ベトナム反戦から生まれたアメリカン・ニューシネマの名作
学生闘争の嵐が吹き荒れ、目下ストライキ中の大学。そんな中、純なボート部員の学生サイモンは、見物がてら警備線が張りめぐらされた校内に侵入。そこで女性解放委員をしているリンダと出会う。彼女に惹かれたことをきっかけに、サイモンは次第に闘争へのめりこんでいき……。
1968年、ニューヨークのコロンビア大学の生徒たちがベトナム反戦を訴えるデモを起こし、警察の介入によって多くの逮捕者が出た。この事件の舞台をサンフランシスコに移して描いた本作はアメリカン・ニューシネマの名作であり、生涯の大事な1本に挙げる人も多い、歴史的にも重要な作品。第23回カンヌ国際映画祭審査員賞を受賞している。
なお、本作の公開年にはオハイオのケント州立大学で同じく反戦(米によるカンボジア侵略への抗議)デモを行っていた学生4人が州兵に射殺されている。この事件は数百万人規模の学生ストを引き起こし、結果的にベトナム戦争にも大きな影響を与えることとなった。
THIS DAY IN HISTORY: On May 4, 1970 the Ohio National Guard opened fire on unarmed college students during a war protest at Kent State University. Four students were killed, and nine others were injured. https://t.co/TLGt5DTUGs pic.twitter.com/tvpvYs5J2X
— ABC News (@ABC) May 4, 2020
ベビーブーマーからZ世代へ
60年代終盤の日本で学生運動に携わっていた“団塊の世代”の人々は現在75歳以上、つまり後期高齢者だ。50年代に隆盛を極めた日本の映画産業は70年代に入ると陰りが見えはじめ、大手制作会社も路線変更や吸収合併などを余儀なくされた(その流れの中で日活のロマンポルノも生まれた)。それでもご両親やご祖父母に当時流行っていた洋画について聞けば、先述した楽曲のヒットにより時間差で話題になったという、『いちご白書』の話も出てくるかもしれない。
そして2024年、いま全米各地の大学では再び反戦(反侵略/反虐殺)デモが行われ、日本でもここ十数年でふたたびデモ運動が浸透しつつある。その内容は当時と比べて非常に平和的だが、とくに日本ではプロテスト行為そのものを忌避する気運も高まっているように感じる。じわじわと刷り込まれた無関心の行き着く先には、いったい何が残っているだろうか。
『いちご白書』はCS映画専門チャンネル ムービープラス「黄金のベスト・ムービー」で2024年9月放送