「チョン・ウソンさんは、とても思いやりがある人」
ファン・ジョンミン演じるチョン・ドゥグァンと対立するのは、イ・テシン(チョ・ウソン)。軍人としての使命感と信念に従って行動する首都警備司令官だ。『アシュラ』でも“名勝負”を演じた2人は、今回も観客の目を釘付けにしてみせる。ファン・ジョンミンも、チョン・ウソンに最大級のリスペクトを抱いているようだ。
チョン・ウソンさんはとても思いやりがある人で、『アシュラ』でご一緒した時も現場の雰囲気がとてもよかった。その時から「ぜひまた一緒にやりましょう」と話していたので、今回『ソウルの春』で再会できたのは非常に嬉しかったです。
善人が1人も出てこない血みどろノワール『アシュラ』の現場が「雰囲気がよかった」というのも面白い話だが、『ソウルの春』では闘いの構図がより重みを増した印象がある。
「俳優の本分に忠実であるべく努めました」
史実が基になっているから、物語は“ある結末”に向かって進むしかない。その中でキム・ソンス監督はリアリズムを練り直し、男たちの激突がもたらす熱を高めていく。保身に走る者もいれば、あくまで任務に忠実な者も。
観客は憤りを覚えるし、一方で登場人物のヒロイズムに感情移入もする。クライマックスからラストに至る怒涛の展開には圧倒されるしかない。血が滾り、魂が震える感覚は今年一番。
自国の歴史、その暗部にも向き合う韓国映画の矜持にも胸を打たれるし、そんな映画が年間ナンバーワンヒットとなったことも重要だろう。本当に観客にウケるのは“ウケる要素”を詰め込んだ映画ではないのだ。
最後にもう一つ、ファン・ジョンミンの言葉を紹介したい。
スクリーンの中に見る者を引きずり込み、物語をスムーズに展開させることこそが俳優の役割です。私もまた、その本分に忠実であるべく努めました。
間違いない。この映画を見たら、どの国の人間でも否応なしにスクリーンの中に引きずり込まれるのだ。
『ソウルの春』は2024年8月23日(金)より新宿バルト9ほか全国ロードショー
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『ソウルの春』
1979年10月26日、独裁者とも言われた大韓民国大統領が、自らの側近に暗殺された。国中に衝撃が走るとともに、民主化を期待する国民の声は日に日に高まってゆく。しかし、暗殺事件の合同捜査本部長に就任したチョン・ドゥグァン保安司令官(ファン・ジョンミン)は、陸軍内の秘密組織“ハナ会”の将校たちを率い、新たな独裁者として君臨すべく、同年12月12日にクーデターを決行する。一方、高潔な軍人として知られる首都警備司令官イ・テシン(チョン・ウソン)は、部下の中にハナ会のメンバーが潜む圧倒的不利な状況の中、自らの軍人としての信念に基づき“反逆者”チョン・ドゥグァンの暴走を食い止めるべく立ち上がる。
監督:キム・ソンス
脚本:ホン・ウォンチャン、イ・ヨンジュン、キム・ソンス
出演:ファン・ジョンミン、チョン・ウソン、イ・ソンミン、パク・ヘジュン、キム・ソンギュン、チョン・マンシク、チョン・ヘイン、イ・ジュニョク
制作年: | 2023 |
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2024年8月23日(金)より新宿バルト9ほか全国ロードショー