怪盗ハドソン・ホークがダ・ヴィンチの秘宝を巡って巻き起こすドタバタ劇
10年の刑期を終え、ひさしぶりにシャバの空気を吸った怪盗ハドソン・ホーク。迎えに来た親友トミーの店でくつろいでいたところ、ニュージャージーのマフィア、マリオ・ブラザースが現れる。彼らに脅され、レオナルド・ダ・ヴィンチの遺したとされる馬の置物<スフォルツァ>を盗み出したハドソン。しかし翌日、盗んだはずのスフォルツァがオークションに出品されることを知る。
不審に思ったハドソンはオークション会場に出向くが、そこでバチカンから来たアンナ博士が「このスフォルツァは本物」だと宣言。ハドソンが不審に思っていると、何者かによってオークション会場が爆破される。次々とドタバタに巻き込まれた末にイタリアはローマに飛ばされるハドソンだったが、そこにはダ・ヴィンチの秘宝<純金製造機スフォルツァ>をめぐる世界制覇の罠が仕組まれていた……!
興業的大敗とラジー賞の不名誉
1991年製作の『ハドソン・ホーク』は、ウィリスが世紀の大怪盗を演じるアクション・コメディ。『ダイ・ハード』の大ヒットによって資金を調達したウィリスが、長年温めていたという脚本を念願かなって映画化した超大作である。しかし結果は4000万ドルの制作費に対し1700万ドルの興行収入と散々なものであり、翌年のゴールデンラズベリー賞(最低映画賞)まで受賞してしまった。
飄々とした大怪盗がいにしえの秘宝をめぐってマフィア、大富豪、CIAとドッタンバッタンという、いまどきル◯ンかコ◯ンでしかお目にかかれないようなストーリー。それを考えたのがウィリス自身という事実には思わず口端が緩んでしまうが、肝いりの企画が大コケしたことで、以後は俳優業に専念することになったのは少し残念。当時の日本版予告映像では、最高に面白そうな映画に見えたのだが……。
「傑作ではないかもしれない、でも嫌いになれない」不思議な魅力
アニメのように大げさな演技、会話の合間に子どものイタズラのような小ネタがポロポロと挟み込まれ、スリリングなはずのシーンには軽快な音楽が被さり、人死が出るたびに不謹慎なギャグが付け足される……とくにそれらが伏線になっているわけでもないので、人によっては大いに気が散るかもしれない。
だが予算を注ぎ込んだアクションシーンはいま観ても大迫力だし、ストーリーもそこまで破綻しているわけではない。ただちょっと演出のクセが強くて、どう考えても意味のないカットが多いので、ちょっとだけ観客をイラつかせてしまうのだろう。ともあれ大画面でワイワイ楽しむのには最適な映画だし、鑑賞後に胃もたれするようなこともない、爽やかな快作と言えるのではないだろうか。
なお劇中で度々触れられる「ニンテンドー」に不自然さを感じるかと思うが、実は映画公開と同年に本作のゲーム版がリリースされている。いわゆるクソゲーの部類に入る超高難易度ゲームなのだが、現在では数万円のプレミア価格が付けられている。
2010年以降は低予算作品への“顔見せ”というか名前貸し的な出演作ばかりだったウィリスだが、登場するだけで画面を支配する存在感、観客に与える影響力は相変わらずだった。現在では到底作れない、ウィリスのスター性と大らかな時代が生んだ『ハドソン・ホーク』を今こそ改めて観てほしい。
『ハドソン・ホーク』はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2024年6月放送、野沢那智がウィリスを演じる【地上波吹替版】は7月放送