アンパンマンが出てこない世界でバイキンマン＆ドキンちゃんが暴れます　悪いことしたいから世界を救う！『スーサイド・スクワッド』

主役はバイキンマン＆ドキンちゃん！？

DC映画人気を日本で広めるきっかけになった作品が『スーサイド・スクワッド』でしょう。アメコミ映画史上、ヒーローではなく悪役（ヴィラン）が主役という画期的な映画でした。

例えるなら、アンパンマンが出てこない世界でバイキンマンとドキンちゃんが主役の映画です。そしてスーパーマンやバットマンの映画が暗めで重かったのに対し（そこがまた魅力なんですが）、本作は明るくてポップなテイストが魅力です。それを担っているのが、マーゴット・ロビー演じるハーレイ・クインとジャレッド・レト演じるジョーカーです。

ストーリーは、政府が収監されている悪党たちを集め、減刑と引き換えに危険なミッションを遂行させることを思いつきます。集められたのは凄腕のスナイパー、デッドショット（ウィル・スミス）をはじめ、火炎人間、ワニ人間、殺人ブーメラン使い、魔女、仮面の日本人女剣士カタナ（福原かれんさんが演じてます。かっこいい！）、そしてマーゴット・ロビー演じるキュートすぎるサイコ美女、ハーレイ・クイン。インパクト強すぎ！ 愛すべきとんでもない奴らです。

「タスク・フォースX」という正式なチーム名があるのですが、あまりに危険な汚れ仕事を引き受けるから、この任務は“自殺行為”ということで「スーサイド（自殺）・スクワッド（部隊）」と呼ばれるわけです。実はこのコミックはかなり昔からあって、スーパーヒーローではない軍人たちが怪物やらエイリアンたちと戦う、みたいな話でした。つまり“ヒーローでない者たちvs超常な敵”というシリーズだったのですが、いつからか“ヒーローでない者たち”の部分が、ヒーローとは真逆のヴィラン（悪党）たちとなったのです。

これが可能になったのは、DCコミックはもともとヒーロー以上にヴィランが人気だったりします。というのも、DCコミックのDCはディテクティブ・コミック（探偵・刑事コミック）の略なので、必然的に犯罪者と戦う話が多い。バットマンは、その最たるものですよね。いかに魅力的なヴィランを登場させるか？ということを大事にしてきたからかもしれません。

ヴィランなりに、この世界を愛している

この作品は、予備知識なく「スゴい悪党たちが集められて、とんでもない敵と戦わされる」ということだけ分かっていれば十分楽しめます！ とはいえ、アメコミ好きにはバットマンの他に、あるヒーローがカメオ的に登場しているので、そこも必見です。

デッドショットを演じるウィル・スミスが、「アメコミ映画はヒーローvsヴィラン、つまりグッドvsバッドの話が多いのですが、これはグッドvsイビル（邪悪）の戦いだ」と言っていました。これは大きなポイントで、“ヴィランたちは悪さはするけれど、彼らなりにこの世界を愛している”ということなのです。この世界が無くなってしまったら、悪さだって出来ないわけだから（笑）。だから世界を滅ぼそうとする奴は絶対に許せない。ヴィランたちが自分たちの流儀・哲学でこの世界を守ろうとする姿にちょっと胸が打たれますよね。この辺が今大ヒット中の『ヴェノム』にも通じるものがあります。

『スーサイド・スクワッド2（仮題）』の企画も進行しており、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズのジェームズ・ガン監督が脚本を書いており、さらに彼が監督するとの噂もあります。これからが楽しみ、付き合っておいて損のない快作です。

文：杉山すぴ豊

『スーサイド・スクワッド』はCS映画専門チャンネル ムービープラスにて2018年12月29日(土)17：00～放送
『スーサイド・スクワッド【日本語吹替版】』はCS映画専門チャンネル ムービープラスにて2018年12月3日(月)18：45～放送