ハワイ島で大噴火が発生! かつてない惨事へのカウントダウンが始まる
地球環境の保護に向けて、精力的に活動を続けているモリー・マーティン博士はある日、旧友からの誘いを受け、家族とハワイ島に出発する。
現地でモリー博士を待っていたのは、かつて彼女が設計・研究したスーパーコンピューター格納ユニットと、地球環境を24時間監視する最先端テクノロジーの数々。感動に打ち震えるモリー博士。だがこの設備に資金提供を申し出た“支援者”の正体は、環境問題を巡って彼女が度々訴訟を起こしていたアークスター社のCEO、グリフィン・リチャードだった。
一転して険悪なムードに包まれる中、突如システムが大噴火の兆候をキャッチ。続けて山からは溶岩が流れ出し、町を焼き尽くさんと迫っていた。地元のFEMA(緊急事態管理庁)はまるで役に立たず、このままでは最悪の悲劇が発生――モリー博士とその仲間、家族、そしてグリフィンは、ただちに行動を開始する。
その後スパコン、爆薬、最先端ドローンを駆使した作戦が成功を納め、間一髪、溶岩流から町を救った一同。ところが、この大噴火はあくまで始まりに過ぎず、続けて「西半球の広範囲に及ぶ火山が、連鎖的に噴火する」という、新たな大惨事までのカウントダウンが始まってしまった。そして残された時間はあとわずか……。
果たしてモリー博士は、間もなく訪れるだろうこの破滅的結末を防ぐことができるのだろうか。そして一連の大騒動の裏には、グリフィンCEOのアークスター社が密接に関わっていた……。
というのが、本作の概要である。
パニック映画の重大要素、登場人物の“最期”をどう描くか
本作の監督はジャレット・コーン。代表作はアサイラム製SFロボット映画、『バトル・オブ・アトランティス』(2013年)になるだろうか。その他『ホワイトシャーク 海底の白い死神』(2020年)や『シャークストーム』(2021年)などのアサイラム製サメ映画にも関わっており、近年のアサイラム映画を語る上で欠かせない人物だ。
さてその内容になるが、冒頭で「登場人物の一人が、火山活動の影響で地表から真上にスポーンと垂直射出され、次の瞬間にはもう死んでいる」シーンのインパクトは抜群で、素直に引き込まれた。パニック映画において、“登場人物の印象深い死に様”というものは重要な要素である。『ボルケーノ』の救助隊員がマグマの中に沈むシーンしかり、『ダンテズ・ピーク』のカップルが温泉で茹で上がるシーンしかり……。
が、その後は特に見所らしい見所が存在しなかった。そもそもこの映画、本編では“人死に”自体がろくに発生しない。これが現実なら非常に喜ばしい結果には違いないのだが、あいにくと本作はパニック映画である。無暗に登場人物を死なせればよいというわけでもないにせよ、冒頭のような見せ場がもう少し欲しかったところだ。
一応、中盤で“溶岩流の流れを逸らすべく、主人公一同が奮闘するくだり”には、きちんと展開の起伏があり、まずまず楽しめなくもなかった。ちなみに本編の大部分は、例によって科学的な専門用語の羅列と、ギスギスした人間関係で占められている。これもアサイラム映画のお約束と言えよう。
その他、“依然として危機的状況下にありながらも、どこかさわやかで前向きなラスト”は個人的に嫌いではない。とはいえやはり、退屈な部分の方が目立つ一本である。筋金入りのアサイラム映画マニア以外には安易にオススメできない作品だ。
文:知的風ハット
『ボルケーノ2023』はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2024年5月放送
『ボルケーノ2023』
ハワイ島のマウナケア山で異常な火山活動が観測された。モリー・マーティン博士は大噴火を阻止すべく、溶岩のルートを変える爆破作戦を決行する。だが噴火は連鎖する変動の前触れに過ぎなかったのだ。マウナケア山が引き金となり、西半球のすべての火山が同時噴火する恐れがあることがわかり……。
監督:ジャレッド・コーン
出演:マッケンジー・ウエストモア ウィリアム・ボールドウィン グラント・バウラー
制作年: | 2022 |
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CS映画専門チャンネル ムービープラスで2024年5月放送