音楽から辿るシュワルツェネッガー映画の変遷
8~9月はCS映画専門チャンネル ムービープラスで、“『ターミネーター2』以降”のシュワルツェネッガー主演作3タイトルが放送される。それぞれ音楽の聴きどころを簡単にご紹介していこう。
いかにも90年代らしい大作『イレイザー』
1990年代は肉体派スターによるアクション映画が比較的コンスタントに制作されており、シュワルツェネッガーが『ラスト・アクション・ヒーロー』(1993年)、『トゥルーライズ』(1994年)に続いて主演したのが『イレイザー』(1996年)だ。
本作では『プレデター』(1987年)などで知られる作曲家アラン・シルヴェストリが久々にシュワルツェネッガー映画の音楽を担当し、大編成のフルオーケストラサウンドとヒロイックなメインテーマ、ここぞというときに挿入されるエレクトリックギター・ソロで「シュワ無双」を盛り上げた。エンドクレジットでトレヴァー・ラビンの歌曲「Caught A Train」と、ヒロインを演じたヴァネッサ・ウィリアムズの主題歌「Where Do We Go From Here」が流れるのも、いかにも1990年代の大作映画といった趣がある。
悲劇の主人公がテロと戦う『コラテラル・ダメージ』
2000年代に入ると、アクション映画は演技派俳優が主演を務めるのがトレンドとなった。そんな中、肉体派スターの草分け的存在であるシュワルツェネッガーは、テロリズムを題材にしたアクションスリラー『コラテラル・ダメージ』(2001年)で「爆弾テロで妻子を失った消防士」という悲劇の主人公を演じて新機軸を打ち出した。
音楽はインダストリアル/ノイズミュージック・グループ「SPK」の創設メンバーで、『クロウ/飛翔伝説』(1994年)や『ピッチブラック』(2000年)などダークな作品を得意とする作曲家のグレーム・レヴェルが担当。物語の舞台となる南米の熱気を感じさせるリズムと、ザラついた電子音を使った緊張感あふれる劇伴を作曲した。これまでのシュワルツェネッガー映画で聴かれたような勇壮な音楽ではないが、この重苦しいサウンドは「目的を果たすためのやむを得ない犠牲」という、物語のシビアな主題を反映させた結果と考えられる。
盟友スタローンと本格共演を果たした『大脱出』
2011年1月3日にカリフォルニア州知事の任期を終え、シュワルツェネッガーが俳優業に復帰した頃、アクション映画界は俳優/スタッフの世代交代が進み、以前とは状況が大きく変わっていた。同期のライバルにして盟友のシルヴェスター・スタローンとの本格的なダブル主演作となった『大脱出』(2013年)では、牢名主的な大物囚人を貫禄たっぷりに好演した。
音楽は『消されたヘッドライン』(2009年)で知られる英国出身の作曲家アレックス・ヘッフェスが担当。重厚なオーケストラ演奏にエレクトリックギターと打ち込みのリズムを組み合わせたハイブリッドな劇伴を作曲し、スタローン×シュワルツェネッガーのタッグによる脱獄アクションにスピード感と重量級の迫力をもたらした。
今回ご紹介した1990年代、2000年代、2010年代のシュワルツェネッガー主演作を音楽の変化に注目しながら再鑑賞すると、作品のテーマや演じたキャラクターの違いがより深く理解できるようになって面白いのではないかと思う。
文:森本康治
『ターミネーター2』は2024年8月23日(金)より2週間限定リバイバル上映
『イレイザー』『コラテラル・ダメージ』『大脱出』はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2024年8~9月放送