「流暢、だが意味不明」なセガールの日本語セリフ
高倉健も出演した名匠シドニー・ポラックの『ザ・ヤクザ』(1974年)のリメイクとされる『イントゥ・ザ・サン』だが共通点はほとんどなく、多国籍なサイバーパンク風味をプラスしたことで、むしろ『ブラック・レイン』(1989年)を彷彿させる仕上がり。セガールが「俺の庭」とばかりに日本の街を闊歩し、また日本語セリフを吹替なしで流暢に操ることで、いわゆるハリウッド映画における日本の解像度もぐんと上がっている。
……と言いたいところだがトンデモ日本描写は多々あり、逆にそれが不思議な魅力になっているというのが実際だ。しかも肝心のセガールの日本語も、たしかにナチュラルではあるのだが予想外の高音・早口に加えて方言や単語のチョイスが独特すぎて逆に混乱してしまう方向性。おそらく本国スタッフからツッコまれないのをいいことに「これがネイティブ日本語だから」と押し通したのだと思われるが、確かにそれが本作の最大の見どころとなっているあたり、さすがセガールと言うほかない。
大沢たかお演じる狂気のヤクザがセガールと対決!
日本のヤクザだけでなく中国マフィアを絡めたことで“対カンフー”要素が加わり、アクション面はハリウッド製らしい充実の仕上がり。そして、物語上の重要人物である新興ヤクザ・黒田を狂気たっぷりに演じているのが、当時日本アカデミー賞を受賞したばかりの演技派俳優、大沢たかおだ。
大沢にはゴリマッチョ化した今こそこういった役を演じてほしいものだが、昨年から実写版『沈黙の艦隊』に主演しているので、セガールから『沈黙』シリーズを引き継いだとしても不思議ではない(?)。ちなみに豊原功補が演じる彫師の名前が「不動明王」というのも大きな謎の一つである。
そんな本作だけにマジメな批評サイトではけちょんけちょんに言われたりもしているが、ソフト購入者やジャンル映画サイトでのレビューは概ね高評価。「こういうセガールが観たかった」「セガールの最高の映画のひとつ」といった絶賛評もあり、アクション好きだけでなく“ちょっと不思議だけどクセになる映画”を観たい人にもオススメできる逸品だ。
『イントゥ・ザ・サン』はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2024年5月放送