『ジョーズ』オマージュも!サメ映画愛好家がニヤリとするパニック演出
市長の万巻が主導する複合型巨大観光施設の建設が進むS県暑海(あつみ)市では、温泉客が忽然と姿を消す連続失踪事件が発生していた。しかも被害者はその後、海でサメに襲われた遺体として発見されるのであった。捜査に乗り出した警察署長、束(つか)と海洋生物学博士の巨勢(こせ)は、太古の昔から蘇った獰猛なサメが暑海各地の温泉を自由に行き来し、人々を襲っているという驚愕の事実を突き止めるのだが……。
ジャンル映画としてのパロディ要素も非常に多く、「観光地の権力者が判断を誤ったせいで被害が広がる」という序盤の脚本構成は、定番の初代『JAWS/ジョーズ』(1975年)フォーマット。クライマックスでサメにとどめを刺す際の決め台詞、「くたばれ化け物!」も、もちろん『ジョーズ』からの引用だ。
その他、かの『ビーチ・シャーク』(2011年)のようにサメが浜辺を泳ぐシーンや、『ゴースト・シャーク』(2013年)のようにサメが獲物を出待ちするシーン、多くのインディー系サメ映画と同じく手作り感あふれるサメが飛び出すシーン、『ディープ・ブルー』のように主要人物が手の平を切り裂き、血でサメを誘い出そうとするシーンなどなど……。
もしかすると、それらすべてがオマージュというわけではなく、たまたま既存のサメ映画とシチュエーションが被っただけなのかもしれないが、とにかくサメ映画愛好家がニヤリとするようなパニック演出もいっぱいである。
ユニークな題材とキャッチーさと相反するクセの強さが「らしさ」か
本作は(現時点で)令和最新のサメ映画ということもあり、配信業やインフルエンサー、SNSなどを用いたギャグが頻出する点も印象深い。主要人物の一人(男性)が、劇中で突然「バ美肉」(※)なる単語を口に出したときには、さすがに耳を疑ったが。
(※)「バ美肉」:「バーチャル美少女受肉」というスラングの略語。主にインターネット上で、美少女のイラストあるいは3Dモデルのアバターで活動することを指す。特に男性が美少女アバターを使用して配信活動を行う際に用いられることが多い。
さて総評だが、題材のユニークさ、およびキャッチーさに反して、できあがった本編はなかなかクセが強い、観る人を選ぶ仕上がりのように思われる。もっとも、そこがある意味で本作の<サメ映画らしさ>だと言えもするだろうか。
ともかく本作を鑑賞する前には、予告編映像と、可能ならば『温泉防衛バスダイバー』を観て、自分の嗜好とマッチするかどうかの予習を済ませておくことをオススメする。
文:知的風ハット
『温泉シャーク』は2024年7月5日(金)より全国公開
CS映画専門チャンネル ムービープラスにて2024年8月より「特集:2週連続!サメフェス2024」で厳選サメ映画一挙放送
『温泉シャーク』
S県暑海市では、温泉客がこつぜんと姿を消す連続失踪事件が発生していた。
しかも被害者はその後、海でサメに襲われた遺体として発見されるのであった。
捜査に乗り出した警察署長は古代から蘇った獰猛なサメが暑海各地の温泉を行き来し、人々を襲っている事実を突き止めるのだが……戦いは温泉地VS凶暴サメに!
監督・脚本:井上森人
出演:金子清文 藤村拓矢 中西裕胡 内藤正記
制作年: | 2023 |
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2024年7月5日(金)より全国公開