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「ポツンと一軒家なんてレベルじゃない!」田舎に“ターン移住”したくなる大自然ドキュメンタリー『ソング・オブ・アース』

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ライター:#BANGER!!! 編集部
「ポツンと一軒家なんてレベルじゃない!」田舎に“ターン移住”したくなる大自然ドキュメンタリー『ソング・オブ・アース』
『SONG OF EARTH/ソング・オブ・アース』©Speranza Film AS 2023
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田舎映画の極北にして大自然ドキュメンタリーの傑作

『SONG OF EARTH/ソング・オブ・アース』はドキュメンタリー映画でありながら、第96回アカデミー賞で国際長編映画賞ノルウェー代表に選出された話題作だ。ミネラルウォーター<オルデン>の採水地としても知られるノルウェー西部の山岳地帯、息を呑むような美しい大自然に囲まれた<オルデダーレン>の渓谷に暮らす老夫婦の姿を、その娘でありドキュメンタリー作家のマルグレート・オリンが一年をかけて密着。生きるとは、老いるとは何か――大地に根を下ろし、シンプルで豊かに生きる両親の姿から、娘は人生の意味や生と死について学んでいく。

『SONG OF EARTH/ソング・オブ・アース』©Speranza Film AS 2023

実際に自然と対峙することで人間との関係を考えていくというオリン監督の視点は、近年のヴェルナー・ヘルツォーク監督作とも通じるものがある。そんな本作のプロジェクトに共感し製作総指揮を買って出たのは、役所広司主演で“慎ましやかな東京の生活サイクル”を描いた『PERFECT DAYS』の巨匠ヴィム・ヴェンダースと、イングマール・ベルイマン監督のミューズとしても知られるノルウェーを代表する大女優リヴ・ウルマン(『仮面/ペルソナ』『鏡の中の女』ほか)だ。

『SONG OF EARTH/ソング・オブ・アース』©Speranza Film AS 2023

大自然から「立ち止まる」「足跡を見る」ことを教わる

スカンジナビア半島の壮大な風景を背景に、監督の父ヨルゲンの言葉をガイドに映像を紡いでいく本作。その軸にあるのは言わずもがな、自然のサイクルに介入する人間の存在だ。神々しさすら放つ山河は同時に恐怖も感じさせ、年々失われゆく氷山は気候変動による不安を増幅させる。一見すると牧歌的な自然ドキュメンタリーでありながら、「自然との共生」の難しさ、そして「無関心の行き着く先」も想像させる。

『SONG OF EARTH/ソング・オブ・アース』©Speranza Film AS 2023

田舎暮らしは当然ながら、都会での消費にまみれた生活を俯瞰することの絶対条件ではない。たとえば国内外の搾取企業に対するボイコット運動などは、本来の目的の達成と同時に無為な消費を見つめ直すきっかけにもなる。ヨルゲンが誘うオルデダーレンの湖、ところどころ緑に覆われた岩の道、美しい川や鬱蒼とした平原、そこに暮らす野生動物や幻想的なオーロラからは、本作が「いったん立ち止まる」ためのドキュメンタリーであるようにも思えてくる。

『SONG OF EARTH/ソング・オブ・アース』©Speranza Film AS 2023

そして本作は多くの観客と同じく、遠くない未来に<愛する人との別れ>と向き合うことになる監督の、これ以上はない最強のラブレターとなった。厳しい残暑が続く今、映画館でマイナスイオンを浴びた気分になれる清涼感にあふれた逸品だ。

『SONG OF EARTH/ソング・オブ・アース』は2024年9月20日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー

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『SONG OF EARTH/ソング・オブ・アース』

ノルウェーの人里離れた山間部。厳しくも美しい自然に囲まれた場所で、年老いたひと組の夫婦が暮らしている。作家となった娘が二人の姿をカメラに収めようと帰郷した。84歳となった父親はこの国で最も美しい渓谷と呼ばれる場所に娘を案内しながら、自分の生い立ち、最愛の妻への想い、そしてこの土地で自然と共に生きてきた何世代にも渡る人々の人生について静かに語り始めるのだった。

制作年: 2023