配信主より自己主張が激しい悪霊たちの恐怖!
本作は“ホラー展開の開始”以前から、映像に映り込む様々な小ネタや配信視聴者コメントに対するショーンのリアクション等々で、観客をニヤニヤさせてくれる。この一連の流れがあまりにも面白いので、ホラー映画は苦手でも潜入~実況モノ配信が好きな人ならば、もしくはその逆という人も、絶対に観る価値アリ。POVホラーゲームなんかが好きな人も楽しめるだろう。映画らしいヒーロー性が皆無の主人公ショーンには思わず感情移入してしまうし、散々こすられたはずのファウンド・フッテージ映画の新たな可能性をも提示している。
そして肝心のホラー描写だが、ぼんやりした何かがほんのり画面を横切ったとかいうレベルではない、サービス精神旺盛すぎる異形のアレコレがハッキリ・クッキリ登場する。その“前に出てくる感”たるや、動画配信主よりも自己主張が強い。ファウンド・フッテージが粗い映像だったのは一昔前、いまや個人所有のカメラもハイビジョン対応なのだ。とはいえホラーコメディと思ってナメていると失禁しかねない怖さなので、中盤以降はしっかり身構えておこう。
ホラー映画マニアが跳んで喜ぶ? 名作オマージュも
本作を観たホラー映画ファンがまず想起するのが、サム・ライミ監督の『死霊のはらわた』(1981年)ではないだろうか。森の中のボロ家で起こる怪異という設定からして『はらわた』風味が充満しており、登場する「×××」たちの造形もレトロかつグロい。そして、マニアなら知っている具体的なオマージュも……?
『はらわた』よろしく恐怖展開の中でもユーモアたっぷりなので、例えばティーンエイジャーのホラー映画デビューにも最適だろう(余計なセクシー描写なども一切ないのが◎)。ただし文字通りのジャンプスケアもバッチリ用意されているので、お化け屋敷感覚で鑑賞するのも一興だ。このあたりにも、POVならではの没入感が効いている。
「将来の夢は◯ou◯uber!」なんて言われて頭を抱えている親御さんには、ぜひご家族での鑑賞をオススメしたい本作。まさに「ライブストリーム」から「デッドストリーム」へと化す様は、進路希望変更待ったなしの恐ろしさだから。
『デッドストリーム』は2024年8月16日(金)より新宿シネマカリテほか全国順次公開