「こんなところでドローンを? なんて思う場所で、ブーーン! と」
―寒々とした風景と対照的にエモーショナルな人間関係を描いていますが、あえて冬を選んだのでしょうか?
たまたまです(笑)。当初は夏の予定だったんだけど、結果的に良かったなぁと。夏で汗だくになったキャラクターを登場させるのも韓国映画っぽいかもしれませんが(笑)。
―キャスティングの経緯は?
イ・ジフンは韓国サイドからの推しがあり、彼自身も意欲的だったので決めました。イ・ユヌとシン・スハンはオーディションですね。ユヌは元々アイドル歌手ということもあり、とてもハスキーでいい声だったことが決め手です。スハンはプロデューサーが気に入って採用になりました。元の脚本の設定とは違って、若い役者だったので脚本を少し変更することになりましたが……結果的にバランスのとれたキャスティングになったと思います。

『アンダー・ユア・ベッド』©2023, Mystery Pictures, ALL RIGHTS RESERVED
―主人公はジフンだと思うのですが、イェウン(イ・ユヌ)とヒョンオ(シン・スハン)の2人もしっかりとした背景がありましたね。
日本で脚本を書き上げていったのですが、現場入りしたらプロデューサーから「3人の物語にしたい」と注文があって……ごっそり書き直しました。
―男性陣が2人とも過去に囚われすぎですが、監督から見ても男は過去を引きずりがちなんですかね……。
男は皆、そうなんじゃない?(笑)。最近の若者はどうなんだろうね。

『アンダー・ユア・ベッド』©2023, Mystery Pictures, ALL RIGHTS RESERVED
―日本と韓国で撮影手法に違いはありましたか?
1日12時間以上かつ週50時間以上は撮影……というか労働してはいけないんですよ。かなりホワイトな環境で、いいことなのですが、「自分はまだまだ元気で撮れるのになぁ。撮影日数も足りなくなるなぁ」なんて思いながら撮影していました。とはいえ、撮影そのものはかなり自由でしたね。「こんなところでドローンを飛ばしていいの?」なんて思う場所でブーーン! と飛ばしちゃう。
―室内のシーンも多く、照明に苦労されたのでは? 特にベッドの下に入り込んだジフンの目の光などが印象的で工夫を感じました。
“あてすぎない”ように気を遣いました。ベッドの下の場面では最初、ジフンの目も照明部が明るく照らしていたのですが、「映らなくてもいいくらい」と指示しましたね。

『アンダー・ユア・ベッド』©2023, Mystery Pictures, ALL RIGHTS RESERVED
―女体を模したゴルチェの香水瓶やアメリカン・クラッカーなど、小道具にも目が行きました。
アメリカン・クラッカーは作品の重要な“道具”でもあります。当初の脚本には“鉄球”とだけ言及されていたんです。鉄球をポケットに入れているのは韓国っぽくていいとは思ったのですが、鉄球をもつ動機が必要だとして、わざわざ作ったんですよ。実際カチカチ鳴らすシーンも撮ったのですが、しっくりこなかったのでバッサリ切りました(笑)。

『アンダー・ユア・ベッド』©2023, Mystery Pictures, ALL RIGHTS RESERVED
「暗いばっかりの映画は撮りたくない」
―キャストとのコミュニケーションはどのように取られましたか?
現場の日本人は私一人だったので、連携はしっかりしなければならないと考えました。彼らもこの(300ページ越えの分厚い絵コンテ本を指さしながら)絵コンテを読んでくれていたし、性描写や暴力描写もしっかり理解を得てやっていましたね。
―リテイクは結構されましたか?
スハンが……殴る演技が苦手だったんですよ(笑)。間違って本当に当たってしまうこともあって、怪我はなかったのですが、結構撮り直しました。3人とも仲良しなのでハプニングがあっても笑っていましたけど。

『アンダー・ユア・ベッド』©2023, Mystery Pictures, ALL RIGHTS RESERVED
―本作のお気に入りのシーンは?
ラストシーンですね。あれは是非、皆さんに観ていただきたいです。観る前の人たちには詳しく言えないんですけれど(笑)。長尺ワンカットで、演技はもちろん劇伴から環境音までとことんこだわった、自分でも大好きなシーンです。
―ほんの少しですが希望が持てるラストシーンでしたね。
暗いばっかりの映画って撮りたくないんですよ(笑)。映画を観る前と後で少しでも気分が上がる……観て良かったと思える映画にしたかった。映画はそうあってほしいなぁ……。

『アンダー・ユア・ベッド』©2023, Mystery Pictures, ALL RIGHTS RESERVED
淡々と語りながらも、こだわりを強く感じさせるSABU監督。インタビュー中は「最近の邦画は“画”が弱い。もっと強い画を撮るべき」と反骨精神をむき出しにする場面もあった。そんな彼が異国で好き放題やってのけた『アンダー・ユア・ベッド』の画を、ぜひスクリーンで楽しんでほしい。
『アンダー・ユア・ベッド』は2024年5月31日(金)より全国ロードショー