「僕は、ちょっと前まで普通の会社員だったんだ」
―前作よりもシリアスなストーリーではありますが、コメディ要素もふんだんにあります。「フレディ」という子供も登場しますし、『エルム街の悪夢』(1984年)のような楽しいホラーを普段から意識されているのでしょうか?
ホラー映画はシリアスでダークな作品が多いけれど、自分は「楽しい」ホラーが好きだからね。映画館で楽しめることを常に意識しているね。君が言ったとおりフレディは、『エルム街の悪夢』のフレディ・クルーガーから拝借したものだよ。大好きな作品だからね。最近は『テリファー』(2016年)のアート・ザ・クラウンがお気に入りなんだ。ホラーとコメディのバランスがいい作品だよね。
―監督の過去作である『Firenado』(原題:2023年)や『エイリアン・インシデント エリア51壊滅』(2022年)からも、その姿勢が見えます。しかし、ホラーコメディは批評家から理解されないことが多いですよね。
自分の話になってしまうけれど、僕はちょっと前まで普通の会社員だったんだ。でも、ある日「映画を撮りたい!」と思って、この業界に飛び込んだ。それから、とにかく映画を作りまくったよ。そして君の言ったとおり、僕の映画のウケは悪かった(笑)。
でもね、それはホラーコメディというジャンルだったからではなくて、予算などの制限でやりたいことが巧くできなかったと考えているんだ。だって1作あたり3000~4000ポンド(※60~80万円)だよ? イギリスでは学生映画のような予算だから、どうしても……ね?(笑)。でも、『プー2』では予算も増えたし、次に予定されている『プーニーバース(Poohniverse: Monsters Assemble)』では、さらに増える。批評家も楽しんでくれるんじゃないかな。
Everything is leading to this.. POONIVERSE: MONSTERS ASSEMBLE hits theatres 2025 pic.twitter.com/osco2W8lfw
— Winnie-the-Pooh: Blood and Honey 2 (@poohbandh) March 18, 2024
「“殺人鬼アベンジャーズ”みたいなことをやりたいね!」
―『プーニーバース』では、再び権利切れキャラクター祭りの開催を期待しています。『プー2』ではオウルがやたらと偉そうで、プーと仲が悪そうでしたが、もしかして『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016年)的な展開もあり得るのでしょうか?
ティガーはサディスティックだし、ピグレットはドジっ子、アウルはインテリ、プーはピュアな殺人鬼の集合体という感じで、彼らには明確な性格付けをしているんだ。だから当然ウマがあわず喧嘩することもある。
今作でティガーの顔に傷があることに気がついたかな? 実はティガーとプーは、過去に喧嘩していたという裏設定があるんだ。これからバンビとかピノキオを加えていくんだけど、どうしていこうかな……。
―<The Twisted Childhood Universe>でアナウンスされているキャラクターですね!「ポパイ」や「ベティーブープ」はいかがですか?
「ポパイ」については、もう案があるんだ!(マッチョで黒いポパイの画像が送られてくる)。彼はね、先天性的な理由で腕の筋肉が異常発達しているという設定だよ。その常軌を逸した力で、人の頭を引き抜いたり、壁をぶち壊したりするんだ(笑)。「ピノキオ」の映画はもうすぐクランクインするんだけど、『チャイルド・プレイ』(1988年)の製作をしていたスタッフが協力してくれるんだ。
Pinocchio Unstrung will start filming this summer and is aiming for a January 2025 release date! pic.twitter.com/9n94bBucIX
— Twisted Childhood Universe News (@TTCUNews) May 17, 2024
―そんなにお仕事をされていて、大丈夫ですか?
無理(笑)。昔は年に20本とか撮っていたけど……。みんなが<The Twisted Childhood Universe>を楽しみにしてくれるのはうれしいよ。でも『プー2』のように予算も増えたら、やっぱりじっくり作りたいし、昔より注意深くなったからね!
―『プー』の成功の理由は、やはりキャラクターのインパクトだと思います。先ほどフレディ・クルーガーやアート・ザ・クラウンの名前が挙がりましたが、そういったキャラ立ちの良い殺人鬼がお好みですか?
80年代のスラッシャー映画が大好きなんだ。何が好きって、アイコニックな殺人鬼の存在があるからだと思う。それこそ、ジェイソンやフレディがお気に入りだから。今の殺人鬼って少し説教くさくない? それはそれでいいんだけど、やっぱり「楽しめる」を最優先にしたいから、キャラが立っていたほうが楽しい。だからプーも同じアイコニックであるようにしたんだ。さっきも言ったけれど、プーはジェイソンやマイケル・マイヤーズ、ピグレットはレザーフェイス、といった具合だね。
―<The Twisted Childhood Universe>は、80年代のスラッシャーキャラを集合させたイメージですか?
そうありたいと思っているよ。殺人鬼の共演は、今のところ『フレディVSジェイソン』(2003年)しか実現していないからね。ユニバースのキャラに80年代スラッシャーのアイコンを重ねて、“殺人鬼アベンジャーズ”みたいなことをやりたいね!
……前作『プー あくまのくまさん』の成功により、ホラー映画ファンの夢のアベンジャーズ企画が立ち上がるまでに至った『プー』シリーズ。リース監督は「忙しすぎて、どこにどうスケジュールを入れていいのかわからない! 無理!!」と笑顔で答えてくれたが、<The Twisted Childhood Universe>シリーズの予定を観ると、毎年2本は作る予定になっている。本当に映画を撮ることが好きな監督なのだ。ぜひ彼には体を壊すことなく、「クールで楽しい」ホラー映画をファンに届け続けてほしい。
取材・文:氏家譲寿(ナマニク)
『プー2 あくまのくまさんとじゃあくななかまたち』は2024年8月9日(金)より新宿ピカデリーほか全国公開
『プー2 あくまのくまさんとじゃあくななかまたち』
前作の惨劇を生き延びたクリストファー・ロビンは、少年時代を過ごした町アッシュダウンに舞い戻り、トラウマに苦しみながら治療を続けていた。しかし町の住人の多くはクリストファー・ロビンを犯人だと疑っていた。ロビンが呪われたプーの秘密を解き明かす一方で、森の奥深くに潜んでいたプーと邪悪な仲間たちは、さらなる餌食を求めてアッシュダウンの町に襲いかかる――。
制作年: | 2023 |
---|
2024年8月9日(金)より新宿ピカデリーほか全国公開