「『酔拳』はアクション映画の流れを完全に変えてしまった」
――“ジャッキー映画”は計100作品を超えるが、当然ながらファンそれぞれに思い入れがあり、世代等によって人気が分かれるところ。アクション映画のレジェンドが選んだ<ベスト3>は、一体どの作品なのか?
ジャッキー:[日本語で]うーん、とても難しいね!(笑)。映画の世界に入って、今年で63年目なんです。たくさんの映画に出てきましたが……『ミラクル/奇蹟』(1989年)、『ポリス・ストーリー/香港国際警察』(1985年)、『酔拳2』(1994年)。他にもたくさんありますが、この3作は全世界のみなさんがよく選んでくれるんですよ。
『ドランク・モンキー/酔拳』はある意味、アクション映画の流れを完全に変えてしまった作品なんです。その時代の映画は“とにかくブルース・リー”で、なんでもかんでもブルースのスタイルでした。当時は僕も「ブルース・リーの真似ですよね?」とよく言われましたが、僕の答えは「ブルース・リーはオンリーワン」というものです。
「自分なりの“道”を切り拓いて歩けば、違う景色が見える」
ジャッキー:ブルースのカンフーは非常に力強いんですよね。僕らは、それを変えようとした。それで『酔拳』が生まれたんです。そしてこの作品が成功したら、みんなが「ドランク・ネコ」「ドランク・イヌ」「ドランク・ネズミ」なんかを撮るようになって(笑)。じゃあ、どうしたらそれらと一線を画すことができるのか? それで生まれたのが『ポリス・ストーリー』。この作品で、またアクション映画の流れを変えてしまったわけなんです。
その次に『プロジェクトA』(1983年)で流れが変わり、『ポリス・ストーリー』を真似したような映画もたくさん出てきましたが、そこで『ミラクル』が生まれます。他と違う作品を作るためには、自分自身が努力してどんどん開拓しなければいけません。つまり<道>は人間が歩んでできたもので、それに沿って歩くのは確かに楽でしょう。でも自分なりの道を切り拓いて歩くことで、また違った景色が見えるんです。
たとえば『酔拳』は、誰もが作れるもの。でも『ポリス・ストーリー』は命がけでしたから、真似できるものではありません。そして『ミラクル』は、実はあるワンカットのために2日間にわたって撮影しました。今ではとても簡単に撮れてしまうようなシーンなんですけれどね。
――ひさしぶりの来日ということもあったのか、“1聞けば10答えてくれる”ジャッキーに感激&感謝! ユーモアを交えつつ製作者目線での70~80年代の主演作解説など、カンフー映画ファンでなくとも学びの多い内容となった。
インタビュー後も、小林麗菜の「一緒にお写真を……」というリクエストに対し被せ気味に「ダーメ!」と返して笑いを取ったうえで、「1枚撮るだけじゃダメ、ってことですよ」とハイレベルなツンデレ作法まで披露。さらに小林に『酔拳』の型をレクチャーするなど、大盤振る舞いにもほどがあるインタビューとなった。ジャッキー、谢谢再见!!
『ライド・オン』は全国の劇場で公開中
『ライド・オン』
香港映画界伝説のスタントマンと言われたルオ・ジーロン(ジャッキー・チェン)はケガをきっかけに第一線を退き、現在は借金取りに追われながら中国の撮影所に住み込み、愛馬・赤兎(「チートゥ」)とエキストラなどの地味な仕事をこなす日々を送っていた。
ある日、チートゥの元持ち主であった友人ワン(レイ・ロイ)の債務トラブルが原因で、チートゥが借金の肩の一部として連れ去られる危機に。困ったルオは疎遠になっていた一人娘のシャオバオ(リウ・ハオツン)を頼る事にする。法学部の学生であるシャオバオは、恋人の新米弁護士ナイホァ(グオ・チーリン)を紹介。だがシャオバオは、スタントに入れ込むあまり母と離婚した父を受け入れられずにいた。
チートゥに惚れ込んだ大企業の総裁で馬好きのホー(ユー・ロングァン)が、チートゥを買い取りたいと申し出るがルオは請け合わない。昔ながらの体を張った危険なスタントに固執する父の姿に反発したシャオバオとも溝ができてしまう。結局は裁判で負け、チートゥをホーに譲る事になったルオ。シャオバオルオ。シャオバオは、仕事に命がけで挑むことで家族に愛を伝えようとする不器用な父の為に愛馬を返して欲しいとホーに懇願するが……。
監督・脚本:ラリー・ヤン
出演:ジャッキー・チェン リウ・ハオツン グオ・チーリン ユー・ロングァン アンディ・オン ジョイ・ヨン ユー・アイレイ シー・シンユー レイ・ロイ ウー・ジン
制作年: | 2023 |
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全国公開中