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「僕たちは、みんな負け犬」ジョーダン・ピールが“全力で推す”デヴ・パテル初監督作『モンキーマン』激レアインタビュー

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ライター:#BANGER!!! 編集部
「僕たちは、みんな負け犬」ジョーダン・ピールが“全力で推す”デヴ・パテル初監督作『モンキーマン』激レアインタビュー
『モンキーマン』©2024 Universal Studios. All Rights Reserved.
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デヴ「めちゃくちゃ大変でしたよ(笑)」

―初めて監督に挑戦する俳優には、手に負えなくなるかもしれないから主演はしたくないという人もいます。あなたは主演だけでなく、激しいアクションもたっぷりやっていますね。そこまで背負うことに迷いはありましたか?

デヴ:そうなることは早くからわかっていました。このプロジェクトは僕が10年以上温めてきたもの。僕自身が主演するのでなければ、お金も集まらず、実現はしないとわかっていたんです。それに、僕自身がやることで、自分の持つビジョンをある程度守れるという意味もありました。

僕が語りたかったのは、真のアンダードッグ(※負け犬/噛ませ犬)の話。しかも、それは僕のような見た目の人たちです。このジャンルに欠けているのは、そこ。僕みたいな人は出てきませんし、出てきたとしても笑いを取るための脇役です。僕は、僕自身のカルチャー、神話、祖先、そしてジョーダンの作品も含め、僕が観てきた大好きな映画の要素を盛り込んだ映画を作りたいと思いました。それが僕のミッションだったんです。

『モンキーマン』©2024 Universal Studios. All Rights Reserved.

―あなた自身はすでに有名な俳優です。しかし、他に有名なハリウッドスターが出演していないことで資金集めや、実現にこぎつける上で苦労されたのでしょうか?

デヴ:苦労はそれだけではありませんでした。僕たちはパンデミックにも直面したんです。新型コロナウイルスについて聞いた時、僕たちはインドで最も大きなスラム街にいました。そしてその週の終わりには、街から誰もいなくなってしまったんです。まるで『28日後…』(2002年/監督:ダニー・ボイル)みたいな光景でした。みんな去っていきました。僕は文字通り、最後の日の最後の(飛行機の)席を取りました。その段階で、この映画は死んでしまいました。

しかし僕たちは、インドネシアに自分たちだけの小さな“バブル”を作って撮影する方法を見つけたんです。僕はそこに行ったことがありませんでしたが、(クルーやキャストを不安にさせないように)なんでも知っているふりをして、「これはうまくいくんだ」と見せかけるようにしました。この映画を生むために、なんでもやろうとしたんです。でも、そういった制限や苦労は、本作にふさわしいエッセンスをプラスしたように思っています。

『モンキーマン』撮影メイキング ©2024 Universal Studios. All Rights Reserved.

ジョーダン:「すごく大変だったに違いない」と感じさせることも、この映画のアイデンティティの一部だと思います。

デヴ:ええ、めちゃくちゃ大変でしたよ(笑)。

ジョーダン:それを感じるよ。このすばらしい映画を作るために、君が乗り越えたものを僕は感じた。

今日では、自分の心を守るためにも、楽な道を選ぶことがあります。でも、彼はものすごくたくさんの努力をした。特別なものを作るのに、10年かかることが、時にはあるんです。

『モンキーマン』©2024 Universal Studios. All Rights Reserved.

デヴ:あなたが『ゲット・アウト』を作るのには、どれだけかかりましたか?

ジョーダン:(ゴーサインをもらうまでに)8年かかったよ。それから実際に製作するのに、また2年。

僕とデヴは、人生の同じようなところにいたんだと思います。僕たちはどちらも、「そんな映画が作られることはありえない」と言われてきたような映画を作ってみせる、と決めたんです。それには時間がかかります。そして、戦い続けなければいけません。この2本の映画には、それが見て取れると思います。ですが、それは同時にこれらの映画に自由を与え、他と違うものにしたんです。

デヴ「僕たちは、みんな負け犬なんです」

―インド神話のハヌマーンをテーマに入れてくることは、最初から決めていたのですか?

デヴ:そうです。これはある意味、宗教へのリベンジを語るものです。宗教は時に武器として利用され、大衆を扇動することがあります。でも同時に、それは美しいものでもありえます。森の中にいる教養のない少年が、道徳、善のために戦うこと、強さといったことなどを学ぶ。宗教は、そんな多くの違ったものを持つんです。

『モンキーマン』©2024 Universal Studios. All Rights Reserved.

さらに、その神話は、スーパーマンをはじめとするコミックなど、僕がイギリスで遭遇したものに、実は驚くほど似ています。たとえば胸を開いてみせるとか、空を飛べるとか、大きな山を動かせるとか。僕の育った文化のクールな部分をみなさんに見て欲しかったんです。それをアクションのジャンルで、優れたアクション映画として、やる方法があるはずだと思いました。『ブルース・リー/死亡遊戯』(1978年)や『ザ・レイド』(2011年)、『ジャッジ・ドレッド』(1995年/2012年)みたいな感じで。

これは、上に大きなボスがいるところで、下から這い上がろうとしている人の話。インドにおいて、それはカースト制度を象徴もします。貧しい人が底辺にいて、最上部には誰も何も言えない神のような人がいる。ひとりの男が、その人物に迫ることはできるのでしょうか? ほぼ不可能です。

『モンキーマン』©2024 Universal Studios. All Rights Reserved.

―それは国境を越えて通じることです。悲しいことに、今の世界では貧富の差がどんどん開いていますし、宗教を武器のように使うということも見られます。だからこの映画も共感を得ているのではないでしょうか。

デヴ:そうであってほしいと思います。それ以外にも、間違いをたくさんおかすヒーローにも(共感できるのではないか)。彼(主人公のキッド)はいつも正しい答えを持っているわけではありませんし、自分の感情にきちんと向き合うこともできません。そこは、このキャラクターの大きな部分です。

僕たちは、みんな負け犬です。ひとつの部屋に人がたくさんいたとしても、みんなそれぞれに乗り越えなければならない何かを抱えているもの。それは国境を越えたテーマです。

『モンキーマン』©2024 Universal Studios. All Rights Reserved.

ジョーダン:これは心の旅の物語。彼は自分のエゴを捨てなければなりません。単なる個人的な仕返しをしようというところから始まった彼は、最後、みんなのためにもっと大きな意味での復讐をすることになります。

これがスーパーヒーローのストーリーになっていくところが、僕は好きです。ハヌマーンとスーパーマンのつながりについては考えませんでしたが。胸を開くとか、空を飛ぶとか。

デヴ:ですよね。そう、そういうこと全部が、実は共通しているんです。

ジョーダン「国境を越えて、すべての観客が共感できるものを作りたい」

―アクションシーンがたっぷりありますが、他と差別化するためにリサーチをしたりしたのでしょうか?

デヴ:リサーチをしたとは言えませんが、僕はもともとアクション映画が大好きで、骨にまで染みています。それにUFCやボクシングなど、スポーツも好きです。僕は、事前にしっかり動きをデザインしてやった、みたいなアクションにはしたくないと思っていました。『モンキーマン』というタイトルにふさわしいアクション、檻に閉じ込められた動物のようにするためには、どうしたらいいかと考えました。

彼は生き延びるために戦います。自己防衛のために戦っている時、それは小綺麗であってはいけない。醜くないと。汗がいっぱい出て、血が出て、唾も出て、まずい方向にも行ってしまう。これはそういう男なのだから。僕は動物的な感じがある映画にしたいと思ったんです。

『モンキーマン』©2024 Universal Studios. All Rights Reserved.

―あなたたちは、これからどんな映画を作っていきたいですか?

ジョーダン:僕が先に答えましょう。僕は、どんな感情に対しても扉を閉ざしたくはありません。国境を越えて、すべての観客が共感できるものを作りたいと思います。人を笑わせ、泣かせ、喜ばせ、叫ばせるようなものを。

デヴ:また映画を監督させてもらえる幸運を得ることがあればの話ですが。それがあるかどうかわからないけれども、彼(ジョーダン)の答えを拝借させてもらいます。ジャンルにこだわりません。僕が好きなのは“物語”です。心を惹かれている事柄は、いくつかありますよ。

『モンキーマン』撮影メイキング ©2024 Universal Studios. All Rights Reserved.

『モンキーマン』は2024年8月23日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国公開

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『モンキーマン』

たった一つの小さな残り火が、すべてを燃やし尽くす。

幼い頃に母を殺され、人生の全てを奪われた〈キッド〉は、夜な夜な開催される闇のファイトクラブで猿のマスクを被り、〈モンキーマン〉を名乗る“殴られ屋”として生計を立てていた。
どん底で苦しみながら生きてきた彼だったが、自分から全てを奪ったヤツらのアジトに潜入する方法を偶然にも見つける――。

何年も押し殺してきた怒りを爆発させたキッドの目的はただ一つ「ヤツらを殺す」。
【復讐の化神〈モンキーマン〉】となった彼の、人生をかけた壮絶なる復讐劇が幕を開ける!


監督・脚本・主演:デヴ・パテル 
プロデューサー:ジョーダン・ピール(『ゲット・アウト』『NOPE/ノープ』)、バジル・イワニク(『ジョン・ウィック』シリーズ)、エリカ・リー(『ジョン・ウィック』シリーズ)

制作年: 2024