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「レゲエの神様」が本当に伝えたかったメッセージとは?『ボブ・マーリー:ONE LOVE』は新たな音楽映画体験をもたらす愛の物語

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ライター:#Takahiro Kanazawa
「レゲエの神様」が本当に伝えたかったメッセージとは?『ボブ・マーリー:ONE LOVE』は新たな音楽映画体験をもたらす愛の物語
『ボブ・マーリー:ONE LOVE』© 2024 PARAMOUNT PICTURES
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ボブ・マーリーとの出会い

初めてボブ・マーリーに触れたのは中学生の頃だったと記憶している。平成中期が青春時代ど真ん中だった自分にとって、田舎のショッピングモールのビレバンで誰が歌ったかわからないボブ・マーリーの代表曲「One Love/People Get Ready」のカバーを聴きながら、「LOVE&PEACE」マークが堂々とプリントされた缶ペンケースを、平和を願う意思表示としてではなく、当時の自分ができる最大のオシャレ(だと思っていた)の手段として買ったことが最初の出会いだった。

もちろん、ボブ・マーリー本人が歌に託したメッセージなど知るはずもなく、「レゲエの神様である」という漠然とした認識が変わらないまま月日は流れた。映画『ボブ・マーリー:ONE LOVE』を見るまでは。

『ボブ・マーリー:ONE LOVE』© 2024 PARAMOUNT PICTURES

映画『ボブ・マーリー:ONE LOVE』の背景

2024年5月17日(金)より全国公開される映画『ボブ・マーリー:ONE LOVE』は、36年という短い生涯を生きたジャマイカ出身のアーティスト、ボブ・マーリーの半生を描いた作品だ。ボブの妻のリタ、息子のジギー、娘のセデラがプロデューサーとして監修に参加したことでも話題を呼んでいるが、実の家族を製作陣に迎えたことで、より事実に忠実な映画になっていると言えるだろう。また、アカデミー賞を席巻した音楽伝記映画『ボヘミアン・ラプソディ』(2018年)などと異なるのは、ボブ・マーリーの生涯を時系列的に描いた作品ではないということだ。

『ボブ・マーリー:ONE LOVE』© 2024 PARAMOUNT PICTURES

本作は、1976年から1978年までの、およそ3年間にのみ焦点をあてている。というのも、この間にボブ・マーリーは身の危険から逃れるために母国ジャマイカを離れロンドンで暮らしたり、チャリティイベント<One Love Peaceコンサート>を開催したりと、激動の日々を過ごしていたのである。

『ボブ・マーリー:ONE LOVE』© 2024 PARAMOUNT PICTURES

当時のジャマイカの国内情勢を振り返ってみると、政権を争う与党・人民国家党(PNP)と野党・ジャマイカ労働党 (JLP) が対立し、内戦寸前という状況にまで陥っていた。すでに国内外で絶大な人気を誇っていたボブ・マーリーも例外ではなく、プロパガンダに利用されかけるなど、彼自身も政治的混乱のさなかにあった。そして、1978年に開催されたチャリティイベント<One Love Peaceコンサート>の2年前、1976年に開催された同イベントの前身的な位置付けとして知られる<Smile Jamaica コンサート>の2日前に、ボブ・マーリーが武装集団に襲撃されるところから物語は始まる。

『ボブ・マーリー:ONE LOVE』© 2024 PARAMOUNT PICTURES

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『ボブ・マーリー:ONE LOVE』

1976年、対立する二大政党により国が分断されていたジャマイカ。国民的アーティストとなっていたボブ・マーリーは国内の政治闘争に巻き込まれ、銃撃されてしまう。だがその僅か2日後、ボブは怪我をおして「スマイル・ジャマイカ・コンサート」のステージに立ち、8万人の聴衆の前でライブを披露。その後身の危険を感じロンドンへ逃れたボブは「20世紀最高のアルバム」(タイム誌)と呼ばれる名盤『エクソダス』の制作に勤しむ。さらにヨーロッパ主要都市を周るライブツアーを敢行し、世界的スターの階段を駆け上がっていく。一方母国ジャマイカの政治情勢はさらに不安定化し、内戦の危機がすぐそこに迫っていた。深く傷ついたジャマイカを癒し内戦を止められるのはもはや政治家ではなく、アーティストであり国民的英雄であるこの男だけだった———

制作年: 2024