石油パイプランを、いかに爆破するか
「エコ・テロリズム/エコ・テロリスト」という言葉を耳にしたことがあるだろうか。環境破壊や動物虐待に対し、“過激な”方法で対抗すること/人々を指す呼称だ。最近では、有名な美術作品にスープをぶっかけたり道路を封鎖する様子が、日本のTV番組などでもセンセーショナルに報じられた。
こうした活動は極左のヒステリーなどと揶揄されがちだが、主に化石燃料の使用による気候変動は確実に私たちの生活に影響を及ぼしている。過去最悪を更新し続ける異常気象、それに伴う健康被害、環境破壊、農作物の不作……。それらの多くがエネルギー利権の成果であり、できれば無関心でいてほしい“不都合な真実”の一つでもある。
鼻先に迫った終末に対し具体的なアクションを起こさない/起こせない民衆に代わって行動しているのは、誰か。すでに人生を折り返した逃げ切り世代と異なり、Z世代以降の若者は自分たちの未来を諦めていないし、支配構造への敏感さを持っている。
気鋭の映画制作スタジオ<NEON>が放つ『HOW TO BLOW UP』が描くのは、理由や思想を異にする人々が起こした過激な“共通アクション”だ。
「辛口映画批評サイトで高評価:94%、法執行機関からの警告:35件」
本作の原題はズバリ『How to blow up a pipeline』で、パイプラインとは「石油パイプライン」のこと。気候変動学者アンドレアス・マルムが“直接的な(物質/財産の)破壊活動”をアジテートしたノンフィクション「パイプライン爆破法 燃える地球でいかに闘うか」をベースに、有毒な化学物質によって末期がんに罹ったテオ(サッシャ・レイン)や、石油をめぐって長年迫害されてきたネイティブ・アメリカンのマイケル(フォレスト・グッドラック)ら8人の若者たちが物語の軸となる。
『レザボア・ドッグス』(1992年)などが引き合いに出されるように、基本構成はいわゆる“ケイパーもの”だ。ゆえに「ひとつ間違えたら……」なサスペンス展開もしっかり確保していて、『HOW TO~』と題されているとおり、「いかにしてパイプラインを爆破するか」という部分にもブレはない。ゆえに“環境保護訴求映画”という偏りはなく、登場人物たち全員がゴリゴリの環境アクティビストでもないし、それぞれ理由は様々で目的の捉え方も違う(各キャラクターは実際の活動家たちの背景をベースにしているという)。
配給のNEONは「ロッテントマトで高評価:94%、法執行機関からの警告:35件」とSNSに投稿した。FBIが「化石燃料の生産に脅威を与えることを警告」したというのだが、当然ながら爆弾の作り方が詳細にレクチャーされたりとか、破壊活動を無批判に啓蒙するような言動があるわけではない。スラッシャー映画が現実世界での大量殺人を誘発しないのと同じことだ。
『HOW TO BLOW UP』
環境破壊に人生を狂わされたZ世代の環境活動家たちが、石油パイプラインを破壊する大胆な作戦を実行する。やがて過激な決意が、友人、恋人、苦難に満ちた物語を持つ仲間たちを巻き込みながら暴力の象徴的(=パイプライン)を爆破するという大胆なミッションへと結びついてゆく。若い世代のエネルギーは、予期せぬ混乱を招きながら、爆発的フィナーレへと疾走する。
制作年: | 2022 |
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2024年6月14日(金)より全国公開