが鉄拳制裁!『犯罪都市 PUNISHMENT』製作秘話【前編】
『犯罪都市 PUNISHMENT』© 2024 ABO Entertainment Co.,Ltd. & BIGPUNCH PICTURES & HONG FILM & B.A.ENTERTAINMENT CORPORATION, ALL RIGHTS RESERVED.
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物語のベースとなった「パタヤ殺人事件」とは?

『犯罪都市』シリーズといえば、原案・企画・製作・主演を務めるマ・ドンソクの「実際に起きた残酷な事件のことを世の中の人にもっと知って欲しい」という意向のもと、警察関係者を取材し毎回、実際に起きた事件をベースにしている。

今回描かれるオンラインカジノ組織の犯罪も、2015年に起きたパタヤ殺人事件と呼ばれる韓国在住の方々にとっては有名な事件。だから、韓国の観客たちは本作を「あの凶悪事件の犯人たちを映画でマ・ソクト刑事が成敗してくれるのか!」と没入感満載で鑑賞した。せっかくなら日本の観客にもそのぐらい映画に入り込んでもらいたいので、ここからは映画の基になったパタヤ殺人事件を解説する。

『犯罪都市 PUNISHMENT』© 2024 ABO Entertainment Co.,Ltd. & BIGPUNCH PICTURES & HONG FILM & B.A.ENTERTAINMENT CORPORATION, ALL RIGHTS RESERVED.

2015年11月、タイのパタヤの高級リゾート地の駐車場の車中で、韓国人青年の変死体が発見される。亡くなったのは25歳のプログラマー、イム・ドンジュン。遺体は全身がアザだらけで顔面が陥没、前歯が4本折れており、肋骨は7本骨折、さらに胸部も陥没……。先ほど書いた映画の冒頭の出来事は、このイム・ドンジュンの事件を基にしているのだが、なぜ彼はそのような最期を遂げなければならなかったのか……?

イム・ドンジュンはIT企業でアルバイトをしながら、少年時代からの夢であった警察官になるための勉強をしていた。しかし、その暮らしは貧しかった……。ところが2015年9月、その現状を打破してくれる救いの手が差し伸べられる。それはキム・ヒョンジンという男性からの電話だった。

「自分の会社はタイのパタヤにあり、そこで数か月間プログラムの開発に協力してくれませんか? 毎月600万ウォンのギャラを支払います。仕事をしてもらう間の宿と食事は私たちの会社が用意しますので安心して来てください」

この依頼に対してイム・ドンジュンは藁にも縋る思いで、キム・ヒョンジンの指示により家族や友人には何も告げず、彼から送られてきた航空券でタイのパタヤへと向かった。だが、パタヤ空港に迎えに来たキム・ヒョンジンは電話の印象とはまったく違う人物だった。彼は反社組織の一員だったのだ。

「お前は、ここで俺の言うとおりにすればいい」。そう高圧的に言い放ったキム・ヒョンジンは、イム・ドンジュンのスマホとパスポートを没収。そしてキムは、イムが知人と連絡が取れないようにするため、彼のSNSに「スマホが壊れた」と投稿させた。

そう、この男はイムを、自身の組織が運営するオンラインカジノのプログラム開発と管理を行う奴隷にするためにおびき寄せたのである……。

韓国全土が激震した凶悪<奴隷化>殺人事件の顛末

そこから地獄のような日々がはじまった。キム・ヒョンジンは共犯者ユン・ミョンギュン、そして組織の構成員と共にイムたちを働かせるため、監禁し暴力で支配した。少しでも作業が遅れると容赦のない暴力制裁を行う。殴打されすぎて意識が朦朧とした奴隷には、覚醒剤を投与して働かせたといわれている。

キム・ヒョンジンたちから「俺たちは警察を買収している。もしも逃げれば、二度と韓国に戻れないようにしてやる」と脅され、被害者たちは常習的な暴行と薬物によって憔悴しきっていた。この頃、パタヤの雑居ビルのエレベーター内の防犯カメラが、ビル内にあるマッサージ店に向かうキム・ヒョンジンたちに無理やり同行させられているイム・ドンジュンの姿を撮影している。頭には包帯を巻き、両目が腫れあがり、瘦せ細った身体には無数の暴行の跡があった。その映像の中でも、イム・ドンジュンは顔面を殴打されていた……。この映像がイム・ドンジュンにとって生前最後の姿となった。

2015年11月21日、イム・ドンジュンはパタヤの高級リゾート地の駐車場の車中で変死体となって発見される。殺された理由は、最後の抵抗を示したイムが、奴隷たちが暴行される様子を録音した音声データとオンラインカジノの情報をファイル共有サイトに投稿したことがキムたちにバレて、長時間にわたり暴行を受けたためだといわれている――。

事件発覚後、キム・ヒョンジンはタイ駐在韓国大使館に電話して「犯人はユン・ミョンギュンだ」と共犯者に罪をなすりつけ、国外に逃亡。逮捕されたユン・ミョンギュンも「すべてキム・ヒョンジンによる犯行だ」と主張した。キムが逮捕されたのは事件から約2年後の2018年4月。逃亡先のベトナムで捕まったが、ここでも彼は飲食店と違法カジノを経営し豪遊していた。彼らはイム・ドンジュンだけでなく何人もの韓国人青年をパタヤにおびき寄せ、奴隷のように扱った挙句、殺害したといわれている……。

どうでしょう?「この事件を多くの人に知って欲しい」というマ・ドンソクのジャスティス魂が発動するのも納得してしまう、あまりにも陰惨な事件ですよね。ちなみに、このパタヤ殺人事件は当時、韓国のテレビ番組『それが知りたい』で特集が組まれ、国内に大きな衝撃をもたらしました。

韓国版『イコライザー』な復讐ドラマを手掛けた脚本家が参戦!

このパタヤ殺人事件を『犯罪都市 PUNISHMENT』の題材にするため、製作・企画・原案も務めるマ・ドンソクは、オ・サンホという『犯罪都市』シリーズ初参加の脚本家を招く。オ・サンホは同シリーズのように、実際に起きた事件を題材にした、元特殊部隊のタクシー運転手が法の網をすり抜ける悪党を制裁するという、韓国版『イコライザー』なテレビドラマ『復讐代行人~模範タクシー~』(2021年)のメインライターだ。

僕が原案を書いてオ・サンホさんに渡し、彼が脚本を書いてから再び脚色するという過程でした。最初のシーンから最後のシーンまで、このように作業しましたが、1日に10時間ほどかかりました。

オ・サンホさんが『犯罪都市』に参加してくださり、とても良かったです。脚本を書くスピードも速いですし、ストーリーも上手で、この分野ではナンバーワンではないかと思います。だから『復讐代行人~模範タクシー~』も成功したんだと思います。(マ・ドンソク)

『犯罪都市 PUNISHMENT』© 2024 ABO Entertainment Co.,Ltd. & BIGPUNCH PICTURES & HONG FILM & B.A.ENTERTAINMENT CORPORATION, ALL RIGHTS RESERVED.

そして完成した映画では、犯行の舞台をタイのパタヤからフィリピンに変更。物語は先に書いたように、韓国人青年が殺害されて事件が発覚するところからはじまる。

ちなみにオ・サンホは『犯罪都市 PUNISHMENT』の前にも、『復讐代行人2~模範タクシー~』(2023年)の第1話から4話までのエピソードでパタヤ殺人事件を題材にしている。特に第2話は、犯人グループの甘い言葉に乗ってしまい単身、異国に来た若者が監禁され、オンラインカジノのプログラマーにされてしまう様子が克明に描かれている。『復讐代行人2』を観ておくと、パタヤ殺人事件の理解が深まるので興味のある方は是非!

『犯罪都市 PUNISHMENT』© 2024 ABO Entertainment Co.,Ltd. & BIGPUNCH PICTURES & HONG FILM & B.A.ENTERTAINMENT CORPORATION, ALL RIGHTS RESERVED.

【後編】監督は「韓国バイオレンス」の立役者!マ・ドンソクと闘う殺人ボクサーは誰!?『犯罪都市 PUNISHMENT』製作秘話【後編】

文:ギンティ小林

『犯罪都市 PUNISHMENT』は2024年9月27日(金)より全国公開

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『犯罪都市 PUNISHMENT』

新種合成麻薬事件から3年後の2018年。
ヤクザも恐れる怪物刑事マ・ソクト(マ・ドンソク)とソウル広域捜査隊は、デリバリーアプリを悪用した麻薬密売事件を捜査していた。

マ刑事は捜査を進めるうちに、手配中のアプリ開発者が謎の死を遂げた事件の背後に、フィリピンに拠点を置く国際IT犯罪組織の存在を突き止める。

組織のリーダーは、拉致、監禁、暴行、殺人をいとわず、韓国の違法オンラインカジノ市場を掌握した特殊部隊出身の“元傭兵”ペク・チャンギ(キム・ムヨル)。

一方、組織オーナーで“ITの天才”CEOチャン・ドンチョル(イ・ドンフィ)は、韓国でさらに大きな犯罪計画を練っていた。

マ刑事は、史上最大規模のIT犯罪計画を殲滅するため、オンラインカジノ事業の経験を持つチャン・イス(パク・ジファン)に捜査協力を依頼し、広域捜査隊、サイバー捜査隊と新たなチームを結成し捜査を始めるのだが……。

監督:ホ・ミョンヘン
出演:マ・ドンソク、キム・ムヨル、イ・ドンフィ、パク・ジファン

制作年: 2024