伊澤彩織の記憶が飛ぶほど壮絶だったアクション撮影
―御三方のシーンとしては、県庁パートから撮影されたのでしょうか。
髙石:ちさまひに関してはバナナボートで、3人のシーンは県庁で初対面するところからでした。
伊澤:オープニングだけで、映画1本撮り終えたくらいの達成感がありました。あまりに激闘の時間すぎて、ところどころ記憶がありません(笑)。
―圧倒されるほどのスピード感と密度でした。階段から廊下に飛び移ったりと立体的な動きにも驚かされましたが、どうやって組み立てていかれたのでしょう。
伊澤:前2作に関してはアクション作りから参加させていただきましたが、今回は私は参加できず、園村さんが作って下さったものを練習していきました。園村さんが考案するアクションは一手一手に本当に意味があって、無駄が全くありません。無駄だと感じたものはどんどんそぎ落としていくため、アクションが言葉のようにコミュニケーションとして成り立つんです。逆に言うと、一手でも間違うと「もう一回」となるくらい緻密なので、実際にやるのは相当難しかったです。
髙石:試写を観たとき、すごすぎて笑っちゃいました(笑)。途中、伊澤さんが銃弾を避ける際に部屋に飛び込むシーンがありますが、人間の動きじゃない! と思ってしまって。
池松:あれ凄かったですね。
髙石:2人で最後に戦う際に、池松さんが途中で三角座りをしますが、あれもアクションの“手”ですか?
池松:そうです。
髙石:すごい……。すみません、熱くなっちゃいました(笑)。
伊澤:まひろが脳震盪を起こすとき、カメラも一緒に揺れて倒れるPOV演出も好きです。あれも“手”の一つとして園村さんが考えてくれました。『1』の時からそういったギミックを駆使していて、頭突きのシーンは逆再生で撮っています。細かい演出やお芝居の感情の流れを含めて、園村さんが作って下さいます。
池松壮亮が現場で感じた、ベビわる旋風の必然性
―池松さんは『宮本から君へ』のドラマ版でも園村さんとお仕事をされていますね。
池松:園村さんは真利子哲也監督作によく参加されていて、映画の方はスケジュールが合わなかったそうですが、ドラマではご一緒しました。『宮本から君へ』のドラマに関してはアクションはさほどなく、自転車でこけるくらいだったので、ちゃんとコラボレーションできたのは今回が初でした。2人がおっしゃるように、本当にちょっとすごかったです。園村さん以下、チームとしても素晴らしく、これだけ才能を持った人たちがいることに驚かされ、感動しました。
先ほど伊澤さんは「今回はアクション作りに参加していない」とおっしゃっていましたが、常に的確な対話があって変更していくことは多々あり、相当レベルの高いやり取りをされていました。きっと当の本人たちは、『ベイビーわるきゅーれ』というシリーズがいつの間にか大きくなっていったという感覚があると思いますが、今回中に入れさせてもらって「こんな人たちが団結して、愛情をこれでもかと注いでいて、そりゃこうなるよな」と深く納得させられました。
―本番と本番の合間にも、手を考え直して覚え直す必要があるわけですよね。ずっと動き続けた現場だったのではないでしょうか。
伊澤:カメラテストの時などはアクション部の方が動いて下さるので、合間は休憩しながらその動きを目で追うことで思い出していました。ただ、ラストシーンは休憩時間も短くて、死ぬかと思いました(笑)。撮影は去年の9月でしたが、宮崎はまだまだ暑い時期で汗だくで戦っていました。無事に撮り終えられたときには、本当に安心しました。
最強の敵・かえでは、ちさとに出会えなかったまひろ
―自分もそうですが、『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』のアクションが凄すぎて、そしてファン心理的にも何回も観たくなる人は多いのではないでしょうか。リピーター向けにコアな注目ポイントを教えていただけますか?
髙石:私は、喋っていないキャラクターが何をしているかを観てほしいです。実はめっちゃふざけていたり、話を聞いていなかったりしますから(笑)。『ベイビーわるきゅーれ』にはそういう持ち味があって、キャラクターたちの会話をあえて引きで映しているところがあります。一度観て内容を把握された方は、そういった部分にも注目していただけたら嬉しいです。また違った楽しみ方ができるはずです。
池松:アクションは変わらず見どころが多いかとは思いますが、やはりちさととまひろの月日を重ねたコンビネーションに尽きるかなと思います。これだけ魅力的なバディはそうそう生まれませんし、2人を見ていて奇跡的だと感じます。この2人が帰ってきて、宮崎でだらだらして暴れまくるというだけで5回はいけるのではないでしょうか。
髙石:その5回を10回にするためのコメントを、伊澤さんぜひ!
伊澤:(笑)。池松さんが言って下さったことを踏まえてですが、私たちは『2ベイビー』の兄弟も主人公だと思っていますし、『ナイスデイズ』は池松さん扮するかえでが主人公です。2人で1つの私たちと、絶対的に孤高の存在の対比――あり得ないくらい強いけれど、ものすごくピュアで心を強くあろうとしているかえでの人物像を池松さんが様々な表情で演じて下さって、そこに自分が加われたことが本当に嬉しかったです。
阪元監督に台本を渡されたとき、「かえでは、ちさとと出会わなかった世界線のまひろです」と言われました。核の部分は本当に似た者同士で、まひろはちさとに引っ張っていってもらって生きているところがあります。2人が重なるシーンとしてサンドバッグが登場しますが、共鳴できてうれしい気持ちがありました。衣装部さんがそうした裏設定を汲んで下さって、色違いの靴下を履かせてくれました。まひろとかえではファミリーマートの靴下を履いています。
髙石:「靴下を見てください!」であと2回はいけますね(笑)。
―髙石さんはドラマ『エブリデイ!』に際して「“もしも話”がずっと叶い続けている」とコメントされていましたね。
髙石:池松さんの出演は、もしも話を超えていました(笑)。まさか出演して下さるとは思いもしませんでしたし、前田敦子さんに関してもそうです。
『ベビわる』がこうやって続いていることが当たり前のような感じになっていますが、本当は決してそうじゃないと思っています。どんどん自分のものだけでなく、皆さんのものになっている感覚があります。
取材・文:SYO
撮影:町田千秋
『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』は2024年9月27日(金)より全国公開
『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』
殺し屋協会に所属するプロの殺し屋コンビ、杉本ちさと(髙石あかり)と深川まひろ(伊澤彩織)が宮崎県に出張。到着早々ミッションをこなし、バカンス気分を満喫していたが、ちさとはとあることに気づく。今日は相棒まひろの誕生日、しかしこの後は次の殺しの予定が入っていてプレゼントを用意する暇もない! 内心の焦りを隠しつつ、ターゲットがいる宮崎県庁に向かう。チンピラを一人消すだけの簡単な仕事のはずが、指定された場所にいたのはターゲットに銃を向けている謎の男。この男の正体は一匹狼の殺し屋、冬村かえで(池松壮亮)。150人殺しの達成を目指す“史上最強の敵”が、ちさととまひろを絶体絶命のピンチに追い詰めるのだった……。
出演:髙石あかり 伊澤彩織
水石亜飛夢 中井友望 飛永翼(ラバーガール)
大谷主水 かいばしら カルマ Mr.バニー
前田敦子
池松壮亮
監督・脚本:阪元裕吾
アクション監督:園村健介
音楽:SUPA LOVE
主題歌:女王蜂「狂詩曲」(Sony Music Labels Inc.)
挿入歌:忘れらんねえよwithちさと&まひろ(fromベイビーわるきゅーれ)「そっか、自由か。」(Bandwagon/UNIVERSAL MUSIC)
制作年: | 2024 |
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2024年9月27日(金)より全国公開