アメリカ人オタク監督の「日本特撮LOVE」が爆発した怪作『イケボーイズ』を徹底解説!劇場で応援したくなる“優しい”青春ヒーロー映画の魅力

日本の特撮愛が爆発!映画『イケボーイズ』とは
いま、特撮映画ファンの間では一本のファンタジー映画が話題になっている。アメリカ人映画監督エリック・マキーバーが、日本の特撮への愛を濃厚に詰め込んだ青春ファンタジー映画『Iké Boys イケボーイズ』(2021年製作)である。
日本の特撮映画にオマージュを捧げたハリウッド映画といえば過去にも、『吸血鬼ゴケミドロ』(1968年)でのミニチュアを使った航空機の飛行シーンを完コピしようとした『キル・ビル Vol.1』(2003年)、映画に登場する巨大モンスターを“KAIJU”と呼んだ『パシフィック・リム』(2013年)、クライマックスにメカゴジラが登場した『レディ・プレイヤー1』(2018年)などがある。
これらの作品の日本特撮に対する愛もなかなか過剰なものだが、『イケボーイズ』の特撮愛とこだわりの強さはイイ意味で尋常ではない。エリック監督は大好きな日本の特撮作品のようなシーンを完全再現するため、特撮演出、特殊効果だけでなく、怪獣やヒーローのスーツの造形、スーツアクターを、日本の特撮シーンを支えた優秀なスタッフにお願いしたのだ。

『Iké Boys イケボーイズ』©Ike Boys MOVIE. LLC.
「『ゴジラvsスペースゴジラ』は今でも大好きな映画です」
本作が長編映画デビュー作となるエリック・マキーバーは、オクラホマ州で少年時代を過ごした。幼少期から恐竜が好きだった彼は7歳の頃、人生を変える映画と出会う。『ゴジラvsスペースゴジラ』(1994年)である。
『ゴジラvsスペースゴジラ』は今でも大好きな映画です。この映画は最高のタイミングで、私の人生に現れました。
エリックは12歳になった頃には、「いつかゴジラ映画を監督する」という夢を抱くようになる。そして彼は浴びるように日本の特撮やアニメ作品を観た。
私が『vsスペゴジ』と並んで大好きな映画は、金子修介監督の「平成ガメラ」3部作(1995年、1996年、1999年)です。神話的な物語や世界観、怪獣のシーンにただただ圧倒されました。
日本のアニメで最も影響を受けたのは『新世紀エヴァンゲリオン』(1995~1996年)です。15歳の時に『エヴァ』に出会えたのは、私の人生にとって完璧なタイミングでした。
ちなみにエリック監督の“泣きたい時にオススメ”の日本アニメは『かぐや姫の物語』(2013年)だという。

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あらゆる経験を積み、ついに長編監督デビュー
その後、早稲田大学に留学したエリック。そこから10年以上、日本で暮らし、翻訳家、ゲーム開発者、アニメーションプロデューサーなどさまざまな経験を積む。その間、「ぴあフィルムフェスティバル2018」に入選した『Good bye, Eric!』という映画に俳優として出演した。
日本で様々なポップカルチャーを吸収したエリックは、映画制作のスキルを修得するためニューヨーク大学の映画学科に入学。この大学時代に監督した作品で、スパイク・リーやアン・リーといった名だたる監督たちが学生時代に受賞した<ワッサーマン監督賞(Wasserman Award in Directing)>に選ばれる。
そんな彼の長編映画デビュー作『イケボーイズ』には、彼が愛する日本の特撮やアニメに対する愛がパンパンに詰まっている。