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インド映画界、怖すぎ!裏社会と俳優との密接な関係『SANJU/サンジュ』は実録映画

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ライター:#松岡環
インド映画界、怖すぎ!裏社会と俳優との密接な関係『SANJU/サンジュ』は実録映画
『SANJU/サンジュ』©Copyright RH Films LLP, 2018
『きっと、うまくいく』や『PK ピーケイ』で日本でもお馴染みのラージクマール・ヒラニ監督の最新作『SANJU/サンジュ』が、2019年6月15日(土)から公開される。ヒラニ監督は毎回ユニークな題材を面白い切り口で取り上げることで有名だが、今回の主人公は実在の俳優サンジャイ・ダットだ!

インドの現役大物俳優・サンジュの波乱万丈すぎる実録映画!

現在59歳のサンジャイ・ダットは、日本でも主演作『サージャン/愛しい人』(1991年)がNHKで放映されたこともある大物男優。彼のニックネーム“サンジュ”がタイトルになっていることからもわかるように、サンジャイ・ダット(以下、サンジュ)の成人後、約40年を描く実録ムービーなのである。

『SANJU/サンジュ』©Copyright RH Films LLP, 2018

『SANJU/サンジュ』の物語は2013年から始まる。この時のサンジュ(ランビール・カプール)は、1993年に犯したテロ破壊活動罪と武器不法所持罪で起訴され、最高裁の判決を待っているところだった。テロ罪の方はえん罪と認められそうだが、武器不法所持罪だけでも数年は刑務所入りだ。

収監される前に何とか世間に真実を知ってもらおうと、伝記を書いてくれる作家を探していたサンジュは、妻(ディア・ミルザ)の勧めで著名な伝記作家ウィニー(アヌシュカ・シャルマ)と会い、自分の来し方を語り始める。

『SANJU/サンジュ』©Copyright RH Films LLP, 2018

サンジュの父は有名俳優・監督で、後に国会議員にもなるスニール・ダット(パレーシュ・ラーワル)。母は50年代を中心に活躍した、その時代を代表する女優ナルギス(マニーシャー・コイララ)。幼い時から寄宿学校に入れられたサンジュは、その反発もあって、十代から酒にタバコ、ついにはクスリにまで手を染めるドラ息子となる。1981年、21歳の時に父の監督作でデビューするも、映画の公開直前に母ナルギスはガンで死亡。サンジュはその後もクスリとは縁が切れず、ついにはアメリカの更正施設に送られる。

『SANJU/サンジュ』©Copyright RH Films LLP, 2018

帰国して、やっと仕事が順調に回り始め、スターの座も獲得したと思ったら、次に始まったのは女性遍歴の問題。本作では差し障りがあるためか(何せ最初の恋人は、現在はインド大財閥会長の妻なのだ)、代表して恋人ルビー(ソーナム・カプール)が出てくるだけだが、ウィニーと会った時に聞かれてサンジュが答えたのは、「寝た女は……350人かな、プロを除いて」というもの。数も数だが、いちいち律儀に相手を憶えているのにもあきれる。

『SANJU/サンジュ』©Copyright RH Films LLP, 2018

そして、1992年暮れから1993年にかけての、インドにおけるヒンドゥー教徒とイスラム教徒の衝突事件の中で、サンジュは逮捕される。この頃すでに国会議員だった父スニール・ダットは、衝突事件で被害を受けた人を宗教の別なく救済していたのだが、それに対して「イスラム教徒の味方をしやがって、殺してやる」という脅迫電話などがたびたび来るようになった。身の危険を感じたサンジュは、こっそり武器(銃:AK-56)を手に入れる。だがそれは、ムンバイでの大規模爆破事件を裏で画策したとされるインド人マフィア、タイガー・メモンに繋がる人物からだった……。

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『SANJU/サンジュ』©Copyright RH Films LLP, 2018

このように、サンジュはとんでもなく破天荒な俳優なのだが、なぜか今も人気俳優の座に君臨。本作の監督を務めたヒラニの監督デビュー作品『Munna Bhai M.B.B.S.(医学生ムンナー・バーイー)』(2003年:原題)でもサンジュを主演に起用し、ヒットさせている。

本作『SANJU/サンジュ』では、厳しくも暖かい父親の愛情、親友カムレーシュ(ヴィッキー・コウシャル。本作中では1人だが、いろんな友人を落とし込んだキャラらしい)の友情、そして現在の妻の支えを描いており、さらにボリウッド映画界の中心にいる人物の評伝だけあって、映画界の歴史を描いたものにもなっている。

中でも“裏面史”というか、ムンバイの裏社会と映画界との関わりを見せてくれるシーンがいくつかあるのは、非常に興味深い。その第一は、父スニール・ダットが母ナルギスと結婚する時のエピソードだ。スニール・ダットはヒンドゥー教徒、ナルギスはイスラム教徒なので、イスラム教徒のインド人マフィアに呼び出され、「俺たちの憧れの女優をヒンドゥー教徒がかっさらうなど許せん」と脅されたという。そこをどう切り抜けて結婚にこぎつけたかは映画を観てほしいが、彼らが結婚した1958年当時、すでに裏社会が映画界に影響力を持っていたことがわかる。

『SANJU/サンジュ』©Copyright RH Films LLP, 2018

そして、前述のサンジュが武器を手に入れるいきさつも、裏社会と俳優との密接な関係を示している。さらに、インド人マフィアの大物の1人から、サンジュが祭りに呼びつけられるものの、父スニール・ダットの助言でそれを断りにいくシーンも出てくる。実は1990年代後半、インド人マフィアは映画界の大物にみかじめ料(保護費)を要求して、払わない人間は見せしめのため撃ち殺したりする事件を起こしていた。大手音楽出版の社長で、映画製作も手がけていたグルシャン・クマールが射殺されたのが1997年、リティク・ローシャンの父ラーケーシュ・ローシャンが狙撃されたのが2000年で、後者は「見せしめのためで、殺さないように撃った」と当時、大きな話題になった。

本作では、サンジュの父が毅然と裏社会勢力に対峙し、サンジュも勇気を出して彼らと手を切るシーンが描かれるが、これはヒラニ監督の強いメッセージとも読める。様々な「ボリウッド40年史」も詰まった『SANJU/サンジュ』、ランビール・カプールのサンジュなりきりぶりや、今人気沸騰中の男優ヴィッキー・コウシャルにも注目して、楽しんでほしい。

文:松岡 環

 

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『SANJU/サンジュ』

“サンジュ”、それは現在もインドで絶大な人気を誇るボリウッドの国民的スター、サンジャイ・ダットの愛称。彼の半生は、まさに“映画より奇なり”。父は名優で名監督、母は大女優という映画界のサラブレッドとして生まれた彼は、25歳で主演デビューを果すといきなり大ヒットを連発してトップスターに。だが、その重圧から彼はドラッグに溺れ、次々と悲劇と試練に襲われる。最愛の母の死、運命の恋人との別れ、銃の不法所持による逮捕、テロ関与の冤罪、刑務所での地獄の日々…、それでもサンジャイは不屈の闘志で、何度でも立ち上がる!!

制作年: 2018
監督:
出演: