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構想8年の執念が生んだ復讐アクション!「完璧じゃない」リアルな闘いを求めた『モンキーマン』の波瀾万丈すぎる誕生秘話【後編】

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ライター:#ギンティ小林
構想8年の執念が生んだ復讐アクション!「完璧じゃない」リアルな闘いを求めた『モンキーマン』の波瀾万丈すぎる誕生秘話【後編】
『モンキーマン』©2024 Universal Studios. All Rights Reserved.
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肉体改造でブルース・リーのような肉体を獲得

映画『モンキーマン』で主演&初監督を務めたデヴ・パテルは2014年頃から脚本を書いてはいたものの、当初は監督をする気はなかった。彼が出演した『チャッピー』(2015年)の監督ニール・ブロムカンプに監督を依頼しようと考えていたのだ。しかし、パテルから映画の構想を聞かされたブロムカンプは、「この映画のことは誰よりも君が一番理解している。だから、君が監督するべきだ!」と自身への依頼を断りながら、パテルの監督デビューを後押しした。

そして2018年、『モンキーマン』はパテルの監督・脚本・主演作として製作が決定。これまでにない獰猛な格闘シーンを撮るため、パテルは『ジョン・ウィック』シリーズの“ガン・フー”アクションをクリエイトしたスタントチーム<87eleven Action Design>に協力を依頼。そして撮影は2020年初頭からインドで行うことになった。さらに「復讐に燃える野性的な青年」という、従来のパテルのイメージからは想像もつかない主人公を演じるため、肉体改造も行った。

『モンキーマン』©2024 Universal Studios. All Rights Reserved.

「ブルース・リーの筋肉に、できるだけ近づこうと思ったんです」と語るパテルは9か月間/1日3回、サーモン、サツマイモ、レタスを食べ続けて、ホテルでレジスタンスバンドと自重トレーニングをして肉体を維持した。その結果、飢えた獣のようなシャープでしなやかな肉体のオーナーに変貌。その結果、風貌もソリッドになったパテルは、バキバキの眼をした手負いの狼のようになり、従来のソフトなイメージは跡形もなく消えた。これで撮影ができる!そう思った矢先……アクシデントが続いた。

まずは撮影の2週間前、アクションのトレーニング中にパテルが足の指を骨折。そしてインドでの撮影がはじまってすぐに、新型コロナウイルスのパンデミックにより国が封鎖。まだ撮影隊に合流していなかった<87eleven>のインドへの入国は不可能となってしまい、彼らなしで映画を撮影しなければならなくなった……。

『モンキーマン』撮影メイキング ©2024 Universal Studios. All Rights Reserved.

「パンデミックで撮影不可」の状況を打開したアクション監督兼スタントマンの存在

当時の状況についてパテルは、「ああ、もう終わりだ! スタントチームなしでどうやってアクション映画を撮るんだ!? と絶望的な気分になっていた」と振り返っている。しかし、「ハリウッドから望まれていないアクション映画の主演俳優になる」という無謀な道を選択した時点で、パテルに“あきらめる”という道はなかった。まずはインドでの撮影が不可能になってしまった代わりに、インドネシアの小さな島で撮影することを決めた。

さらに彼は「87elevenのクルー以外に『モンキーマン』のアクションを演出するのにふさわしいスタントマンはいないか?」と、YouTubeにアップされたスタントマンのデモ映像を片っ端からチェックした。その中にひとり、「こいつは只者じゃない……!」という男性を発見。フランス出身のアクション監督兼スタントマン、ブラヒム・ハブである。

1984年生まれのブラヒムは、『ニンジャ・アベンジャーズ』(2013年)ではアクション監督だけでなく、主演のスコット・アドキンスが撮影中に負傷した際には、彼に代わってアクロバティックなアクションを担当するスタントダブルもやった。その後、同じ監督&主演コンビによる格闘アクション映画『デッドロック 絶対王者ボイカ』(2016年)では主演のアドキンスと試合するUFCファイター役として出演。『ポリス・ストーリー/REBORN』(2017年)ではジャッキー・チェンのスタントチーム<成家班>の一員として参加。さらに、マーク・ダカスコス主演のB級映画『アンデッド・ドライバー 怒りのゾンビロード』(2019年)のアクション監督&武術指導などを務めてきた実力者だ。

ブラヒムの才能に惚れたパテルは、彼を説得。ブラヒムは当時、まだ国境が閉鎖されていないタイにいて、閉鎖の1日前にパテルたちと合流することができた。パテルはブラヒムに、ファイト・シーンの振り付けを担当するファイト・コレオグラファー(武術指導)としてだけでなく、劇中の地下格闘技場のシーンでモンキーマン(=主人公キッド)の対戦相手となる覆面ファイター、キング・コブラ役で出演することも依頼した。

次ページ:パテルの度を越した「アクションへのコダワリ」とは?
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『モンキーマン』

たった一つの小さな残り火が、すべてを燃やし尽くす。

幼い頃に母を殺され、人生の全てを奪われた〈キッド〉は、夜な夜な開催される闇のファイトクラブで猿のマスクを被り、〈モンキーマン〉を名乗る“殴られ屋”として生計を立てていた。
どん底で苦しみながら生きてきた彼だったが、自分から全てを奪ったヤツらのアジトに潜入する方法を偶然にも見つける――。

何年も押し殺してきた怒りを爆発させたキッドの目的はただ一つ「ヤツらを殺す」。
【復讐の化神〈モンキーマン〉】となった彼の、人生をかけた壮絶なる復讐劇が幕を開ける!


監督・脚本・主演:デヴ・パテル 
プロデューサー:ジョーダン・ピール(『ゲット・アウト』『NOPE/ノープ』)、バジル・イワニク(『ジョン・ウィック』シリーズ)、エリカ・リー(『ジョン・ウィック』シリーズ)

制作年: 2024