植民地制度と警察組織
19世紀末のアメリカは移民をさかんに受け入れていた。黒人だけでなく“非白人”とみなされた欧州移民たちも弾圧の対象となるが、さすがに多勢に無勢。そこで彼らに“白人の特権を分け与える”ことにする。対応を明確に差別化することで結託を阻止、つまり被差別者同士の分断を煽ったのだ。
20世紀に入り全米各地で暴動が盛んになると、警察は軍隊化していく。戦争から戻ってきた軍人たちが警察に軍隊のノウハウを取り入れ、反乱分子の制圧というフォーマットが出来上がる。犯罪者の鎮圧と同じ手口が自国民にも向けられるようになり、それはまさしく植民地制度を彷彿させるものだった。ということは、その暴力は何らかの“利益”に与しているということになる。
2000年代以降、どんなに生々しい映像でもほぼリアルタイムで観られるようになった。本作で描かれるのはアメリカにおけるアフリカ系市民に対する差別~暴力がメインではあるが、平和的なデモ参加者が公僕によって“明確な理由なく強引に”組み伏され負傷し、さらに長期間にわたって“違法に拘束”されている現在の日本でも、まったく他人ごとではない。
「奴隷パトロール」から始まった権力の横暴
現代警察の起源は1700年代初頭に米南部で創立された「奴隷パトロール」で、「警察(ポリス)」の語源は「都市国家(polis)」に由来している。“自由を得た有色人種に対する漠然とした恐怖”を理由とする抑圧・暴力は、絶妙なバージョン違いやオプションを付加され、今も世界中で堂々と行われている。BLM運動には一定の理解を示してみせたアメリカ政府が、国家レベルの利権が絡んだ大量虐殺・民族浄化にはダンマリを貫いているのも、その一端だ。
警察の暴力行為の音声をバックに警官ファミリーが仲睦まじく微笑むホームドラマの映像は、まんま『関心領域』(2023年)の世界である。本作の冒頭(組織のはじまり)とラスト(現在の状況)がガッチリと結びついてしまうのが本当に恐ろしいし、「やはり一度解体すべきなのでは?」という感想を抱くほかない。
Netflixドキュメンタリー『パワー:警察権力の本質を問う』独占配信中