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“倫理を逸脱した食人映画”の真意
「うん。確かにグロテスクだが、さっぱりわからん!」――大半の観客は、こんな感想を抱くのではないだろうか?
『Kfc』の触れ込みは“倫理を逸脱した食人映画”といったものだ。それは間違っていない。舌や腋を切り落としムシャムシャと食べ、吐瀉物をがぶ飲みし、仇の首を切り落としホルマリン漬けに、さらに轢き殺した相手を屍姦。映像化できる人体陵辱を片っ端からやってのける。
しかし、本作のメインはベトナムの裏社会と復讐の連鎖を描くことにあり、残酷描写は不可抗力による付随物のようだ。
とはいえ当然、登場人物たちも、振り切ったイカれっぷりを見せる。とりわけ本作のイメージキャラにもなっている、夜な夜なニセの救急車を駆り人を轢き殺しては人肉を調達しているエセ医者と、その息子の印象が強烈。彼らの行動もさることながら、そのビジュアルも凄まじい。とりわけ極度な肥満体型の息子の食欲魔神っぷりが脳裏にこびりつく。
彼らの所業はあらゆる復讐の連鎖を生み、終わらない暴力社会が浮き彫りとなっていく――。
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